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ブルー インフェルノ メテオーラ 蒼い業火に焼かれた魔女は守護天使と転生する  作者: 暁月シナツ


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53.メリッサとセスランの攻防3

 それまで淡々と怒りを受け流していたセスランは、メリッサの最後の一言を聞いたとき、紅い瞳をわずかに揺らした。

「割と、(こた)えるな]


 出会ってからいつも冷静で、無表情とはいわないまでもあまり感情を出さないと思っていた彼が――。

「どうして、あなたの方が傷ついたような顔しているんですか」

 思ってもみなかった彼の以外な反応に、メリッサは我に返った。


 アナベルを助けに行かなければという思いで、眠りから覚めるために無茶をしたが、そもそもどうして眠らされていたのか。さっきセスランが言った事だけが、本当の理由なのだろうか。


「――もう一度聞きますけど、どうして眠らせたんですか?」

「それは、君が精霊に魔力を食わせすぎてるからだ。対価は十分に与えているのにな。魔力量に自信があっても、同調なんてなれていない事をすると魔力切れを起こす」

 つまり眠らせたのは、単純に魔力切れを起こさないために、休ませるためにしたことだと――。


「それならそうと、なんでさっき言わなかったんですか」

「勝手に眠らせたのは事実だからな。そのことで君を怒らせてしまったから、この際言いたいことを言ってもらおうと思って言い訳しなかった」

「ほんとに言いたいこと言っちゃいましたよ」

 話しているうちにメリッサは冷静さを取り戻した。思い返すかぎりけっこうひどいことを言ってしまった気がする。


「魔力の回復が終わってから起こして話をしようとしたんだ。君が、あんなやんちゃな目覚め方をするからすべて話しそびれた」

「やんちゃって‥‥‥」

 誰だって眠らされて危機だと思ったら、全力で回避するためにもがくはずだ。師匠との修行で教わったことは、どんな手をつかってでも生き延びろだった。だからその通りにしただけだ。


「意外と武闘派だったんだな」

 冗談なのか本気なのか分からないことを言いながら、メリッサの手をとって創傷治癒のポーションをかけた。

 冷静さを取り戻してから、ジクジク痛み出していた傷が跡形もなく消えた。

「俺は治癒魔法だけは使えないから、怪我をしないでほしい」

 セスランは願うように言い、優しい手つきで傷が残っていないか確認する。


 されるがままだったメリッサは、焦りのような羞恥のようなものを感じ始めた。久しぶりに合った彼に、ものすごくまとめて言うと、キレて暴言を吐いたのだ。

 それをすべて受け止めて聞き流して、怒りもせずに傷の治療までしてくれいている。

「セス、ごめんなさい」

 色んな意味を含んだ、ごめんなさいだ。

「俺の方こそ、勝手なことをしてすまなかった。もう無茶をするな」 

 彼に謝られてメリッサはますます自分のしたことが恥ずかしくなったけれど、本音をぶつけたことに後悔はなく、むしろ清々しかった。


「すっきりしたか?胸糞」 

 何を察したのか、セスランはからかうように笑った。

 メリッサの顔が赤くなる。

「ええ!とっても」

 メリッサからの敵意がすっかり消えたことに気づいたセスランは、人知れず安堵した。




 ◇◇◇




「何がどうなってこうなったのよ」

 メリッサが怪我をしたから治してくれと、アレイに呼ばれて急いで来た王女は、部屋の中が嵐が去った後のような状態で驚いた。

 流石の王女も眉をひそめるほどの惨状だった。


 割れた血痕着きのティーカップに、床には血が飛び散った後がある。調度品は床に転がり、壁にかけらた絵画が傾いていた。

 傷のないメリッサの手と、テーブルに置かれた空のポーション瓶を見て。シャシャはほっと溜息をついた。


「もう治療はしたのね」

「なんだ。もう喧嘩は終わったんだな」

 シャシャの後ろにいたアレイは、なぜか残念そうだった

「もう、貴方たち二人がついていて、どうしてメリッサに怪我させるのよ!」

 王女の威厳でもって、年上二人を叱りつける。

「悪かったって」

「すまなかった」

 以外にも二人は素直に謝った。


「信じられないわ」

 二人の謝罪をバッサリ否定して、シャシャは二人を睨みつけた。

「シャシャ、わたしはもう大丈夫なので――」

 すれ違いの末のメリッサの暴走のせいでもあるので、少しばつが悪い。


「だめよ!この二人は口だけで、絶対反省なんてしないんだから!」

「何だよその信用のなさ」

「あなた達の日頃の行いのせいね」

 今度は、シャシャとアレイのバトルが始まりそうだ。

「俺とそいつを一緒にするな」

 セスランは面倒くさそうにつっこんだ。


 シャシャが来てから、明るい空気に変わったことで気が緩んでいたが、メリッサは今果たすべき目的があることを思い出した。

「あの、急いでソルの屋敷に行きたいのですが」

 アナベルが馬車でソルの屋敷に向かっている。精霊鳥の情報だと到着まで時間はある。聖都の中心から近いとはいえ、ここから間に合うかどうか。


「わかった。今から行こう」

「え?」

「だから、話を付けに行くんだろ」

 セスランは悪戯っぽい目をした。

「いいね。殴り込みに行く感じ?」

「なんだかおもしろそうね」

 険悪だったアレイとシャシャが、乗り気でこちらを振り向いた。


「ちょっと待ってください!勝手に決めないで下さいよ、一応、僕の方が主導だって言ったでしょ」

 ジェイドが、あわてて話に割り込んだ。

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