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~1章~第4話レティアの国と偏屈な王様

 太陽の光を浴びた城は何か神々しさを感じる。

 そんな感覚を感じつつ城を眺めていると―――


「おぅっ!?」


 城を見ていた俺の肩を誰かが叩いた。

 いや、ビックリしたよ。っていうか誰だよ。


「あ、ハマネさん」

「ハマネ?」

「え? あっ、はい失礼しました。私はハマネ・クルトフ・ガセルーンといってこの国で文官をしています。ついでに男です」


 いきなりの登場だが……この人はなんなんだろう……。

 っていうか文官? あれって老人とかがやるんじゃないの? 安定した政治家みたいなものだよな?


 ファンとこのハマネさんは知り合いだそうなので、一応は話の通じる人なのだろう。

 それにこの国のお偉いさんのようだし俺達のことも知っているはずだ。


「あの~」


 何やら困った顔をしているハマネさん。歪んでいるその顔も女に見えなくもない。ちなみに男ですよ。信じられないが。

 この世界の整形技術がそこまで発達しているわけないし、それに国民の血税で整形などしていたら暴動が起こるぞこら。

 あ、でも……いや魔法なら可能かな?

 そんなくだらない事を考えている俺を他所(よそ)に話は進んでいく。置き去りにしないでー。


「すいません、王を見かけませんでしたか?」

「あ、マエティー王ですか? あの人はまた……」

「はい」

「見てないです。今、着いたばかりなので……協力できなくてすいません」

「そうですか」


 落ち込んでいるハマネさん。ん? 女顔を馬鹿にされでもしたのだろうか?

 ふむ、それがこの国でのマナー、ハマネさんと接する上での常識なのならば俺も何か一言考えておかないといけないな。


 さっきの話を全然聞いていなかったから内容は予測するしかないが、まあ大体こんな感じだろう。


「落ち込まないでください」


 優しい心を持った俺がハマネさんに話しかける。


「えーと、あなたは?」


 あれ、伝わっているはずなんだけどな。

 まさか『男二人に女一人、召喚できましたっ!!』なんて報告入れたわけじゃあないよな。


風詠(ふうえい)海弟(かいで)という者だが」


 さて、俺も何か一言言わないとな。


「女顔でも良いじゃないですかっ!!」

「はい?」


 あれ、何か変だな。

 影流と青空を見る……と、ジト目でこちらを見ていた。


「ま、まあ……とりあえず落ち込まないで」

「ならば一緒に探してあげるのはどうでしょうか? これからお世話になる仲なのですし」


 王探しか。しかし……この町は広いみたいなんだが。


「地図とかはあるのか? 無いならキツそうだが……」


 俺の質問を先に影流が言ってくれる。さすがは影流。


「路地裏に入らない限りは町のいたるところに地図は貼られていると思いますよ」

「なら俺達は大通りを探そう。詳しい二人は路地裏も頼む」


 おお、さすがだ影流。これなら意外と早く見つかりそうだ。というか王を脱走させるな城の兵士さんよ。


「いえ、ここは二手にわかれましょう!!」


 あるぇ? 何やら流れが変わった。


「え、えと……詳しい人に先導されて広い範囲を探したほうが良いと思いますし、二グループに分かれて……」

「……まあ、効率は変わらないか。良いだろう」


 影流ー!! 酷いぞおい。


 と、言うわけで影流のハーレムパワー(無敗無敵最強)の前に俺は(くっ)し、見事に影流、青空、ファンの三人、俺とハマネさんというなんともいえない二組ができあがった。

 くそぅ、俺は女顔でも男は好きにならないぞ。


 っていうか俺もそっちが良いなー。


「さて、行きましょうか」

「え、ちょっと!! 影流~!! 青空~!! 助けて~!!」


 その叫びも虚しく、ハマルさんに引きずられて俺は城下町へ、そして影流たちは城の中へ入っていく。

 なるほど、城の中をもう一度探してみるということか。

 ……いや、城の中には十分なほど兵士はいるだろうから……。

 待てファン。お前……逃げたな。


「ノォオオオオオオ~~!!」


 あっ、周りからの目線が痛い。何かゴメン。



 ☆



「さて、話は聞きました」


 何度も脱走してるのかマエティー王というのは。


「ところで、男の娘とはなんですか?」

「知らなくていいことなんですよ」


 ハマネ(すでに呼び捨て)はまだ納得していないような顔つきだが気にせずに王捜索の為の情報を言っていく。


 その一

『手先が器用なので何処かの鍛冶屋にいるかも』(過去の二十三回の事例有)


 その二

『顔がごつい』(百人中九十九人が保証)


 その三

『実はドワーフ』(国民も認知しているそうですよ)


 いやさ、一と二はともかくとして三はなんなんだよ。もはや人種違うじゃん。いや、妖精は人じゃないか。


『おいおい、ここはファンタジーなんだぜ? いい加減認めろよこの野郎』と追い討ちをかけたいのかい?

 屈してたまるかぁぁぁっ!!


「それでは見つけたら城まで連れて行ってくださいね」

「何となぁく……了解です。って待ってください」

「はい?」

「一緒に探すんじゃ……無いんですか?」

「海弟様なら大丈夫ですよ」


 微笑むハマネさん。見捨てられたっ!!



 やっぱり俺には無理だった。



 それから数分後。


「ドワ~フ♪ ドワ~フ♪ 何処いるの~♪」


 もう歌ってます。『王の逃走』って題名でいいね。


 ……わかってる。わかってるよ。ここが入っちゃいけない路地裏なのもわかってますけど。


 え~、ハマネさんには悪いがサボっちゃおう。

 そんな感じで裏路地に入り町探索だ。今更だが主人公の変更ってないよね? 

 大丈夫?

 そんな感じで突き進むこと五分、突き当たりに着いてしまった。


「う、無駄足だったか」


 まあ気になることがあるなら実行するのがモットーな人もいることだし(俺は違うけど)、そう自分で慰めて一番突き当たりの壁を触ってみる。

 何やら吸い込まれるような感覚。あるぇ、似たの俺一度体験してるぞ。


「の? うぅぁああ~~!?」


 何とか踏みとどまり壁をにらみつける。すでに片腕の半分は飲み込まれている。


「くそっ、二度も同じことになってたまるか!!」


 前の経験で少しは学んでいる俺だったが……所詮無理だった。


「母さん俺、もうダメ……」


 その言葉と共に俺は路地裏から消えた。



 ☆



 ドサッバフンッ!


「なんじゃお前は!!」

「父さん母さん俺もう死にそう」


 いや、待てここで死んだら俺のことを思う誰かが悲しむだろう。


 一つ、家族


 一つ、幼馴染


 一つ、友達


 一つ、……






 すぐには思いつかないものさ。

 俺はちょいと挫けそうになったが何とか慰めて慰める。二回言ったのはなんとなくだ。


「うぐぐ……小僧!! そこを退け!!」


 何故か俺の下から声が聞こえる。何だろうこのしわがれた声。

 えっ、まさか俺もう死んでるの?


「退かんか!! 我は王なるぞ!! ……しまった」


 今不思議な言葉を聞いたような気がする。


「ワン モア プリーズ?」


 英語苦手なんだよ。


「言葉がわからんのか?」

「さすがにその返しは酷いぞ」


 俺が退くと大量のつばを撒き散らせながらおっさんが立ち上がる。


「怒るなって」

「うるさい!! お前はもう死刑じゃ」


 俺は殺されちゃうの?


「王様ゴメンナサイ」

「許そう」


 優しい王様って大好きだ~~。いや~~この王様最高!! ドワーフ素敵!!


「さて……王様なんですか?」


 そう言ってからヒントを振り返ってみる。


 その一

 手先が器用


 わかんねぇよ!!


 その二


 顔がごつい


 ごついな


 その三


 実はドワーフ


「王様ってドワーフ?」

「そう……違うぞ!!」


 いや絶対そうだ。


 さて俺は王様を確保して城に戻る。とりあえず一番でかい建物に向かって歩けばいいだろう。


「ちょっと待ちな!」

「え?」

「なぬ!! お前は!!」


 え~口論は苦手というわけでも得意というわけでもないので見てるだけにします。

 ……作文とかは得意だったり得意じゃなかったり……。んな話は今はいいか。


「まさかここにも出るとは……。仕方ない、成敗してくれる」

「お前は俺達の捕虜つまり人質なんだ……のこのこと帰すか!!」

「何をほざくか。帰るじゃと……わしはそんなこと言うておらんわ。その前に叩き斬ってくれようぞ」


 逃げましょうよ王様。相手剣持ってますよ。

 って言うか……やっぱ言葉使い。ま、まあ良い。

 ……ん、コレは……。影流によって鍛えられた鋭敏な感覚センサー(皮膚)が反応している!!

 この国王……何かある!!


「ふふふ、わしを甘く見るなよ。これでどうじゃ!! 『魔力剣(マジックソード)』!!」


 相手は一瞬たじろくが、余裕の表情だ。

 って言うか、魔力剣? 誤変換? 魔法剣じゃないの?


「へっ、おっさんがそんなもの持ったってあたりゃ~しねぇよ」

「甘く見るなよ……戦うのはこっちじゃ」


 そう言って剣をパスしてくる王様。


 えっ、俺?

 いや違うでしょ。


「わしは先に行くぞ」


 王様は魔力剣を置いて逃げ出した!

 ☆海弟は魔力剣をゲットした☆


「戦えと?」

「くそっ、お前を先に倒すか」


 くそっ、じゃないでしょ!! くそっ、って言いたいのは俺だ!!

 ここは平和的解決を!!

 そして俺に救済を!!


 明らかに素人の構えの俺は男と比べるとやっぱり弱そうに見える。


 え~っとそうだ。魔法!! 魔法使ってみよう。


 え~と……森。治癒!!


 海弟の体が光を帯びる。

 しかし効果は無いようだ。


「意味ねぇ!!」

「魔法使いか」


 手の内晒しただけ!?

 次!! え~と、湖。湖。


「行けぇぇぇぇっ!!」


 ドバシャアアァァ~~!! という大きな音を立てて水が流れ出す。


 俺の上で……。


「罠かっ!?」


 男はポカンとした顔でこちらを見ている。

 なるほど、貴様も魔法を使えるようだな……俺の魔法を利用したところを見るとこいつの特殊魔法か。


「俺より何枚も上手の魔法使いのようだな……」

「え、オレが魔法使いっ!?」


 しかし、俺も少し緊張していたようだ。見て分かる通り一回目は治癒魔法なので回復用の魔法だったこと。つまり傷が無い状態じゃ意味のない事。

 二回目は攻撃用だが目測を決めてなかったので自分の上にでてきてしまったこと。

 これが失敗した理由だろう。しかし、この事に現在の俺は気づかなかった……。


「次!! 雷!!」


 懲りずに、使う俺。

 だが、思わぬ幸運を呼ぶことになる。


「「ウギャアアアアアア~~!?」」


 俺と男の声がはもる。

 電気が俺に当たり……そのまま地面に向かって流れる。

 それが水に伝わって男と共に感電!! というわけだ。


 しかし、男も気絶したのも良いが俺も……くらっと。

 気絶……かぁ。



 ☆



「てっきり剣を使うのかと思うたが魔法を使うのか。良いものを見せてもらった。助けてやるとしよう」


 王様(おっさん)は男(首謀者)を縄でグルグル巻きにすると海弟のほうを向きそのゴツイ体から生み出される力で持ち上げて何処かに連れて行かれた。


 後々、海弟はこの事件のことを水と雷の救出劇(アクア・サンダーレスキュー)とか伝えられるようになるのは、まだ知らない。……って言うか、魔法使いの間で一種の技法として語り継がれたりするのだがそれも海弟は知らない……。

 由来は言わずとも分かるだろう。


 そして……男が縛られている、その現場には一本の魔法剣が放置されていたりした。


手直ししました。

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