選ばれない私
──空の向こうで笑っているあなたへ。
あなたの明るい音が、今も私の胸の奥で跳ねている。
あのリズムに、もう一度、手を合わせたくて──
この物語を、あなたに捧ぐ。
出会いは、きっと運命だった。
私はいつだって、「選ばれない」側の人間だ。
歌うのが好きで、夢は歌手になること。
中学生の頃、クラスではバンド活動が流行っていた。
放課後の音楽室からは、いつも誰かの笑い声とギターの音が聞こえてきて——
当然のように、私も誘われると思っていた。
でも、どのバンドにも、私の名前はなかった。
「深崎は歌上手いから……うちら、素人じゃん?」
「うちら、お気楽に楽しみたいだけだからさ。プロ目指す深崎とは、ちょっとバイブス違う感じ?」
「私たち、アイドル目指してるからさ。方向性、違うんだよね?」
笑いながらそう言われても、胸の奥で小さな音が割れた。
“素人だから”“方向性が違う”って言葉は、どれも優しいようで、少しだけ痛かった。
同じ中学生同士のバンドなのに。
クオリティなんて、誰も気にしていないはずなのに。
私は勝手に「本気でやる子」というラベルを貼られ、気づけば一人だった。
それでも、歌うことだけはやめられなかった。
放課後の教室でも、夜の自分の部屋でも、
誰に聞かれることもない歌を、私はずっと歌っていた。
ある日、友達が言った。
「深崎、歌上手いじゃん? ボーカル探してたグループあったから、紹介しといたよ!」
でも、その返事も「No」だった。
理由は分かっていた。
私の声は低い。
いわゆるアルト。
日本で好まれるのは、もっと高くて可愛い声。
テレビで流れる女性アーティストの曲は、どれも原曲キーでは届かない。
それが、私がぶつかった最初の壁だった。
どれだけ努力しても、どれだけ歌を好きでも、
私は「選ばれない」側の人間。
いつの間にか、自分でもそう思い込むようになっていた。
夜空を見上げながら、「どうせ星になんて届かない」って笑っていた。
でも——
あの夜、ひとつの“出会い”が、私の歌を変えてくれた。




