そんなお前が
目の前には【魔王】と呼ぶより【天使】の方が似合うふわふわした魔王。身長約130cm。白い髪の毛は肩までの長さでくるくると天然パーマ。瞳も白く、トロンと垂れ目であり、白いワンピースという天使さ爆発している魔王に、勇者一行は目を丸くしている。
「あれが…魔王……?」
勇者・ルークが情けない声で呟く。
「不満か?」
そんな勇者に魔王は一言。口調は幼女とは言い難いが、声はなんとも幼女らしい。
「魔王と言うならば、それ相応の力を持っているのは分かっている……分かっているが……」
ルークが唇を噛むのが見えた。優しすぎるルークにこの姿の魔王に剣は振れないのだろう。何とも美しい事か。
「ユコ、面倒だから一発撃って。どうせ死にはしないだろ」
私が魔法使いのユコに言うと、ユコは杖を構えて魔法を撃とうとする。
「待てユコ!」
ルークが焦ったように制止の声を発するが、ユコは止めようとしない。
「ルーク、何魔王に慈悲を抱いてる。あんな姿していても魔王は魔王だ。何千もの人を殺してきた魔物も此奴が生み出した」
私は冷たい声で言い放つ。
それを分かっていながら此奴は魔王に糞みたいな慈悲を抱いているのだろうか。呆れたものだ。
「あんなに可愛らしい姿をされていたら、攻撃するにもなかなか難しい事だって有りますよ。ルークさんは特に」
弓使いのノアがそう言う。
「ルーク、私はそんなお前が」
ノアの発言を大無視して言葉を紡ぐ。
「大嫌いだ」