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マドリーとエリドラTの話

TSガンで撃たれた小憎らしいエリートドラゴン達はパニくりどっかに行きました。

そしてショタな最強ドラゴンをTSビームで撃ったら美少女ロリになって大喜び。


「最高だよね、俺もTSして美少女になった時そうだったからわかるよ」

「むほっ、翼殿も男だったなり? 全然そう見えないなり!」

「いやいやマドリーこそ生まれつきの美少女に見えるよ」

「こ、ここ、困るなり、翼殿の方が美少女なりよ」

「いやいやマドリーの方が絶対美少女だって~」


 なにこれ、美少女同士で褒め合うってむっちゃ楽しい!


「そうなり! ちょっと待ってなり」


 マドリーが空間に手をかざすと、微妙に透けた白い紙が現れた。


「え? なにそれ、どうやって出したの?」

「タルバル村で手に入れたマジックアイテムなり」


 言いながら度肝抜く早さで絵を描き始めた。


「出来たなり、翼殿のイラストなり」

「すっげー、マジ上手いー! でもちょっと可愛く描き過ぎじゃない?」

「むほほ、そんな事ないなり。本当の事を描いただけなり」


 やべえ、美少女マドリーと美少女俺のやり取り楽し過ぎ!


『こほんっ、こっほ~ん!』


 碧に水を差された。


「あ、紹介するよ。この人はTS神から授かったTSガンの、その、えーっと……精霊だよ」

『ちょっ、翼!?』


 驚かないで、これ以外説明のしようがないんだけど。


『せ……精霊の碧です。よ、よろしくね~マドリ~ちゃん』


 作り笑いで手を振るの止めて欲しいんだけど。


「むほぉ、TSガン!」 


 マドリーが微妙にキモい動きで立ち上がると、これまたキモい歩きでこちらにやって来た。


「精霊の碧殿、よろしくなり!」


 今度はカミツキガメみたいな速さでTSガンに顔を近づけた。


『わっ、キモっ!……じゃなく、えへへ~、マドリーちゃん? そこまで近づかれるとお姉さん困っちゃうな~?』


 作り笑いで脂汗浮かべるの止めて欲しいんだけど。


「碧殿のイラストも描いていいなり?」

『え? い……いいけど~』


 すかさずイラストをとんでもない早さで描き上げる。


「はいなり! 自信作なり」

『わ~い、どれどれ~……ん?』


 相変わらず凄い上手さだけど、何かこう中性的なんだけど。

 少女漫画に出て来る男子みたいな。


『じょ、上手ね~、でもあたしこんな感じに見える~?』

「言われる前にそれがし気付いたなり」

『え? 何を~?』

「碧殿もTSしたなりね、男の面影あるなり」

『あたしは最初から女よっ!』


 TSガンが勢いよく回転、マドリーの頬をぶった。


「なりブフッ!!」

「ちょっ碧! 何やってんの!」

『あっ! ご、ごめん……』

「大丈夫? マドリー」


 頬をぶたれて横を向いたままのマドリーに声をかける。


「まったく大丈夫なりよ」


 またもや涎を盛大に流しながらこちらを見るマドリー。

 その頬は真っ赤っか、しかも涙目なので痛々しさ四割増しだ。


「大丈夫そうに見えないけど、っていうか涎垂れまくってんだけど」


 それに慌てて涎を拭う。


「こ、これは癖なり……緊張すると自然に出てくるなり」


 こんな設定無いんだけど。

 ひとまずそれは置いといて。


「碧! マドリーに謝りなさい!」

『う、うん! ホントにごめんね~!』

「あ、謝らないでくださいなり、男からTSしたと本気で思ったそれがしが悪いなり」


 何で怒らすようなこと言うの?

 マドリーってこんなヤツだっけ? 悪気無くとも相手を怒らせるタイプじゃないんだけど――って、両手を合わせる碧のおでこに怒りマークが浮かんでる!

 別な話題を振ろう。


「それにしてもエリドラ達の前でずっと下向いてたけど、居眠りしてたの?」

「違うなり、何も言われずここに連れて来られたと思ったら、エリドラTさんのお話が始まったからこっそりTS百合漫画描いてたなり」


 持ち上げたマドリーの両手が左右に開くと、カワイイ美少女が描かれた原稿用紙が現れた。


「うわっ、レベルたかっ!」

「むほほっ、そう言われると嬉しいなり」


 そこでマドリーがきょろきょろ周囲に目をやる。


「あれ? エリドラさん達いないなり」


 こっそり漫画描いててあのドタバタに気づかなかったのか。 

 繊細な性格の設定なのにこんな図太い神経の持ち主だったとは。

 おっと、マドリーが超カワイイ顔でじーっとこっちを見てる。

 早く説明しよっと。


「――って訳なんだよ」

「むほぉ……そんなことがあったなり、エリドラさん達大丈夫なりかな……」

『あんな連中心配することないわよ~。それにしてもホント、プロの漫画家みたいに上手いわね~』


 碧がウィンドウから顔を突き出して原稿に目を近づける。


「そ、それがし何てまだまだなり」


 両手を前に組んで腰を左右にモジモジさせる仕草にまったく不自然さがない。

 さっきまでキモオタだったのが信じられない美少女ぶりだ!


『ところでこれ、印刷とかどうやるの~?』


 碧が宙に浮かぶ原稿に指を伸ばす。


「さ、触っちゃダメなり、紙に封じ込む前のデータはちょっとしたショックで壊れるなり」


 そっと指先から原稿を遠ざけた。

 マドリーにとってそれ程大事なんだ


「こらぁぁぁぁ! 人間ー!」


 わっ! 何? 空から凄い声、って女体化したエリドラ達じゃん。

 なるほど、男体化したドラゴンに「我らを守ってくださいー!」と追っかけたけど、羽ばたく筋力も低下したから追いつけなかったのか。


「むほー! この女性のドラゴンさん達は何なりー!?」

「あいつらTSしたエリドラだよ」

「むほっ、そうなりか!」


 いや、何で嬉しそうなの?


「エリドラさんたちもTSしたなりね、よかったなり!」


 いや、何でそんな事言うの?


「おいそこの人間! 今すぐ俺たちを元の姿に戻せ!」


 マドリーの言葉スルーしてむっちゃ俺に怒ってる、まあ当然だけど。

 しかし戻って来るとは予想外、ここはもう一度TSビームを撃ち込むか。

 でもそんな事をするとエリドラ達の――


『嫌ですよ~だ! マドリーちゃんに無理やり子作りさせようとしたアンタらなんか戻してやるもんですか~! っていうかザマ~!』


 ちょっと碧! 何刺激するようなこと言ってんの!?


「うぬぅ! おとなしく戻せば許してやろうと思ったがもう許さん! 骨まで燃え尽きるがいい!」


 ほらー、ファイアブレス吐いてきたんだけどー!


「あぶないなり!」


 マドリーがブレスを受け止めてくれたー!

 しかも片手、女体化しても鬼みたいな防御力、すげえ!


「大丈夫なり?」

「あ、ありがと」


 マドリーを優しい性格にしといて良かったー!


「おい、貴様マドリーか!? 我らを女にしたゴミを守るとは何ごとか!」

「しかも人間などの姿に変えおって! ドラゴンの誇りも捨てたか!」

「マドリー! まさか我らを女にさせる為、そのゴミを連れてきたのではないだろうな!」


 エリドラは傲慢な性格にしたけど、まさか性根まで腐っているとは。


『マドリ~ちゃん、あんなコト言ってるわよ~! アンタ鬼つよなんだからボッコボコにしてやりなさいよ~!』

「むほ! そ、そんなの無理なり、エリドラさん達に手を出すなんて絶対無理なり……むほ?」

『どうしたの? マドリ~ちゃん』

「むぎゅ……むぎゅぎゅぎゅー!……そ、それがしの原稿が……」


 百合TS漫画の原稿データが自分の涎まみれになってんだけど。


「むぎゅぎゅぎゅぎゅーーー!」


 可愛い顔がおっそろしい顔に!

 これってもしや……。


「それがしの大事な大事な百合TS漫画をよくも! 絶対に許さないなり!!」


 やっぱり激おこマドリー!

 大事な人や物を傷つけられると激怒するこの設定が発動、ってか原稿汚したの自分の涎だよね。


「うわっ!」


 マドリーが打ち上げ花火みたいに飛んでった。

 おかげで砂がめっちゃ当たって痛過ぎるんだけど!


「力が制限される人間の姿で我らの前にくるとは」

「くくく、マドリー、おのれの愚かさを噛みしめながら死ぬがいい!」


 ――それから三分後。

 目の前にはボコられたエリドラたちの巨体が転がっていた。


「ぐひぃ! カンベンぶふぅ!」

「それがしの大事な原稿を汚すなんて絶対許さないなり!」

「げ、原稿を汚したのはお前の涎――」

「絶対許さないなり!」

「うごぉ!」


 むっちゃ怖い顔のマドリーが跨ったエリドラAの頭を殴り続けていた。


「それがしの原稿! それがしの原稿! それがしの原……稿?」


 何か思いついたのか、マドリーが殴るのを止めた。


「すぐさま人間の姿になるなり!」

「え? え? ひゃ、ひゃい!」


 ボコられたエリドラAが、横たわる裸体美女になった。


「むほぉ! これっ、これなりっ! TSハンターに捕獲された主人公の仲間が辱めを受けるシーンはこれなり!」


 イキイキした目で痣だらけの裸体美女をデッサンしまくってる。

 漫画への執念すげえ!


「次はこうなり、こういうポーズ取るなり。ああ、違うなり!」


 物凄い鼻息でボコ顔の裸体美女に屈辱的なポーズを取らせてる。

 漫画魂すげえ!


「人間」


 わお、背後からでっかい声! って、ボコられて白目剥いてたエリドラTじゃん。


「その手にしているモノは……何だ?」

「えっと、TSガン」

「そうか……お前、異世界の人間だな?」

エリドラTが語る衝撃、とまではいかない驚きの内容。

次回「裏でこそこそやるな」に続く。

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