15.メリッサ2年前回想 ルビーお姉さま
占いの館に転がりこんでから、館中の掃除やお茶出し、店主のお使いから炊事までいろいろな仕事をして過ごした。
ルビーは毎日出勤してくるので、メリッサと一緒に過ごす時間が一番長い相手になった。
長い金髪に、紅い瞳が美しく、長身で女王様みたいで女子がみても見惚れる美女だ。黒いドレスに黒に銀糸を織り込んだストールを巻いている。女王と魔女を合体させたらきっとこんな感じかなとメリッサは妄想する。女性に年齢を聞くのは失礼なので聞かなかったが、おそらく20代くらいだろう。
ルビーは家をなくした経緯を聞いて慰めてくれたし、お菓子もよく差し入れしてくれた。
16歳の少女が家なき子になったのを憐れんでくれたのだろう。
占いの館で新人占い師として少しずつ客を取っていたメリッサは、ルビーに占いの仕方のアドバイスをもらっているうちに、彼女はもともと魔法術師であることを知った。
「私、ウィズダムを卒業したら、魔素材をあつかう仕事をしたいと思っているんです。その前に、家を壊して借金作ったんで、入学費用稼がなきゃですけど」
メリッサはタロットカードをシャッフルして一まとめにしながら、将来の目標をルビーになにげなく話した。
「そう」
対面に座るルビーは、一まとめにされたタロットカードの山から、一枚カードを引いた。
魔術師のカード。
―――始まりと挑戦。
「じゃあ、少し教えてあげようか」
その日からメリッサは休憩時間や暇を見つけては、ルビーに素材保存の魔法を教えてもらった。
基礎の魔法術を教わった後、雪の結晶をそのまま保存するという課題に挑戦していた。
メリッサが占いの館に転がり込んできてから1週間が経ち、すっかり街は冬景色で毎日雪が深々と積もっていた。
魔法の練習をするためにコートを着込んで店先に出ると、膝くらいまで雪が降り積もっていて足がすっぽり埋まってしまう。
「寒いいいい」
真冬のパウダースノーは雪の結晶が目視できる。積もった雪の上澄みを手ですくい集中する。
「固着、冷気保存、封印」
魔法で雪をパッキングして、すぐに占いの館に入り、2階に駆け上がる。
雪の塊を手のひらに乗せたメリッサは、ルビーにそれを差し出した。
「見てください!」
暖かい室内でもその雪は溶けず、結晶も維持されている。
「すばらしい、ではこの中から結晶を一粒だけさらに取り出して保存してみて」
さらに高度な課題を課されたが、メリッサはひるまずに集中する。
「選別、抽出、冷気保存、固着、封印」
雪の結晶が光る、一粒の結晶が塊を離れ宙に浮く。きらりとそれが輝き封印された。
極小の輝く結晶はしっかりと形を維持している。
「よくやった、合格をあげよう」
ルビーが微笑み、頭をなでてくれた。
「やった!!」
メリッサはうれしくて飛び跳ねた。
メリッサの大声に何事かと休憩室に集まった占い師のお姉さま方も、彼女が作った溶けない雪の結晶に驚き大騒ぎになった。
「こら!みんなさぼってなにしてんだい!さっさと仕事しな!メリッサは外で雪かき!!」
騒ぎを聞きつけてきたマルグリットの鶴の一声でみな解散し、メリッサは慌てて階段を駆け下りて外に出て行った。
マルグリットはメリッサがいなくなるのを確認してから、ルビーに耳打ちした。
「あんまり入れ込むんじゃないよ」
「そんなつもりはない」




