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転移させたヤツからのメッセージ

『元の世界へ戻りたい~』と駄々をこねる碧に心底うんざりな翼だったが、オタクは優しいの例に漏れず、微妙にキモい声でこう語りかけた。

「碧、落ち着いてよ。まずは記憶を整理しよう、出来るでしょ?」

『う、うん~』

「例のごとくお前はテスト勉強を教わりにいつも通り……そう、いつもいつも、いつもどうり俺の部屋に来てたよね」

「うん……って、いつも多過ぎでしょ~が!』

「で、その対価として俺の作ったTS百合RPGをテストプレイをしていた。そうでしょ?」

『うん、仕方なくやってた~。性転換とかありえないしキモ~、とか思いながら仕方なくやってた~』

「きもー、とか言わないで欲しいんだけど。それに性転換じゃなくTS!」

『どっちにしたってキモ~、っていうかアレ、全部翼が作ったの~?』

「うん、っていうのは嘘で市販のRPG作成ツールで作った」

『あのさ~前から思ってたけど、何でゲームなんか作ってるの~? あんたはお話作る方が絶対向いてるわよ~』

「お話は始まりから終わりまで一本道でしょ、でもゲームは選択肢もあるしいろんなルートを選べるから楽しいの。っていうか、お話聞くの好きだからってそんな事言わないで欲しいんだけど」

『ふんぬ~!』

「怒んなくていいから。で、話を戻すけど、そのテストプレイ中何が起こってここへ来たの?」

『キモ過ぎるから心を無にしてプレイしてたら~、画面にでっかく〈ご招待〉って文字が出て~、気付いたらこの世界に来てた~』

「そう! 何かわからないけどそいつの力で俺たちはこのゲームの中に送られた。つまりそいつの思惑がわからなければ俺たちは戻れない、と思う」

『戻れないって何よ~! こんなキモいゲームの世界から戻れないなんて絶対嫌――』


 って、碧がウィンドウから消えた!?

 わおっ!?……代わりに文字出て来たよ。


<帰還条件:ラスボスを倒す>


 何これ? 

 ああ、俺と碧をここへ送り込んだヤツか。

 もしかしてデスゲームの主催者真似てんの? それにしても捻りのない条件なんだけど。

 っていうか俺、このゲームの製作者なんだけど。そんなんでいいの? 


『え? えっ? 何なの~? 急に真っ暗になったんだけど~?』


 文字が消えると同時に碧が映った。


「大丈夫?」

『う、うん、まあ……ところで何があったの~?』


 相当慌てたようで、肩までのショートヘアとガッコの制服が乱れている。

 身だしなみはいつも良いだけにちょっと笑えるんだけど。


「俺ら送り込んだやつからメッセージ来た」

『え? どんなの~?』


 カップ麺にお湯入れて3分待つのと同じ位ヌルい条件を伝えた。


『ふ~ん、確かにアンタが作ったゲームだからクリアは楽勝よね。あっ、そ~だ、攻撃力とか防御力とか一番上にしていっきにクリアしない~? 製作者なんだから出来るでしょ~』

「あーカンストね、それ出来るならとっくにしてるよ」

『え、何だ~、がっかり製作者~』

「うるさいんだけど、っていうか俺、ラスボス倒す気ないんだけど」

『は? ちょ、翼~、アンタ何言って……』

「自分の作ったゲームに入れるなんてアニメやラノベにしかない展開だろ。しかも俺はTSガンを持った主人公! だったらこの世界にTS百合の国を作ってやろうと思うのが普通なんだけど」

『全然普通じゃ――』


 碧がまたもウィンドウから消えると例の文字が現れた。


<帰還条件追加:3日間で魔王を倒す>


 何追加出しての? ってか俺と碧の会話聞いて慌てて出したの?

 しかも画面の隅っこにカウンダウンタイマー出てんだけど。


『また真っ暗になったけど、今度は何て言ってきたの~!?』


 ウィンドウに戻って来た碧に追加条件を伝える。


『ふんぬ~! そこのあなた~!』


 何故か空に向けて指を差す碧。


『人を勝手にこんなキモいゲームの中に放り込んで3日間で魔王倒せってどういうつも――』


 またまた碧が画面から消えた。

 そして例の文字。


<倒せなった場合:TSを憎む魔王の手によりTSガンは破壊される>


         □□□ 


『何ぷんすこしてるのよ翼~、あたしが真っ暗闇に閉じ込められてる間何あったのよ~?』

「あの文字の送り主がね、3日以内に魔王を倒さないと……その、お前達の命は無い書いてきたの」

『ちょっ、何よそのデスゲーム~!』

「それだけじゃない、TSを憎んでいるってのも書いてきた」

『別にそれはどうでもいいわ~』

「どうでもよくないんだけど! 魔王討伐はこのゲームの最終目的じゃないの、飽くまでプレイヤーの腕試しイベントのひとつなの! 魔王は最強の存在というだけでTSとはまったく無縁の存在なの! わかる?」

『え? あ~、うん』


 ちょっと話聞いてる? ってなに明後日の方見て首傾げてんの?


「それなのに文字の送り主は“TSを憎む魔王”と言ってきた。<ご招待>とか言って俺の作ったゲームに送り込んだクセに、こんな基本設定も知らないとか腹立つんだけど」

『へ~……うん』


 だからどこ見てんの。


「碧、聞いてる?」

『え? あ、うん、TSを煮込む魔王をご招待なんでしょ~』


 やっぱ聞いてないんだけど。


「俺はTS百合を何より愛しているの、だから文字の送り主が許せないの」

『は~』

「なので魔王を最速で倒す事にしたよ、そして文字の送り主にこう言ってやるよ」

『え~っと……元の世界に帰るもんか~! このままTS百合の国を建国してやるんだけど~! って言うつもり?』


 わーお、まさかこいつに考えを読まれるとは。


「や、やるじゃん碧」

『ふっふ~ん、幼馴染だから翼の考えなんかわかっちゃいますよ~だ』


 ますよーだ、じゃないんだけど。

 タイムリミットまでにラスボス倒さないとお前破壊されるんだけど。

 だから得意げな顔でこっち見てる場合じゃないんだけど。


「俺の考えわかるとか偉い、偉いよ」


 突如湧いた怒りを誤魔化したくてTSガンを激しく撫で撫でした。


『ちょっ! どこ触ってるのよ!』


 え? ガンがこっち向いた!?


「わおっ!」


 TSビーム!! 

 やっべ、今のはマジやばかった!

 ビーム解除ギリで間に合ったからよかった!

多分、胸かお尻かアソコを撫で撫でしてしまったのだろう。

そんなセクハラ翼がゲーム制作者ならではの裏技を披露する。

次回「最強ドラゴンを仲間にしよう」に続く。


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