8.市場で買い物2
そろそろ本屋と雑貨店が開く時間なので、市場の西側に向かう。
「秘薬には本が必要なのか?」
アレイがもっともな疑問を問うてきた。
「必要なんです」
面倒なのでその理由まではいちいち教えない。
入った書店は魔法術師向けの魔法書より、一般大衆向けの本を多く取り揃えている店だ。
魔法術師向けの書店は薄暗く神秘的な雰囲気を売りにしているが、ここは明るく楽しく面白くが信条で、子供から老人まで楽しめる本が沢山ある。
その中で、メリッサは若い女性向きの恋愛小説コーナーに向かった。平積みされた新刊の小説を手にする。
「今日が発売日でよかった」
これがないと仕事が進まないので、タイミングよく手に入ってよかった。
待望の2巻を手に取り、にやけるのを耐える。自分用は後日買いに来よう。
「魔女と騎士の秘密の花園。へえ、そんな本があるんだな」
アレイが覗き込んで、タイトルを口にしながら、平積みされた本を一冊手に取ってまじまじと表紙を見る。
全年齢向けの恋愛小説でいかがわしいことはないが、なんだか恥ずかしくなってきた。
「あの、買ってきてもらってもいいですか?」
「わかった」
乙女の恋愛小説を美貌の青年に買わせるという、ちょっとしたいじわるを考えてそう言ったのに、アレイはなんてことのないように会計に行った。
そしてまたもや店員を篭絡して帰ってきた。
本物の騎士は任務なら何でもこなすのだろうけど、彼が平静としすぎていて逆にこちらが恥ずかしくなった。
気を取り直して、書店の近くの雑貨店に行く。
キラキラした女子が喜びそうな雑貨が所せましと並んでいる。メリッサは髪飾りの棚でどれにしようか物色する。
ふとあるものに目がとまる。水色と白の二色遣いのリボンの髪飾りだ。中心には花を模したクリスタルが縫い付けてある。春らしい色合いで可愛い。
手に取ろうとして、辞める。これは、自分が欲しいと思ったものだ。
自分のお金で買えば済むが、二人の手前余計なことはしないで済ませたい。
これもまた次の休みに一人で買いに来よう。それまで売れ残っていればいいが。
今は「あの子」に似合うリボンを選ばなければならない。メリッサはピンク色の大振りなリボンを選んだ、レースもたっぷりできっと気に入ってくれるだろう。
「魔女殿はまたかと思うかもしれないが、そのリボンが秘薬を作る材料になるのか?」
心底不思議そうに今度はセスランが聞いてきた。
「そうです。すみませんが会計をお願いします」
「わかった」
雑貨屋の店員も例に漏れず、セスランの美貌に衝撃を受けていた。
最後に牛飼いが住む家によって、ミルクを一瓶購入した。店主がおっさんだったのでここでは彼らの美貌も通用しないかと思ったが、違った意味でとんでもない貴人がやってきたと腰を抜かしていた。




