第88話最終決戦 ~準備期間~
海弟の準備ってあんまりないんだよな……。
俺は、死有達にネリーの警護を頼んでいる間、ネリアに魔道を教えてもらった。
なんにせよ、時間が短かったので、少ししか使えないが、種類を重点的に覚えたので、一つ一つでは甘い部分があるかも知れないが、連続して出して何とか隙を作らないようにするしかない。
しかし、俺は思う……。
魔道だって、人殺しの道具になるんじゃないだろうか?
俺は、剣で殺しをしてしまったから、これからは魔道でいこうとしたんだが、何だか意味がなかったような気がする……。
何故、俺が早く立ち上がれたか。
そんなの簡単だ。
前に、もっと大切なものを失ったことがあるから……。
それだけだ。
それに比べたら、自分の手を汚したことなんて、程度が知れている。
「はぁ……俺って、壊れてるな……」
つくづくそう思う……。
「ヘイ、少年よ。話があるんだが……」
「自分、そろそろ就寝時間なんで……」
睡眠は大事だよね?
「はいはい、君は近衛兵だったんだね?」
……まぁ、初めて会った時が、将軍との決闘じゃ、そうなるよね……。
「まぁそうですけど……」
「そう……んじゃ、本題」
さて、この勇者様は何が言いたいんだろう……。
「覇王軍を倒すのに―――」
「んじゃ、さようなら」
手を貸すわけないじゃないか。
もう、血の臭いなんてこりごりだよ……。
「待ちな!!」
ビクッ
あ、思わず待ってしまった……。
「強制参加……」
その手には、勇者軍の将軍に登用するという契約書が……。
アレ?
おかしいな……。
「ちょ、ネリー!!」
「HAHAHA、んじゃ、行くよ」
そうか……。
俺が魔道の修行を終えるのを待っていたということか……。
はぁ……やるしかないのか……。
海弟、この日決意する……。
☆
「ほぅ、相手の方から来てくれるとは……」
「お兄ちゃん……いや、海弟……」
「……遊撃部隊と各町の自治部隊は町の守備に当たってくれ、他の部隊は城の守りを固めろ。お前は俺に付いて来い」
「……そうだね~」
王座には、一人の男、その隣には一人の少女が座っている。
さっきまで、各将軍と会議をしていたが、隣の少女はずっと上の空だった。
「おい、聞いているのか?」
「……え?何?」
「……まぁいい。来い」
「あ、はい」
赤色の髪をした少女は笑顔のまま男の後をついていく。
大きな剣を後ろに背負っている。
漆黒に染まったそれは、威圧感が溢れんばかりに出ている。
それ自体が魔力を持っているようだ。
「お前には前線に出てもらう」
「はい」
「あいつが出てくるなら、迅速に拉致しろ。それ以外は邪魔をするなら倒してもいい」
「はい」
少女の目的は、ただ一つ。
海弟に会い、一緒に暮らす。
それだけなのだ。
だから、周りが見えていない。
「私も準備をしてきます」
「最後の戦いかも知れんな……」
それが、本当になるかどうかは、誰にもわからない……。
☆
「体を包みつつ、腕に魔力を溜めて、手に力を集中する……」
口で言っても難しい……。
俺は、魔道を習ったとはいえ、まだまだ使いこなせていない。
だから、使いやすいように改良しているのだ。
「もういいや。魔法で補助してればいいか」
面倒だ。
うん、それが一番だ。
「『林我』」
ジャンプして、中庭から一気に城の一番上の屋根まで到達する。
「う~ん、進軍スピードは上々だ」
もう、編制された軍は出発している。
俺は、城内に一気に――『鏡』で――移動できるから付いたと同時に行けばいい。
ちなみに、いるのは勇者様のお城だ。
「貴方も大変ですね~」
「え~っと、男らしい名前なのになよなよとしているジャディさんじゃないですか」
「それ……傷つきます……」
「大丈夫、態とです」
「それは、そんな事思ってないから安心してくださいって意味か、言わない方がいいと思ったけど態と言ったのか、どっちなんですか?」
「…………前者です」
「後者ですね」
な、何でばれたんだ……。
ちなみに、ジャディさんは一緒に城の中に移動する。
ネイルさんも一緒で、前衛を俺が、後衛を二人が担当する。
「で、話があるんですよね?」
「うん、君はいい子だ。勇者様とは大違いだ」
扱えるか扱えないかってレベルじゃないよねアレ。
「じゃあ早速だけど、本題に入るよ?」
「それにしても、暇ですね~」
「訂正、君も毒されてるね」
?何がいけなかったんだろう……。
ただ、暇だから暇と言っただけなんだけど……。
「まぁいいや。この戦争が終わった後にでもまたね」
「あ、ちょっと待ってください」
「ん?何?」
まぁ、一つの疑問だ。
「俺がここに来る前は戦争が全くなかったんですか?」
「う~ん、僕達が来たときはあったよ。それを沈めたのも僕達だけど……それで、それからはどの国も友好的だったからな……。まぁ、結果的には大規模な戦いになる前に、僕達が介入して戦いを終わらせる役目をやってたんだ。そうしてたら、いつの間にか領主になって、でかい戦いが起きたと思ったら、独立宣言を勇者様がして国になって……うわぁ……」
この人も苦労してるんだな……。
今度、会ったら文句の一つくらい言ってやろう。
それにしても、この人たちの強さは半端がないことがわかったから、後衛を安心して任せられる。
まぁ、バカ力もちのこの人なら安心できるけどね。
「ありがとうございました。俺は武器の手入れとかしてます」
白の剣と黒の剣は他の人の前じゃ手入れできないんだよな……。
それに、どっか離れた場所じゃないと消滅するし……。
「あれ?武器の方は支給されなかった?」
「あれ?何ですかそれ?」
初耳だ。
「あぁ、もしかして君は魔道を扱ってるの?なら、何にもないのも頷けるね。でも、剣も使ってたの見たから……こっちに来てよ。宝物庫の中から一つ剣を選んでいきなよ。きっと、この戦いが終わったら、君は将軍クラスになるだろうし。あ、将軍クラスの人ならここの宝物の中の武器を使えるんだよ。一個だけ選ぶんだけどね。僕はこの弓を選んだんだ。それで―――」
あ、この人、弓の話しになったら長い。
まぁ、歩きながらだからいいけどさ……。
今度弓を使うことがあったら、実践してみよう。
「ここだよ」
「普通ですね」
「まぁ、大きすぎると結界を張るのに不便だから。退いてて」
素直に退く。
瞬間、バチッっと電気が走ったような結界が浮き出て消えた。
「いいよ。入って」
扉を開けて入って行くジャディさん。
俺も中に入ると、スッゴイ宝物達が……。
「すごいですね……」
「そうだね。面倒だけど、一個一個手にとってしっくり来るものを選んだ方がいいよ」
うん、こんなのファンタジーにありがち。
でも、チート剣を持ってる時点でぶち壊し。
「う~ん」
双剣を見てるんだけど、どれも飾り物みたいで欲しいのがないな……。
しょうがないからこの棍を選ぼうか。
槍みたいなのは初めてだけど、影流のアレをいつも見てたし、真似するぐらいはできるかな。
何で片手剣にしないか?
持つのがイヤだから。
うん、簡単だね。
「刃物は使わないのかい?」
「まぁ……色々とわけあって」
それが、自分の恐怖ってネガティブだね。
まぁ、俺は傷を付けるのが恐いなんてことにはならなかったけど、刃物全般がダメになったね。
自分で言うのもなんだけど、何で俺は怯えてないんだろう……。
これが主人公属性ですか?
「ちょ、大丈夫?震えてるけど……」
ピクッ
「よし、行こうじゃないか」
「何処へですか!!あ!」
俺は最強じゃ。
あ、決して自分の立場に涙したとかじゃないからね。
いや、絶対違うからね。
何で、こんなところにいるんだろうとか思ってないからね。
絶対だよ?
信じて!!
「ここまで、来たら絶対勝つ!!行くぜ相棒!!」
「ひ、ひぃ~~」
☆
現在、ジパング城。
「暇だね、ふぇーちゃん」
「そうだね~~」
疲れ気味な私達。
それは、共通した理由なのかもしれない……。
「はぁ~~」
「ふぇ~~」
溜息しか出ないよ……。
「ふゎっ!!」
「え?あ!!」
大変だ!
ふぇーちゃんが攫われちゃう。
でも、何で鏡の中から手が?
「あ、海弟?」
うん、一人しかいないよね。
……この中に入れば海弟のところにいけるのかな?
「どうした!!叫びご……え……が?何してんだ?」
「え、あぁ!こ、これはぁっ!!」
私は、鏡に触れる寸前のところにいたところを影流に見られて、それで何だか視界がグルグルと……。
「何だこれは?」
影流も、入ったらしい。
この興味本意の軍団(人数三人)はなんだろうか……。
☆
「……ふぇーだけ呼ぼうと思ったんだけど……」
俺、ちょっと変だったみたいだ。
ってうか、ふぇー達まで巻き込もうとしてたんだ。
熱くなってたな……。
「ちなみに、右から影流、青空、ふぇーの順番だな。見事にいつものメンバーだ」
運命を感じるね。
「……君も苦労してるんだね」
「そうですね……」
ジャディさんの同情が辛い……。
「さて、気絶してる三人を運ぶのを手伝ってはくれないかい?」
「ははは、いいですよ。僕の部屋のベットに寝かせておきましょう」
影流達が起きたのは、その次の日。
つまり、最終戦争が始まった日だった。
はい、巻き込まれてきました。
それと、アンケート(下にありますよ?)に質問を追加しました。
一度答えてくださった方も、もう一度答えてくれると嬉しいです。
今日は、二話更新しようかな……。
あ、ストックが余裕できたので!
よし、更新しよう。
昼頃にしよう。