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第4話 最強(ただし方向音痴)の上杉謙信、爆誕!

 朝の訓練場──。


「ハイ、信長くん! 今日から新しい共同訓練スタートよ~!」


「もうやだぁあああ……昨日やっと毒ガス消えたばっかりなのにぃ……」


 そのとき、訓練場の空間がメリメリッッッ!! と音を立てて裂けた。


 ──次元の裂け目である。


「なにごとぉぉぉ!? 急に“RPGで異次元ボスが来る演出”始まったぞ!?」


 そこから飛び出してきたのは──白銀の鎧に身を包み、馬にまたがったひとりの美丈夫!


「我こそは越後の龍──上杉謙信!!!  貴様ら、この“神の国”を脅かす悪しき魔族か!!?」


「ちげぇよ!!!」


「ってか謙信、どこから来たの!?」


「さっきの次元の裂け目じゃよ!!  旅立ってから半年、ようやくたどり着いた!!」


「半年!?  お前どんだけ迷子なんだよ!!」


 謙信は地図を取り出す。だが──裏面を見ていた。


「お前そりゃ道もわからんわ!!!!  表裏逆だし、そもそもこれ【観光マップ】じゃねぇか!!!」


「ふむ。温泉地と特産品は把握しておる!」


「冒険じゃなくて旅行しとるやんけ!!!!」


* * *


 さっそく信長と信玄、謙信の三人は顔を合わせることに。


「信長、貴様……異世界でポンコツ化とは情けない」


「やかましいわ!!!  お前は転移場所から半年さまよってたやつだろ!!」


「この世界、なぜか北が四つもあるのじゃ……」


「それ地図がバグってるの!!!」


「それに比べて俺は……」


 信玄が、どや顔でイケメンポーズを取る。


「異世界ホスト歴3年、売上No.1。月間指名数500越えの男だ」


「なんか話の規模が一人だけ新宿っぽい!!!」


「ちなみに最近のナンバー2は“明智光秀”だ」


「うわあああああああ!!!!  出た名前ァァァ!!!」


 信長は膝から崩れ落ちた。


「あの裏切り者、ホストやってんの!?  まさか“本能寺の変”のあとに転生して、ホスト転職してんの!?」


「信長ァ……そのうち“あの日のこと”を話さねばならぬな」


「シリアスフラグ立てるなよ!?  今ギャグパートだからな!?  重い話はあと40話後にやれよ!?  ちゃんとルール守ってくれ!!!」


* * *


「ところで信長、訓練場ってことは今から戦か?」


「いやいやいや、訓練は訓練でも……“魔法障害物リレー”です」


「魔法でリレー!?  意味がわからん!!」


「ちなみに競技名は──《マジカル☆逃走中!~鬼は追ってくるが味方は裏切る~》です!」


「やばいルールきたぁああああああ!!!!」


 参加者は全員、魔法を使って鬼から逃げながらリレー形式でバトンをつなぐ。

 なお、鬼役はスライム(毒属性)。

 さらに、味方同士の妨害魔法もOK。


「お前それ、協力する気ゼロじゃん!!!」


「異世界流リレー、友情と信頼は置いてきました!」


「感動の欠片もねぇえええええ!!」


* * *


 異世界訓練場にて、魔法障害物リレー《マジカル☆逃走中!~鬼は追ってくるが味方は裏切る~》がついに開幕!


「では、よーい……スタート!!!」


 ドゴォォォン!!!


 開幕爆発。


「なんでスタートと同時に爆発してんの!?!?!?!!」


「演出じゃ! これが異世界流開幕花火じゃ!!」


「花火のレベル超えてるわ!!  毒スライムもビビって方向転換してるわ!!」


 魔法で飛び交う火球、風刃、氷結──

 参加者全員が「味方は裏切る」のルールをフル活用し、他人をバトンで殴り合っていた。


「バトンってそう使うもんじゃねぇぇぇええええ!!」


 ちなみに現在トップは──


「へいらっしゃい!  バトンの代わりにラーメンどーぞ!」


「信玄お前なにやってんの!?  コース沿いで屋台開いてるじゃん!!!」


「臨時営業中だ。期間限定“鬼スライム味噌ラーメン”だ」


「なんだよ“鬼スラ味噌”って!!  食べ物でボケるなよ!!」


 なお、そのスープには微量の毒が含まれている。

 ※原材料のスライム由来


「食ったら死ぬじゃねぇかああああああ!!!」


 一方、謙信。


「ふむ……この分かれ道、右へ行けばよいか……」


 そう言って、左に曲がった。


「また逆やないかああああああああ!!!!」


 謙信はそのまま訓練場を飛び出して森へ。


 数分後──。


「信長殿!  魂が抜けたような謙信様を拾いました!」


 戻ってきた謙信の手には、なぜかイノシシの丸焼き。


「道に迷ってたら焚き火コンテストに参加させられてな……優勝した」


「異世界、どうなってんだよおおおお!!!!」


* * *


 最終結果。


優勝:地元の農民(隣の村から転生してきたばあちゃん)


準優勝:スライム(最後まで生き残ってた)


特別賞:信玄のラーメン屋(ラーメンミシュラン異世界支部・金星獲得)


「ちょっと待て、俺……順位にすら入ってないんだけど!?」


「そもそも信長、走ってすらいなかったよな?」


「お前が開幕で投げた火球に巻き込まれて、開始10秒で燃え尽きたんだよ!!!!」


「Zランクの中でも最低評価だな。Zマイナスとでも呼ぶか……」


「新ランク作るなよおおおおおおおお!!!!」


* * *


 こうして終わった異世界リレー(バトロワ)大会。


 上杉謙信は方向音痴、信玄は屋台営業、信長は燃え尽きる──。


 この異世界、まともなヤツがひとりもいねぇ!!!

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