表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブルー インフェルノ メテオーラ 蒼い業火に焼かれた魔女は守護天使と転生する  作者: 暁月シナツ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/41

19.今日の仕事は終わりです

 これは夢だ。師匠に土下座しても許されず説教が延々と続く。

「師匠。家を壊してごめんなさい。ああ借金が‥…」

 暖かい布団に包まれてもう少し寝ていたいという気持ちと、起きなければというあせりの気持ちが沸き起こる。何か大切なことを忘れている気がする。

「―――っお客様!!」

 メリッサは勢いよく飛び起きた。


「やっと目が覚めたか」

 アレイの顔を見て、完全に夢から覚めた。

 森にいたはずなのに、ここはどう見ても宿屋の中だ。いつどうやって帰ってきたのかわからないが、ベッドに寝かされていたらしい。

 泉の女神に本を渡して、そこからの記憶があいまいだ。何かをするように言われて、金髪の美女が助けてくれたような、そうじゃないような―――。


 夢の影響で、いるはずもない人が助けてくれたような勘違いをしているのかもしれない。

「あの、どうやってここへ?」

「女神様が帰り道を教えてくれたよ。水は手に入れた。そこに置いてある」

 アレイの言う通り、ベッドサイドテーブルに瓶が置いてある。

「どうして眠ってしまったのでしょうか」


 メリッサは寝起きの頭をフル回転させて、森での出来事を思い出そうとした。泉の女神がメリッサは蒼玉の魔女と呼び、二人の前に姿を現したのだ。

 それから‥‥‥。

「女神様の気まぐれな魔法だな。魔女殿が寝てる間に俺たちが森に入ったことを説教されたから、それを聞かせたくなかったんだろうな。」

「お説教ですか?」

 泉の女神がそんなことをするだろうか。どちらかというとご機嫌だったような気がする。


 メリッサは釈然としない。それに、魔法にかけられてしまい二人に隙を見せてしまったという焦りが沸いてきた。森でのことを、あれこれ聞かれるのではないかと警戒する。

 アレイの様子は変わりない。

 ちらりとセスランの様子をうかがう。何か大切なことを忘れているような気持ちになる。  

 胸がもやもやするが、それが何かは思い出せない。

 それに、彼がずっと無言で窓の外を見ているのが気にかかった。


「セスをじっと見てどうしたんだ?」

「いえ、あの、ここまで運んでいただいて、ありがとうございます」

  なんとなく気まづくなって、視線をそらしてしまった。

「ああ、運んだのはセス。重い荷物は俺は持たないから」

「は?」

 さらりと絶妙に失礼な発言をされた気がする。


「お客様。今日の仕事は終わりました」

「ああ、お疲れさん。もう夜の八時だしな」

 そう、窓の外はもう真っ暗だ。セスランがカーテンを少し開けて外を見ているので、夜だとは気づいていた。

「なので、失礼します」

 メリッサは水の入った瓶をつかみ取り、麻の花文様のカバンに押しこんだ。急いでブーツを履き、一直線で部屋のドアに向かった。が、ドアノブに手をかける寸前に呼び止められた。

「魔女殿」


 ずっと無言だったセスランの声だった。振り返るとすぐ後ろに彼が立っている。そう広くない部屋だが、気配もなく後ろに立たれてメリッサは驚いた。後ずさりするが後ろはドアでそれ以上動けない。

「な、なに‥‥‥」

「眼鏡を忘れている」

 セスランは、瓶底眼鏡をメリッサの顔に掛けた。

 眼鏡をかけると、瞳の色が灰色になった。

 ―――しまった!


 寝ていた時に、いつもの癖で外してしまっていたのだ。メリッサは思っていたより動揺していたらしい。眼鏡をしていないことに気が付かなかった。瞳を見られてしまった。

「今は外に出ない方がいい。今夜はこの部屋に泊まって、明日帰るんだ」

「早く帰りたいので。お気づかいなく」


 メリッサは魔女の秘密を知られてしまったので、早くこの場を去りたかった。

 目の前にいるセスランは、メリッサの本当の瞳の色が蒼色であることを指摘してこない。森の中での事も聞いてこない。それが逆に恐ろしかった。ローブを目深にかぶりなおし、部屋を出た。





「いいのか、行かせて」

「仕方ない。彼女は俺たちを信用していない」

「まあそうだろうな。魔女に依頼する以上、魔女の秘密には踏み込んだり口外しないのが暗黙のルールだから黙っていたが。あれが蒼玉なんだな美しい瞳だった」

 魔法術師や市井の魔女を生業にするものには、企業秘密や特殊能力があるものが多い。

 アレイはカーテンをわずかに開け二階の窓から、宿を後にするメリッサの姿を見て言った。


「懐かしいか?」

 アレイはセスランに問いかける。

 群青色のローブをかぶり、セスランは顔を隠した。

「あれは、まったく以前と同じ姿で生まれてきた。神のなさりようには驚くばかりだ」

 僥倖か、それとも断罪なのか。


「考えすぎるなよ。会いたかった人にまた会えた。とりあえずそれでいいじゃないか」

「そうだな」

 陽気を振りまく相棒のおかげで、セスランは深い記憶の沼に沈まずにすんだ。

「――動いたな」


 セスランは、メリッサに掛けておいた守護魔法にひっかかったものがいることを感知した。

 その様子に気が付いたアレイは壁に立てかけてあった剣を帯剣する。 

  窓の外は夜の繁華街だ。メリッサの少し後ろに後を追う影が現れる。

「まったく、三賢者に聞いていた以上に手がかかりそうだな」

「三賢者たちから逃げ出したんだ。彼女は今は反抗期らしい。俺は先に行く」

「了解」

 セスランは瞬間転移魔法を発動させその場から消えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ