1.不憫、不遇、不幸、そして不運も。
この辺、短編から変えてます(*'▽')
続きが気になる方は、是非ブクマや★で評価など。
「お前、本当に転生者なのかよ!? 仲間にしたのが間違いだった!」
「この役立たず! 『妄想』とかいう使えないスキルしかない奴は、追放だ!!」
「……………………」
――言い返す気力も湧かない。
だって、彼らの指摘は至極もっともだったから。
何の因果か、ボクはあの交通事故で死んだことによって【異世界転生】をしたようだった。よくある夢物語の一つが現実になったことに、最初は喜んだ。……最初だけは。
心躍らせたのは、本当に最初だけだった。
ボクはすぐにこの世界での自分が、淘汰される側だと理解する。
周囲の人々は自分のことを転生者だと呼んで、それはもう喜んでいた。だけどそんな時間すらも一瞬で、ボクに与えられたスキルが使えないものだと分かると手のひら返し。
むしろ以前の世界よりも、ずっと厳しい扱いが待っていた。
まるで奴隷のように扱われる日々。
それでも、日銭を稼いで生きるには何かをしなければならない。
ボクはただただ傷だらけの身体に鞭を打って、労働に勤しむだけになった。
「なにが、異世界転生だよ……!」
思わず悪態が口をついて出る。
肉体労働から逃げ出して一念発起、冒険者となってみても世界は変わらなかった。それもそのはず、ボクに与えられたスキルは『妄想』という荒唐無稽なものだったから。
上手くどこかのパーティーに所属しても、役に立てなかった。
結果として、このように追放処分だ。
「……どうして。どうして、ボクばかりこんな目に遭うんだ?」
ダンジョンの中で仲間から取り残され、独りとなって拳を震わせる。
だって、そうだろう。
ボクはボクなりに、平凡なりに生きようとしていただけ。
それなのに、いつからかこの生涯はおかしくなってしまったのだから。どこに行っても邪魔者扱いされて、役立たずと罵られて、最後にはこうやって捨てられるのだ。
自分がいったい、何をしたのだろうか。
いったい、どんな悪いことをしてきたのだろうか。
「あぁ、そうだ。ボクは結局――」
そこまで考えて、ボクはようやく『答え』に至った。
その時だ。
何かしらの鈍い音がして、全身が揺れる。
いいや、ダンジョン全体が揺れる感覚があった。そして、
「え、どうして……?」
地響きが鳴り渡った後、絶望が目の前に姿を現したのは。
「こんなところに、ドラゴンが……!?」
立ち尽くすボクの前に出現したのは、身の丈二メートル以上はあるだろうドラゴンだった。そいつはゆっくりと、まるで舌なめずりをするかのようにこちらへ接近してくる。
そして、その大きな双眸でボクのことを見下すのだ。
「ひっ……!」
膝から下が、いや――全身が、恐怖に震える。
「いや、だ……! もう死にたくない……!!」
その瞬間、脳裏に前の世界での死がフラッシュバックした。
耐えがたい痛みと、身体の至る場所から急速に熱が引いていく喪失感。あのような思いは、もう二度と経験したくなかった。だからボクは、いまの状況から抜け出そうと藻掻く。
しかし、それが間違いだった。
もとより力の入ってなかった脚を動かしたら、倒れてしまうのは当然。
「あ、あぁ……!」
手に持っていた剣を落としながら、ボクは無様に尻餅をついた。
そして、絶望そのものをただ見上げる。
【GURRR……】
ドラゴンはどこか、こちらを嘲笑っているように見えた。
それもまた、当然だろう。こんな間抜けな獲物は、そうそうお目にかかれない。だとすれば、人ならざる存在からも馬鹿にされて当然だった。
「………………」
そう、それが当たり前。
今までだって、何度も目にしてきた光景だ。だけど――。
「…………違う……」
――この扱いは、本当に『当たり前』なのか?
そんな声が、無意識のうちにこぼれていた。
いったい何が違うのか。いったい、なにが間違っているのか。
その答えを探す。それはもしかして『自分は何も悪くない』ということか。
「……それも、違う」
だったら、いったい何だろうか。
ボクは今まで、何を間違えてきたのだろうか。
その答えにはさっき――いいや、違う。
おそらく、ずっと前から気付いていたんだ。
それだというのに、前に踏み出す勇気が持てないで『妄想』に耽ってきた。
「ボクは、ずっと――」
そうだった。
その『答え』はきっと、単純なこと。
前に踏み出して、転んでしまうのが怖くて。
転べば周囲に笑われるから、それが恥ずかしくて嫌だった。
だから、ボクはずっと立ち尽くして。
誰かに助けてもらうのを期待して、そして――。
「自分からは、何もしてこなかった。……それだけだ!」
なにが不憫だ、不幸だ、不運だ、不遇だ。
そんなもの、自分の考え方ひとつでどうにでもなる。
立ち止まるな。
思考を止めるな。
常に考えて、考えて、考え尽くせ。
「もう、何もできないまま終わるのは嫌なんだ……!」
そして、そう口にした瞬間だった。
ボクの中で誰かが、小さく笑った気がしたのは。
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