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3.事件を追って。

新作情報、あとがきに。








「『ホームレス変死事件』……発生しているのは、東京と埼玉の県境。河川敷ってなると、一ヶ月前のこととはいえ懐かしいな」



 僕は電車に乗り、新聞記事に書かれた内容を確認しながら呟く。

 レイラさんに拾ってもらうまでのちょっとした期間だが、自分もとある河川敷でホームレスの真似事をしていた。右も左も分からないまま東京という地へ出てきて、誰を頼ることもできず。あの頃の僕は無知ゆえに向こう見ずで、後先なんて考えていなかった。

 あるいは、それについては現在も大差ないかもしれないけど。



「さて、と。次の駅で降りないと」



 とにかく今は事態解決のために動こう。

 そう考えて僕は、少ない荷物を肩に担いで電車を降りたのだった。





 ――一週間前のことである。

 東京都と埼玉県の県境にある河川敷、その高架下でホームレスの男性が変死体となって発見された。目立った外傷こそないものの、眼球が溶け落ち、首には抉られたような傷跡がいくつも残されていたという。検死の結果、被害者男性の爪から皮膚片を採取できたため、自傷行為によるものであると断定された。


 以上が事件の概要ではあるが、一部は僕の方で調べて補足した内容もある。

 ともかく、気になった点は二つ。



「溶け落ちた眼球に、首の傷跡。これってやっぱり、レッドアイズ……?」



 憶測で語るべきではない、とは分かっているけど。

 僕は先日の事件でも出てきた麻薬の存在が、気になって仕方なかった。アングラな場所であれば、そういったものが入手できる機会もあるだろう。でもアレは相応の価格で取引されているはずだし、ホームレスの男性が購入できるとは思えなかった。



「とりあえず、現地で聞き込みしないと――ん?」



 そんなことを考えながら歩いていると、何やら言い争う声が聞こえてくる。

 何事かと思い声を追ってみると、件の河川敷で一人の少年が、ホームレスの男性たちと揉めているようだった。男の子は中学生くらいの年頃で、短く刈り上げた髪に眼鏡をかけている。

 対するホームレスの男性は、三名。

 一対一でも分が悪いのに、これではあまりに無謀だった。



「だから、父さんはどうして……!!」

「うるさいな、坊主! あまり俺たちの場所に踏み込むな!!」



 そんなわけなので、僕は慌てて仲裁に割って入る。



「あのー? すみませーん」

「……あ?」

「なんだ、またガキかよ」

「あはは……すみません。この子、僕の知り合いでして」



 そして、口から出まかせ。

 適当な理由を付けて、男の子の手を取った。



「いや、すみませんね。後でキツく言いつけておきますんで」

「ちょ!? 待て、誰だアンタ――」

「いいから、ちょっと話を聞かせてくれって!」



 そのまま、引きはがすようにして。

 僕はその子を河川敷から遠ざけ、必死になだめるのだった。








「はい、コーラ。……飲む?」

「いらねぇよ」

「そう?」



 近くの寂れた公園まで、少年を連行して。

 僕は自販機で買った清涼飲料を手渡そうとしたが、あっさりと拒否されてしまった。仕方なし。もったいないので、このコーラはあとで僕が飲むことにしよう。

 そう思ってベンチに腰掛ける男の子の隣に座り、バッグにそれを押し込んだ。

 そして、単刀直入にこう問いかける。



「どうして、揉めてたのさ。相手は大人だよ?」

「…………いいだろ、別に」



 すると少年はへそを曲げてしまったらしく、ツンとした態度で応えた。

 僕はその様子を見て、しばし考える。僅かに聞こえてきた内容から、いくつか憶測は立てられた。だったらその中で、一番可能性が高いのは――。



「もしかしてだけど、この事件と関係ある?」

「……お前、その記事!」



 やっぱり、河川敷での事件との関連性だ。

 こちらが新聞記事を示すと、男の子は驚いた表情で僕を見てくる。ここまでくれば、あとは誘導していくだけで情報は引き出せるはず。

 そう考えて、僕は改めてこう訊ねた。



「それで、どうしてあんなことを?」

「………………」



 すると彼はうつむいて、握った両拳を震わせる。

 そして、絞り出すように言うのだった。




「その記事を書いたのは、俺の父さんなんだ……」――と。




 


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