このどうしようもないオルタナ
掲載日:2026/01/24
脈拍はずれたエイトビートを叩いている
一日が二十四時間では終わらないから
私の日の出はいつも世界より一八〇秒遅い
疾く書き留めよ
幹線道路を私道と勘違いしたトラックが
昨日見た夢を轢き殺してしまう前に
渇いた喉は水ではなく言葉を欲している
生きている者を生きていないかのように扱う
現代の良識に立ち向かうための言葉を
閉じた鼓膜は音ではなく沈黙を欲している
喧噪の奥底に沈んだ
声なき声を聞き取るために
二ヶ月おきに変わるバス停の広告
パノプティコン型の団地
うなだれた街灯から差す光が
照らさない場所を歩くように生きてきた
いつかきみが望んだ世界の
代わりの代わりにすらなれない
このどうしようもないオルタナ
替えのきかない命を守るには
生者ではなく死者の言葉が要る
支度をせよ
朝日に逆行するために
乱視の目から見た地平線を罫線として
虚弱な心臓が書き留めたあらゆる言葉は
やがて我々の武器になる




