四つめの音
楽曲はアニソン。
楽譜は、きよちゃんが私のキーに合わせてコード譜を作ってくれた。
しかし、利美ちゃんはクラシック出身。
きよちゃんのコード譜では読みづらいらしく、
自分で新しく譜面を書き起こしてくれていた。
身体ひとつで歌うだけの私は、そんな二人を見ながら、どこか申し訳ない気持ちになっていた。
文化祭まで、私たちは練習漬けの日々を送った。
そんなある日、きよちゃんがポツリと
「アニソンなら、ドラムが必要にゃもな……」
と呟いたのだ。
言われてみれば、確かにそうだ。
しかし、元々、きよちゃんのピアノから始まったセッションバンド。
音楽仲間の知り合いなんて、ほとんどいない。
どうしようかと頭を抱えていたその時、クラスメイトの中澤さくらさんが声を掛けてきた。
「そういえば深崎さん、ドラム叩ける人を探してるんだよね?」
そして紹介されたのが、杉崎浩子さんだった。
もの静かな彼女からはドラムのイメージがまったく無くて、最初は正直、驚いた。
けれど、初めてスタジオを借りて練習した日──
音を合わせた瞬間、まるで昔から一緒にいた仲間のように息がピッタリだった。
それからの日々は、夢のように充実していた。
グループLINEでは、リーダーのきよちゃんを中心に、
練習の反省や「今日のここ良かった!」という言葉が飛び交い、お互いを褒め合う、明るく温かい空間になっていた。
本来なら、バンドにはベースが必要だ。
けれど──きよちゃんの天才っぷりはそこでも発揮された。
左手でベースコードをガンガン弾きながら、右手でメロディを操る。
その姿に、誰もが言葉を失った。
こうして私たち“音葉”は、ピアノ・ヴァイオリン・ドラム・そしてボーカルという、少し不思議で、でもどこにもない音を奏でるバンドになった。




