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第14話 恋

あたしは今まで特に深く人生っていうのを考えたことがない。


多分、普通っていうか

みんなと一緒の道というか 

きっと他の人からみても、そうだなぁ……。

足踏み揃えた本当に普通で平凡な人生だと思う。


だから正人みたいに自分の器とか可能性とか考えたことがなかった。


ポツリポツリと話し始めた彼の言葉のひとつひとつは

誰よりも存在意義を求め、誰よりも切なく、誰よりも一生懸命だったのだと思う。


だから自分にできることの限界を感じてしまった彼は、きっと寂しかったんだろう。

なんていうか自分の中にある心の許容量を超えてしまっていたから

前を向いていこうっていう気持ちが、きっとこの時は空だったのかなと思った。


ずっと話を聞いてあげた。あたしには多分それしかできなかったし、

少しは楽になればいいなって思っていた。


最後のほうに彼がこう言ってくれた。

多分、これが付き合いはじめたきっかけ……。


「今度、また逢える?」


少し遠慮気味にいってきた彼をみて、あたしは何かを感じた。

感じたというか嬉しかったのかな?

さっきまで心がギチギチに閉ざしてて、人を遠ざけていた人だったからなおさら。

あたしは間髪いれずに「うん!いいよ。遊ぼう!」と二つ返事で返したんだ。



よく正人と遊んでいると、友達からたまにこんなことを言われた。


「どこがいいの?」

「先なさそうじゃん?」

「女の幸せは安定した収入よ?」


そんな言葉に対して、あたしはムキになって反論した。


「『どこがいい』とか『先』とか『収入』とかどうしてそういうこと言うの?

そんなのその時にならないとわからないじゃん!」


あたしはとても悔しかった。

自分よりも誰よりも生きるってことを考えて傷ついて居場所を探していることを

知っているだけに心無い言葉があたしは許せなかった。

心配してくれているのは知ってたけど、それでもあたしは許せなかった。


母性本能かもしれないけど

どこか放っておけなくて一人にしとくと危なっかしくて

でも彼の可能性を広げてあげたい。

少しでいいから彼の人生に関わってみたい。

そんなことばかり考えていた。


色々考えたけど

ことのつまり


――あたしは恋をしたのだと悟った。


他の人がなんと言おうとあたしは彼を見ていたかった。


それからは自然と連絡を取り普通に逢って

ごく当たり前のような恋愛をした。


あの時見せた彼の憂鬱な表情は付き合い始めてからは見ることはなく

正人はいつも笑わそうとしてくれた。

いつも適当そうな彼だけど、シーズンイベントは忘れずに一緒にいてくれた。


贅沢はできなかったけど、あたしは結構幸せだった。

そしてたまに正人は謝ってきた。


「わりぃな……。こんなんで……」


「なんで?あたしが好きで付き合ってるんだもん。

正人が謝ることないでしょ?」


「んー。なんとなくなぁ」


きっと自分の行く道が見つからない自分への「不甲斐なさ」「悩み」

そういうのを全部含めての言葉だったんだろうなぁと思った。


それから、もうすぐ一年が経つ。

そんなある日から彼は変わっていった。


最初は素直に嬉しかった。


久々に生き生きとした彼は何かを手に入れたような感じで

子供のようにはしゃいでいた。

そんな表情あまり見せなかったから……。


でも何か違う。

そして今日、あたしは決定的違和感を感じた。

彼が……確実に変わってる。

あの頃とは全く違う、何か別の……。


それでもあたし……「気持ち」変わらないよね?


少し自分にそう言い聞かせてみたけど

こんなこと思うのは付き合ってから初めてだった。


彼の寝顔はあの頃と変わっていないことだけが救いだった。


「大丈夫……だよね」


そう想いながら彼に寄り添い、再び眠りについた。

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