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第16話 すれ違い

美国は携帯のディスプレイに表示されている正人の携帯番号を見ながら悩んでいた。

その姿は、まるで好意をよせた人にデートの誘いをするかのような、そんな緊張感が漂っている。

しばらく考えた後、深呼吸をすると美国は正人に電話をかけた。

数コールしてから「もしもし」と電話越しで正人の声が聞こえる。


「あ、美国だけど……」


「何?どうした?」


正人は忙しそうに電話に答えた。


「えとね……。今日、時間空いてるかな?」


機嫌を伺うかのように美国は尋ねると

「悪い。今日はこれから会議の後取引先との会食で遅くなりそう」


「そっか……。じゃあ仕方ないね」


「悪いね」と早口で言った正人の言葉はどこか昔より冷たい感じがした。


「……忙しそうだね」


少しでも間を空けると電話を切られてしまいそうな気がした美国はどうにか会話を続けようとする。


「ああ、みんな俺に頼ってきてさ。大変なんだ」


「そっかぁ。頼りにされているんだね。それより今度いつ空いてるかな?」


「あ、悪い。呼び出しがきた。またあとで……」


「あ……」


美国の質問に答える間もなく、忙しそうな声で正人は電話を切った。

少しの話すらできないのか……と、美国は深いため息をついた。

そっと携帯を閉じた表情は少し寂しそうだった。


最近、正人に逢えないな……。

でも正人もがんばってるんだから応援しないと……。

美国は空を見上げながらポツリとこぼした。


彼が入社してから二ヶ月がたった。

彼の異変に気づいてから二ヶ月。


彼は入社して一ヶ月足らずで、すでに戦力となっていたことに驚いた。

「必要とされているのが嬉しいんだ」と正人は楽しそうに語ってくれた。

あれだけ嫌いな仕事だったのに、今は朝早く出社して夜遅くまで残業の繰り返し。

そんな生活をしているだから、当たり前のことだけど、あたしと一緒にいる時間は減った。

だからなのか今のあたしは何か物足りない。

きっとその前まで当たり前のように逢って、当たり前のように一緒だったからなのかもしれないけど。

多分、今の環境が普通なんだろうな。


そう考えると、あたしの中の当たり前ってやっぱおかしかったよね。

彼が、やる気になってがんばっているんだから……。

そう自分に言い聞かせることで、無理やり納得している気がする。


あたしもあたしで、いつも彼の家にいれるわけじゃなくて、

色々やることがあるし、生活していかないといけないってのもあるけど、

お互いのタイミングが合わず、最近は会ってない。

メールのやり取りも昔より素っ気ない感じがする。


もう二週間かぁ。 

でも、覚えていてくれるかな?


もうすぐ一年だよ?

あたし達、一緒にお祝いしたいな。


ふと見上げてみた空は雨雲でどんよりとしている。


もうすぐ梅雨かぁ。


たったの二ヶ月で季節は大きく変わる。

たったの二ヶ月で彼は大きく変わった 。

あたしにとってこの二ヶ月はなぜかとてつもなく長く感じた。



その雨雲が何故か近い未来を暗示しているかのように……。

美国の心は不安でいっぱいになりそうだった。

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