第60話本物のもどき
変身!!
海弟が、町に帰ってくる頃には日が昇り、町民達が起きている時刻だった。
「帰ったぞ~」
「ふぁあ~、ん?あ、おかえり~」
出てきたのは、イリアだ。
他の隊員は馬車での移動に慣れていないので、疲れているだろう。
「とりあえず、ここに魔物置くか」
海弟は、ポケットの中から一枚の鏡を取り出して、そこから魔物を出現させる。
「……いつ人間やめたの?」
「これも、魔法だ」
「こんな特殊魔法見たことないって」
「そりゃ、特殊だし」
「まぁいいや。今日は?」
「ん?ああ、学校は休みだな」
なので、一日中旅に付いていれる。
「学校……学校で、魔物を丸焦げにする方法とか習ってるの?」
「何言ってんだ……」
適当にあしらって、海弟は宿の中に入る。
全員を、風の魔法で叩き起こし(文字通り)、朝早くに出発する。
その時、町民のほとんどが出てきてお礼として、箱のような物を貰った。
「何だこれ?」
「……目覚まし時計みたいな物ね」
「ほぉ~、だが俺は要らないな……。誰か欲しいやついる……」
そこまで言って、考える。
「ちょっと、待ってろ」
鏡の中に手をつこっむ。
鏡の中で時計をバラバラにして、もう一度組み立てる。
だが、今回は前のとは大きさが全然違った。
「さっきより小さくなったな」
「ふむ、簡略化もできるのか」
今のは、能力を削ぎ落としただけだ。
目覚ましという部分を落として、部品にした。
残りの部品が余るが、時計としてなら使える。
「ほ~、この鏡の中ならどんな姿も思いのままって訳ね……、変身とかできる?」
「……ろくなことを思いつかないと思ったが、まぁまぁいいことを言うな」
海弟は、鏡の前に立つ。
「えっと……」
カサロを見る。
「うん、やってみよう」
イメージを膨らませて、自分も魔力を帯びる。
濃厚な魔力の霧が出たと思うと、次の瞬間、カサロが二人になっていた。
「お、おぉ、成功してるか?」
本人からはわからないようで、声と性格などは変わっていない。
「す、すごいですね……、本当にそっくりです」
「まさかの結果ね」
「か、海弟が消えたよ……」
「すごーい!!」
「……奇術だな」
「私にも、私にも掛けなさい!!もっと、胸を大きく」
「……最後のは聞かなかったことに……」
海弟は、とりあえず魔力を集中させて、変身を解く。
魔力の流れが悪かったので、変身中は魔法の威力が落ちるかも知れない。
だが、改良の余地はありそうだ。
「今回は、魔法を使えないカサロだったから、魔力の流れが悪いんじゃないの?」
「よし、この中から一人選んで、変身を…―――――」
「レンスだ」
「―――――なんで、私を選ばない」
正直、女装の趣味は無い海弟、そんな事言われても、変身することは無い。
「んじゃ、やってみます」
集中する。
今回は、魔力を多めに入れてみる。
また、魔力の霧が出て、その後はレンスが二人。
「……奇妙なものだな」
「まぁ、そう言うな。えっと、氷だっけ?特殊だよな~。あ、でも、あいつ等のほうが特殊だな……」
特殊魔法しか使えない、誰かのことを考えてみる。
「それじゃ、やってみるか」
馬車の外に手を向けて、氷を連想する。
魔力を込めるが、発動する気配が無い。
「……海弟、あんたは特殊って前に言わなかった?魔力を外に出すイメージじゃなくて、魔力を変換させてから出すイメージよ」
「ああ、そういえば」
これでは、少し作戦の幅が狭くなるが、色々な魔法が使えるようになる。
ただ、使いこなせないと意味が無いような気もするが、使えるだけで強みになることだってある。
海弟は「氷…氷……氷…」などと呟きながらイメージを高めていく。
「行くぞっ!!」
海弟の手の中から氷の塊が現れ、一直線上に飛ばされる。
木々を薙ぎ倒し、地面と擦れて、地面に含まれる水分を凍らせていく。
最終的に止まったのは、海弟達が見えなくなったぐらいのところだった。
「……威力が上昇しているな」
「こ、これなら、一国を一人で落とせそうね……」
「俺としては、もう少し弱くていいから、使い勝手をよくしたいな……」
これは、海弟が鏡に魔力を多く込めたのが原因と考えられる。
「まだまだ、面白い能力が隠されてそうだな」
「自分の魔法なのに把握できてないって、どんだけ強力なのよ……」
その後、この馬車に近づく魔物並びに動物はいなかった……。
その状態は、国を超えるまで続いたのであった。
微妙なお話になってしまったかもです……。
さ~て、とりあえずバトルでもどっかで入れていきましょうか。
それと、60話突破です。
ここまで読んでくれた人ありがとうございました。
……寒い……。
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