14.メリッサ2年前回想 占いの館
冬の厳しい寒さが到来して来る頃、メリッサは家をなくして途方にくれていた。
なくした、というよりも破壊してしまったのだ。
暖炉の火をつけようとしたらマッチ箱がカラで、暖炉の上に置いてあるはずの火打石を探したがそれがなぜか見当たらなかった。
寒空の下マッチを買いに行くのが面倒で、メリッサは師匠に禁止されていた火炎魔法で暖炉の薪に火をつけた。
そうしたら、火炎魔法に失敗し家を吹き飛ばしてしまったのだ。
「どうしよう。家が・・・・・・師匠に殺される」
目の前が焼野原だ。
賃貸の家も家財道具も魔導具も、たんす貯金もすべて消し炭になった。
立ち尽くすメリッサは激しく後悔した。師匠に火炎魔法のコントロールができるようになるまで特に家の中では使うなと厳命されていた。
少しくらいならと、めんどくさがった結果がこれだ。
師匠は用事があると行って出かけて、あと2週間は帰って来ない。
吹きすさぶ風にメリッサは我に返った。とにかく今日寝る場所を探さなければ、凍え死ぬ。
◇◇◇
「あんた、やっちゃったのね」
「はい・・・・・。」
「師匠の家、ぶっ壊してここに転がり込んでくるなんて、もはや珍獣ね」
占いの館「マリアローズ」の店主のマルグリットは、憐みながらも、笑いを耐えている。
暖かい店内で、鼻をすすりながら半べそをかいている少女は懇願した。
「しばらく、住み込みで働かせてください」
「いいわよ。2階の空き部屋貸してあげるわ」
「ぐすっ。ありがとうございます」
占い師歴40年の猛者である店主は、女性占い師たちを5人ほど雇い、人気の占い店を営んでいる。
師匠の友人で、メリッサも何度も遊びにきたことがあり、なじみのお姉さま方に占術を教わったこともある。真っ先に頼るべき人として思い浮かんだのがマルグリットだった。
二階に上がってすぐの部屋が、休憩室となっており従業員のお姉さま方がメイクをしたり、食事をする場所となっている。
「あっ」
休憩室になじみのお姉さま以外の人がいるとは思わなかったメリッサは、見たことがない美女が椅子に座っていて驚いた。
驚きのあまり、泣きべそが引っ込んだほどだ。
金髪の紅い瞳の美人が、メリッサに気づくと珍妙なものを見るように目を見開いた。
黒焦げたローブとその下は部屋着のワンピース姿のメリッサは、瓶底眼鏡も顔も髪も煤だらけで、ブーツには穴が開き実にみすぼらしい姿をしていた。
美女の前で急に自分のいでたちが恥ずかしくなる。
「ちょっと、あんた、入口の前で止まってないでさっさと入んな」
マルグリットが、メリッサを休憩室に入るよう催促する。
「この子はメリッサ、今日から住み込みで雇った子だから仲良くしてね」
マルグリットが簡単に紹介すると、美女は無言でうなずく。
ーーー絶対引かれている気がする。
「彼女はルビーよ、短期で雇っている子だけど、占いの腕はあんたより100倍は上だから先輩と思ってやってくのよ」
「はい、よろしくお願いします」
ぺこりとお辞儀すると、焦げたローブが肩からずり落ちる。
「まずはお風呂に入ってきな」
マルグリットは、タオルと衣裳部屋から引っ張り出してきた服をメリッサに渡した。
◇◇◇
メリッサが風呂場に行ったことを確認すると、無言だったルビーがマルグリットに詰め寄った。
「マダム、今は新しい子を入れるのは危険だ」
「仕方ないじゃない、友人のところの子だし、私にとっても娘みたいなもんよ。まだ子どもなんだから外に放り出せるわけないじゃない」
「それはそだうだが」
「私らもあんたたちの捜査には協力するわ。でも、住み込みの子一人増えたくらいちょっとしたことじゃない。その辺もどうにかするのがあんたらの仕事でしょう」
「護衛対象が増えるのは、大変なんだがな」
二人の密談は、メリッサがタオル一枚で「シャンプーがきれてる」といって風呂から出てきたことで強制的に終わった。




