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ブルー インフェルノ メテオーラ 蒼い業火に焼かれた魔女は守護天使と転生する  作者: 暁月シナツ


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10. 西の森の魔物

 メリッサは森の精霊に道を開けてもらうお礼に、りんごを三つ献上した。すると門番の精霊は、行くべき方向を教えてくれる。

 森の大樹までくると、大樹が好きなお茶を入れてもてなし、少し世間話をするといつも上機嫌で次の道順を教えてくれる。

 西の森に入るときはこうやって、精霊たちと会話しながら進んでいくのだ。


 精霊が見えない二人には、ただ木を眺め、祈りをささげてるように見えるだろう。

 精霊との会話はメリッサの秘密の一つだ。

 この森に入ると言ったときに、二人があきらめてくれることを少し期待していたがそうはいかなかった。

 だが、見えない人間には理解できないし、気が付かないだろう。祈ることで道がわかるそういう魔法をつかっているといってごまかせばいい。


 ここまで順調にきた。

 この迷いの森では、精霊のガイドなしでは正解の道順を知ることはできない。いつも道が変わるからだ。精霊が見えないほとんどの人間には危険な迷いの森と認識されるだけだ。


 森がざわめきだす、木の葉で日が陰り、空気の温度が下がる。

 樹林の間をかき分けていくと、少しずつ木が間引かれはじめ、広い草原にでた。


「もうすぐ、魔物がでます」

 メリッサは空を指さす。

 太陽が中天にある。ギラっと電撃のような光が走った瞬間、快晴の空に巨大な鳥が現れた。


「まじかよ、お前預言者か!」

 アレイは剣を抜き戦闘態勢をとる。

「怪鳥エネルギス!」

 5羽も集まってきた。


 ギャアギャアとけたたましい怪鳥音を発している。

 エネルギスは電撃を口から発射して、速攻で攻撃してくる。

 ガガガガガガ!!


 セスランが防御魔法で壁を作りをすべて弾く。

 光の壁が電撃を弾き飛ばす。

 アレイが飛行魔法で大ジャンプをし、一羽の首を炎魔法を展開した剣で切り落とす。

 エネルギスをアレイがかく乱している間に、メリッサは捕獲魔法を展開する。光の球体が空中で六角形のかごの目のように配置し、敵をとらえる網を張る。


「燃やしてください!」

 二人は炎の魔法を展開する。

 捕獲魔法によってとらえられていたエネルギスは網の中でまとめて燃やし尽くされた。


 メリッサは二人と戦闘するのは初めてだったが、強い魔法術師だと直観していた。

 やはり思った通りだった。

 瞬間的に連携を取り、あっという間に片付いた。


「あの怪鳥エネルギスは炎の魔法に弱いので、すっごく助かりました」

 セスランが足早にメリッサに詰め寄ってきた。

「やつらの弱点は知っている。いつも、ああなのか?!」

「いつもは一羽だけです。今日はお二人がいるので多めに出てきたのかも」

「そうではなくて、炎の魔法が苦手なのにどうやって今まで戦ってたんだ?」

 セスランは眉尻を上げる。


「捕獲魔法で地上に落として、こう地道に電撃を交わしながら、岩の魔法でボコボコに‥‥」

 メリッサは身振り手振りで再現する。

「今日みたいに多かったら無理じゃないか?」

「そのときは違う方法を試してみますよ」


 あまりの雑な言い分にセスランの美貌がくもり、口の端がひきつる。

 メリッサはそれを見ないようにそっぽを向いて、ローブを深くかぶりなおす。

 しかし、それがセスランの導火線に火をつけてしまったらしい。


「そんなことをしていたら死ぬぞ!」

 セスランは、メリッサの頭上から雷を落とした。その声色は完全に怒っていた。


 メリッサは本気で怒られたのが久しぶりでビクッと肩を震わせた。

 ちらりと彼を見上げると、 せっかくの美貌がすっかり鬼の形相に変わっていた。

 怒っていても美しさはそのままなんだなと、あさっての方向のことを考えてメリッサは身をちぢこませた。


「まあまあ、セスそんなに怒ったって、魔女殿は全然反省してないぞ。岩の魔法で怪鳥をボコボコにってぶふっ」

 アレイが途中まで言いかけて笑い出した。

「あはははは、もう規格外過ぎて笑えて来た」

「笑えるか!」

 セスランはアレイを睨みつける。


「魔女殿、セスは君のことが心配なんだ」

 笑いを堪えながら、アレイはメリッサにとって意外なことを言った。

「笑ってて悪いが、俺も心配だよ。キミはそうは思っていないかもしれないけど」

 メリッサは顔を上げ、セスランと、アレイの顔をしっかりとみる。

 悪いことをして叱られた後の幼子を慰めるような、暖かいまなざしがそこにあった。メリッサの胸が少しむずむずとした。


 メリッサは森で自分が優位に動ける方法があることをいいことに、少し傲慢になっていたかもしれないと思った。

 本来ならこの森に入るのは命がけだ。この人たちも自分を信じて付いてきてくれているが、絶対大丈夫だという保証はない。メリッサが万が一にでも死んだら、この二人は多分森から出られない。二人はそれを差し置いてでも、メリッサ自身の心配してくれている。


「ごめんなさい」

 しっかり二人に顔を向けて言った。

「心配してくれてありがとう。これからは、気を付けます。・・・・・たぶん」

「語尾のたぶんはいらない」


 メリッサを見下ろす距離にいたセスランが、素早く頬を両手ではさんで顔を上向かせる。

「これからは一人で森に入らないこと」

 紅い瞳が、瓶底眼鏡の奥の瞳を捕らえる。

 それはしっかりと言い聞かせるという確固たる意志と、憂いをふくむような視線だった。

「わかりました」


 メリッサはセスランの視線に耐えきれなくなって身をよじるが、頬をはさむ手が離れない。

 引きはがそうと、腕でセスランの胸を押しのけるがびくともしない。

 至近距離で触れられて、視線がそこにある。魔物と戦うときは冷静だったのに、メリッサは今、壮絶に混乱している。こんな美貌をもった美丈夫に接近されたら、きっとだれでも狂いだす。

「約束します!ごめんなさい!」


 必死に叫んで、メリッサはやっと解放された。

 脱兎のごとく飛びのいたメリッサは、すぐに二人に背を向けた。顔が熱い。こんな無様な姿を見せたくない。

 お金とクビ回避の呪文を五十回は唱えて、心を落ち着ける。


「まるで飼い主に叱られた猫だな」

 アレイのつぶやきがしっかり聴こえたが、もう下手を打ちたくないメリッサは口をつぐんだ。


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