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ブルー インフェルノ メテオーラ 蒼い業火に焼かれた魔女は守護天使と転生する  作者: 暁月シナツ


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45.ルビー(セスラン視点)

「なんだか、あなたの方が王女に見えるわね」

 王女は、ある意味でバケモノを見るかのような視線を向けてきた。

「本物の王女に、褒められるなんて光栄だな」


 服の着替えだけは、なんとか自分ですまし、王女の連れてきたブリジットに化粧を施してもらった。

 肌の露出がなく、体が細く見える衣裳を選んだ。最近の激務のおかげで少しやせていてよかったと思った。手には手袋(グローブ)をつける。さすがに男の手を見ればバレてしまうかもしれない。首元まで隠れるデザインの服を選び、スカーフで変声魔道具を隠した。髪の色も魔法で金髪に変えた。


「閣下失礼します」

 シュッ。

 ブリジットが、香水を振りかけた。

 ローズをベースにした、いわゆる女性らしい香りだ。

「きつくないか」

「いいえ、これくらいで普通です」

 げんなりといったオーラを出していても、出来上がったのは美女だ。


「騎士団の男性陣が、きっと目の色変えるわね」

 王女はにやつく顔を、扇で隠しながら笑いを耐えている。

「やめてくれ、気持ち悪い」

「でも、今日は女性の占い師。ルビーだって紹介するのよ」

「わかってる」

 わかってはいるが、溜息がでる。


「サルバドル卿には正体を明かしておく。そのほうが動きやすい」

「びっくりするでしょうね。狂血公爵の女装姿だなんて、楽しみだわ」

 公爵本人相手にそれを言う、王女の方が周りから驚かれるだろう。

 誰に似たのか、王太子と一緒で、妙に肝の据わった王女だとつくづく思う。


「魔女殿には、絶対バラすなよ」

「もしバラしたら?」

「国を、――滅ぼしてやる」

「怖いこと言わないでよ。ちゃんと協力関係で行きましょう」

 小娘が生意気だと脅してやりたいところだ。本気を出せばオルテンシア王国を破滅させることだってできるのだ。 


 ◇◇◇


 待ち合わせの場所で、待っていたメリッサはとても綺麗で愛らしかった。年頃の令嬢に仕上げられた彼女は緊張していた。

 蒼い瞳から魔力が漏れ出て、星の光が瞬いている。アレイの言った通り、眼鏡が壊れてから魔力が漏れ出ているようだ。


 落ち着きがない彼女の、感情に連動するかのように煌めきがさらに溢れ出た。

 セスランの時と同じ魔力だと、感づかれるかもしれない。ルビーに女装している間は魔力の色と質を変えて、気配そのものも変えセスランと違う人物になることを徹底した。そうして、メリッサに流す魔力の質も変えた。やたらと魔力に敏感な相手にはこちらも手を抜けない。


「メリッサ、落ち着くんだ」

 手を触れた瞬間、メリッサの魔力が流れ込んでくる。前世のメリッサのと同じ星の光を魔力に変えたものだ。

 ぞくりとして、胸に湧き上がるものを必死でこらえる。

 魔力であれ、なんであれ、干渉しすぎて記憶の扉が開かぬようにしなければならい。

 前世の記憶など、無いほうがきっと、今を幸せに生きられる。




 本物の女子の遊びに付き合うのは、けっこう大変だと気づいたのはすぐだった。

 とにかく、ずっと王女とメリッサはおしゃべりしているし、気になった物が一つでもあれば店にはいってみる。そして、ついでになんとなく全部見てまわり、買ったり買わなかったり。途中で露店でおやつ休憩をして、すぐ歩き出す。

 保護者の男二人は、だまってついていくしかない。


「メリッサと一緒でよかったわ。とっても楽しいもの」

「わたしも、シャシャと一緒で楽しいよ」

 主従関係でないからこそ、王女は羽根をのばして、素のシャリアで楽しんでいる。

 王女と一緒にメリッサが、笑っていればそれでいい。

 セスランは、何日かぶりにメリッサに会ったからか、なんとなく胸が高揚している気がするし、魔力を調整する魔法を使ったときの感覚が消えないでいた。


「ルビーお姉さまは、ずっと王宮で占い師をしていたんですか?」

「ええ、秘密だけど、王族はいろいろな局面で、以外と占いを頼ることがあるからね」

 メリッサを騙すのは、いたたまれないが致し方がない。

 王宮で時おり仕事をしているのは、本当のことだと心の中でなんとなく言い訳をしてしまっている。

 罪悪感がのしかかる。


 その罪悪感に追い打ちを掛けるように、メリッサは二人きりになったときに、とんでもないものを渡してきた。

「――これは、まさか。子竜のうろこ」

 七色に光るそれは、まぎれもなく子竜の脱皮したときのうろこだった。

 セスランは子竜のうろこは、五百年前の前世で一度見たことがあった。


 現在では、竜が去った後の巣穴にごくまれに落ちているものくらいしか手に入らない、ほとんど光にとけていってしまい、そのまま残っているのは希少なものだった。

  それゆえ幸運の象徴であり最強のお守りと言われている。子竜のうろこは生命力の固まりのようなものだ、その効果は邪気を祓う。


 メリッサはまた、自分がとんでもないことをしているのに、無自覚でやってしまっている。

「他のひとにもあげたの?」

「それは一つしかないので、ルビーお姉さまだけです」

 まっすぐ見つめないでほしい。こんなものを、女装して騙している奴に贈りものとさせるなんて最低だ。


 信頼を得ているのは、ルビーであって、セスランではないと己に言い聞かせる。

 だけれど純粋な、尊敬と親愛のまなざしを向けられると、どうしても衝動が抑えられない。

 子竜のうろこのネックレスをつけると、竜の生命力を含んだ加護が発動した。この数日の激務でつかれてた体の疲労感がなくなり、魔力が満たされていく感覚がした。


 そこに、メリッサの魔力も微弱に混ざっている。

 それを感知したとたん、本当に、どうかしてしまったのだ。

 無意識に、メリッサを抱きしめてしまった。      

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