第12話 違和感
初日の仕事も無事に終わり、繁華街を通り家路へと向かいながら正人は色々と思っていた。
仕事ってもっと堅苦しいところかと思ったけど、
みんなけっこういい人そうだし、そんな辛くないんだな。
それに評価されるって嬉しかったし、もっとがんばって必要とされる人間にならないとな。
上機嫌で鼻歌交じりで歩いていると、いつしか声をかけられた易者が商売していた。
相変わらず、売れてなさそうな感じがもろに伝わってきた。
正人は、よほど機嫌がよかったのか易者に近づくと声をかけた。
「よぉ、じーさん」
「お、君はあの時の若者だね」
「へへ、じいさんの変化っての当たってたかもな!仕事も見つかったし順調だぜ」
得意気な顔して嬉嬉としながら正人は最近の近況を易者に話した。
しかし正人とは対照的に易者は俯き「そうか……。はじまってしまったんだね」と残念そうに呟いた。
「ん?なんだよ。やけに残念そうじゃないか」
占いが当たったのだから、もっと嬉しそうにすればいいのにと正人は思ったため
易者のその態度がいまいちしっくりとこなかった。
「いや、いいんだよ。それが君の望んだことなら……」
易者は何か含みがあるような感じの言い方をした。
そんな態度の易者に対して徐々に腹が立ってきた正人。
「こっちは、なにもかも絶好調なんだからさ。あまりそういう顔しないでほしいんだけどな!」
そう言うと、易者はポツリと正人に伝えた。
「いいかい?「今」が一番いいだけなんじゃよ……」
それはまるで何かを知っているような話し方が正人には不気味にみえた。
「……何が言いたいんだよ?」
あまりにはっきりとした答えをださない易者に更に腹がたってきた正人だったが、
易者は表情一つ変えずにこう言った。
「君は何かを得るたびに、何かをなくしていっているのだ。
それは君も知らないうちに凄いスピードじゃが、ゆっくりと気づかないように……」
その言葉に、正人はおもわずツバを飲み込んだ。
易者の話が、何故か嘘に聞こえなかった。
「それでも君がそう望む道なのだから、君がいいと思えば、それでいいのじゃろう」
「ははっ。いいことじゃんか!頭もよくなってさ。
仕事もなにもかもうまくいきそうなんだ」
易者の言葉を吹き払うかのように正人は話しはじめた。
それでも表情を変えない易者に腹がたち
「くそ。あんたに声かけるんじゃなかった。せっかく気分よかったのにな」
怒声交じりで吐き捨て、その場を立ち去ろうとすると、易者は最後にこう言った。
「君はもう一度、ワシと話すことになる。全てを知るために……」
「あん?もう声かけねーから!じゃあなぁ」
ズカズカと歩き去る正人の姿を見ながら
「もう少したてばわかる。ワシのように……」
そう呟くと易者は正人の後姿を少し悲しげな顔で見送った。
「ただいま」
「あ、おかーえり!」
自宅へ帰ると美国が元気よく迎えてくれた。
「なんだ帰ってたんだ。てっきりまだかと思った」
「今日は早上がりだったのだ。せっかくだし、ご飯でも作ろうかなって思ってね」
「そかそか」
「お仕事はどうだった?」
美国は正人のスーツのジャケットをハンガーにかけながら聞くと、正人は機嫌が良さそうに
「ん いい感じだったよ!初日なのにすげー尊敬された」と答えた。
「おお、なんか凄いねー!よかったじゃん」
思った以上にうまくいった感じの答えに美国も嬉しそうだったが、
「あ、そうそう。美国〜!お前、あんま弁当に嫌いなものいれるなよ」
と言った正人の言葉を聞くと美国は驚きを隠せなかった。
「え……。おかしいなぁ。正人の好きなものばっかいれたはずなんだけど……」
あまりの予想外の答えに、美国は動揺した。
「あはは。俺、肉系より魚系のほうが好きだって知ってるじゃん」
正人はそう答えるとますます驚いた顔で正人を見た。
「え?正人……、お魚苦手だって言ってなかったっけ?」
「俺の苦手なのは肉系だろ?誰と勘違いしてるんだぁ」
笑いながら言い、ワイシャツをベットに脱ぎ捨てた。
「ご……ごめんね。今度はお魚いれるね」
「あーい。じゃあフロでもはいってこよっと」
そういい正人は風呂場のほうに向かっていった
美国は正人の脱いだワイシャツを拾いながら、違和感を感じずにはいられなかった。
――おかしいよ……正人。本当に魚嫌いだったのに……。
明らかに違いがでてきてる正人に対して、美国は少しだけ不安に感じた。




