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第84話海弟と幼き主君

ここから、海弟の戦い方がワンパターンになっていく……。

って言うか、主君って―――。

俺達が、遠征兵の後に付いて行って三日目の朝、河原を見つけて休んでいた俺達は、何故か魔物と対峙していた。


「何で!?」

「偵察だな……、これは敵に見つかったぞ」

「……合流されないうちに倒さないとな……」


三体のうち一体が報告に行くのか、行ってしまう。


「私はアレは追撃後、城に行きお前の援助と奇襲の報告をしてくる。それまでは頑張ってくれ」

「……まぁ、やれるだけな」


正直、倒せる自信は全くといっていいほどない。

前のが一番弱いとしたら、こいつ等は最強じゃないか?

まぁ、それくらい体格がよくて、強そうということだ。


「では……行くぞ!!」

「『林我』第二『林脱』『風軽』第三『炎鎧』」


『風軽』の風の補助が『炎鎧』の鎧効果をアップさせて、防御力重点的な装備になった。

ネリアはもう見えないところまで行っている。

俺は、背中の剣を抜き中段で構える。


「成長を促すのは木、宿すは鏡 『虚曲木(きょきょくもく) (かがみ)』」


成長の力を持った鏡が現れる。

そこに俺は突っ込む。

敵は驚いているようだが、これには狙いがある。


まず、体力の上昇。

同じように魔力も上昇する。


次に、補助効果の上昇。

一段と俺の炎の鎧が温度を増す。


「これなら、近づけな―――」


後少しのところで避ける。

危ないところだった……。


「っていうか、効かないの!?」


試しに、右腕に炎を溜める。

避けるのが精一杯だけど、隙が出来た瞬間にそれを打ち込む。


『ギュググ……シュァアア!!』


おっと、怒らせただけだったか……。

これで、炎は効かないとわかったので、消す。

剣でうまく往なしながら避けていく。

一体を往なして体勢を崩しても、もう一体が来るので避けるのが精一杯だ。

これじゃあ、こっちがジリ損だ……。


考えるが、いい案が浮かばない。

それに、考えるのに集中していると攻撃を受けてしまうので注意が逸れてしまう。


「炎よ!」


当たりそうだった拳を右手に溜めた炎を爆発させて勢いと一緒に後ろへ避ける。

だが、着地時に態勢を崩して転ぶ。


「やばっ!」


二体とも同時に襲い掛かってくる。


『グォオオオ~~~』


拳が当たる瞬間、この断末魔で注意が逸れる魔物。

近距離ならば―――


「第二『流亜』」


二体の頭を両手で掴む。


「第三『林影』」


二体の魔力は俺が全部吸い取り、後ろへ一歩下がる。


『流亜』と『林影』は元々セットで考えていたのだが、超近距離戦にしか役に立たないのでボツにしてバラバラにし、二つの魔法ができあがったのだ。

まぁ、注意が逸れてくれたおかげでできたんだけど、予想以上に相手は魔力を持っていたので何か体が変な感覚になる。


「は、早くこの魔力を使わないと……」


だが、俺はこの世界で、初めて今この時気づいた。


『遠隔的に魔法が使えない』


それは、俺の中の魔力を解放させるために必要な行動なのだが、俺が魔力を放出するだけのスペースが無いのだ。


「だから、ネリアはあんな魔法を使うのか……」


この世界には魔力が充満しすぎている。

だから、この世界では魔法というのは体力上昇や分身を作るなど、遠隔的じゃないものばかりだ。


「魔力を……相殺……だ……」


苦しくなってきた。

目が霞む。

魔力が俺の魔力の最大値を大きく上回っているからだ。

他人の魔力を吸収する魔法なんて使うのは、この世界じゃ俺だけだろう。

そして、この状態を回復するには、俺が知っている中には一つしかなかった。

一度見ただけだが、ネリアが使っていた自分の魔力と相手の魔力で魔法を相殺する術。


「やってみる価値ありだな」


吸い取った奴等は、瞬間的な疲れに(魔力=体力の三分の一)気絶したんだろう。

これなら、白の剣を使えばよかったが、あんな物使ったら、一発で居場所がばれるだろう。


「集中……」


何とか岩にもたれかかり集中する。




体の中にある靄のような気体を集めて、もう一つ集めた気体をぶつける。

だが、さすがに自分の魔力と自分の魔力では反発すら起きずに、一つになってしまった。


「ダメだ……、何か無いか……」


他の魔法に注ぎ込んでみようと思ったが、さすがに今手加減はできそうにない。

最大出力でやったら、間違えなく見つかるだろう。

こんな状態で戦えるはずが無い。


「……逆は?」


全く、頭には浮かんでなかったが、逆というものが見つかる。


『流亜』を通して『林影』で魔力を解放する。


「いけるぞ!!」


早速試すことにした。

ばれにくいように川の水に魔力を混ぜることにした。

勿論、『流亜』があればこそ可能な技だ。


「第二『流亜』第三『林影』」


俺から延びる陰は水に当たると同時に木になる。

根っこはしっかりと水の中に入っている。


「おぅ、なんという開放感」


アレだ。

足の痺れのような感じのが体中に……。


「とりあえず、OKか?」


だいぶ楽になったので、立ち上がる。


「さて、こいつ等どうしようか?」


……。


結論。

鏡の中に封印。


いや、転移の魔法使えるから出てこれると思うんですよ?

でも、運ぶのに不便じゃないですか。


「かいで~、来たぞ~」


三十人ほどの甲冑姿の人を連れてくる。

カシャカシャと音が聞こえる。

それとは別に、剣を打ち合う音が聞こえる。

たぶん、奇襲をされる前に先制できたのだろう。


「おい、さっきの二人はどこだ?」

「ここだ」


鏡から出す。

驚く、三十人。

それを見て笑う俺。

怒る三十……二十九人。


「君が、海弟君かい?」

「はい」


隊長さんみたいな人が話しかけてくる。


「この二人を倒したのかい?」


さっきから質問ばっかだな……。


どうやら、俺が怒っているように見えたらしい隊長さんは名乗る。


「失礼した。私の名前はグーダ・ハシェだ。グーダと呼んでくれ」

「よろしく、まぁ、倒したといえば倒したな」


おっと、忘れるところだった。


「ネリア、魔法を相殺する術教えて」

「いきなりなんだ?お前も魔道を習うのか?」


解説


魔道(まどう)


魔法+武道=魔道


魔法を使った武道である。

超近距離の格闘技で、この世界特有だが、有名ではない。

魔法をそのまま使った方が、遠距離から攻撃できていいからだ。

ネリアは、全体から見ると世界征服(海弟達が居た世界)も出来る腕前だ。

他の奴等は、カッコよさそうとかの理由でやることが多い。

ちなみに、修行はきつい。


「ダメか?」

「ダメって……、どうだろうな。お前に時間があれば教えてやらんこともない」

「どういう意味だ?」


俺達の会話中、さっきのグーダさんは手錠のような物を二体に付けて、縄でグルグル巻にしていた。

魔力を吸い取ったなんて知らないから、壮絶な戦いがあったとでも思ってるんだろう。

まぁ、俺の方は魔力が減ってるどころか増えているから、一番驚いているのはネリアかも知れないが。


「どういう意味?そういえば、教えてなかったな。まぁいい。秘密にでもしておこうか。どうせすぐわかる」

「……メチャクチャ嫌な予感がするんだが……」


それが、魔界……と、納得してしまった自分が憎い!!





一方、城では……。


「海弟……と、確か言いましたね……。早く会ってみたいです……」


大きな部屋の、小さなイスに腰掛けている少女が言う。

少女は、藍色の髪をしていて、目は青色だ。


「……こんな戦い……早く終わればいいのに……」


少女は心から願っている。

勝手に祭り上げられ、特殊であると言われ、自分達の主君であると言われた。

だが、少女がやっていることは、礼儀作法の勉強とたまに城下町に民達に顔を見せることだけである。

字は元々読めるが、知識が無いので読めても意味があまり無い。

少女は孤独で、最愛の家族を失っている。

何故か?

それは、家族だけが少女を守ったから。

少女と共に、生きていた。

だが、殺された。

誰かなんてわかりきったことだが、表向きは捜査中なのに、裏では全くやっていない。

だから、見つからない。


「ネリアは連れてきてくれたかな?」


待ちきれなくなった少女は立ち上がり、窓から外を見る。

紫色の空があり、兵士達が訓練していて、自分の部屋から見えるいつもの光景。


「まだ……ですか……」


さっき、敵の遠征軍が居ると聞いたので、それと戦っていると予想する少女。

イスに戻ろうとする少女。

だが、その間にもう一度だけ窓の外を見てみる。


「あ」


口に出してから、笑顔になる。


「おかえりなさい。ネリア……」


窓の外に向かって呟くと、この城の城門に向かって走る少女。






「でかいな……」


森から出て、一番最初の言葉がそれだった。

あの後、五十人くらいの兵士と合流して、計八十人+三十人(遠征軍)+二体(偵察)と一緒に森を抜けて城を目指した。


「そういえば、どうやって三十人で城を占領するんだよ?」

「転移があるだろ?転移というのはある条件下に当てはまっていれば使えるんだ」

「どんなだ?」

「違う世界、つまり異世界に行く場合はランダムに選ばれた場所に飛ばされる」

「異世界に行く場合はそれだけか?」

「ああ、おかげであの覇王軍とばったり会っちゃって。逃げてたらいきなり白い閃光が襲ってきて、ガードギリギリできたけど……」

「それは、分身の方だろ」

「そうでしたね~」


なんだろう。

今日は一段と絡みづらい……。


「ほら、着いたぞ」

「ん?……」


ヤベェ、こんなに威圧的な城は初めてだ。(中に強力な魔力を持った人がいっぱいだから)


「で、さっきの続きだけど、同じ世界では二人の協力が必要となる」

「あぁ、大体わかった。そういうこと」


三十人から六十人へ。六十人から(略

という、ネズミ方式?だ。


「ネリア~~~!!」

「ガード!!」

「ブハッ!?」


ダメだ……。

やわらかいものが前と後ろに……あ、前は無かった。

……年下より小さいって……。あえて何かは言わないけど……。


「プハッ……あ……コホン、貴方が海弟ですか?」

「いかにもその通り。……離れてくれない?」

「海弟から離れるということは、ネリアの手を離すことになってしまいます」


あぁ、手だけ捕獲されたのね。

ちなみに、同情はしないぞ。

不運だったと思うんだな。


「じゃあ、俺がここから抜ける」


腕の下を通って、抜ける。

名残惜しい……。


「海弟……貴方はいい人です」

「いや、恋ってのは自由だ」

「そうですよね!」

「絶対違う!!絶対違うよ!!海弟、助けろ!!」


何だか、姉妹に見えなくも無い光景だな。

愛の方向が間違ってるけどね……。


というか、周りはどうしてるんだろう……。


「……(チラッ」

「……(チラッ」


あぁ、見たいのはわかるよ。

人の不幸は蜜の味だっけ?


「海弟、中に入るぞ」

「ん?お、おぅ」


振り向かなきゃよかった……。


そこには、笑顔で気絶しているネリーを担いでいるネリアが居たとかなんとか……。


恋は自由。

恋は盲目。

ここに、新たなるカップルが……。


いや、しっかりとした理由がありますよ。

主君である、ネリーだってまだ子供です。

ノリにのっただけですよ。

次回で、ネリアとネリーの関係が明らかに!!

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