第535話『俺の役得ってヤツだな!!』by海弟
ある程度更新に日にちあけようとしたらそのまま更新忘れてました。
ホントすみません。前書きでは何度も謝っている気がします。後書きでもだけど。
「キサマ、裏切ったなァ!!」
「よくよく考えればここであんさんが死ねば、このまま平穏が訪れる。そのことに気付いてしまったのだ!」
ぐりんっ、と水中で一回転する人魚。
確かに、ここで俺が死ねば外の連中に気付かることはないだろう。
しかし、それで平穏が訪れることはない。
俺が死ぬことでこの世界の崩壊って現実がなくなるなら、心置きなく死ねるんだがな。
心残りになりすぎてコレじゃあ死んでも死ねない。大体、天使だというのに人とか世界とか守る気ないだろアレ。
しかし、まあ……。それ以上に、この場所には水がある。
水があるということは?
俺には海の精霊がついている。
管轄外の場所とはいえ、地に染みこんだ水はやがて海にたどり着く。
つまり、この世界が滅びないと過程した場合のみ……何年後かはわからないがウミは俺の死に気付くのだ。
面倒なのでこう略そう。
「俺が死ななきゃ全部解決。この先進めば世界だって救われるッ!」
人魚はというと、俺のキメ台詞を無視し水中を進み俺の右足に腕を絡ませる。
既に水攻めの部屋は過ぎ、一番奥という場所に向かう途中、神殿の『天井』なのだがここで溺れるなんてことはしたくない。
「水よッ!」
水の塊をいくつか足元へ向け放つ。
すぐに腕を放し距離を取る人魚。海の精霊にビビっていたわりに実力はそこそこか。
まあ、俺には及ばん。海の精霊より俺は強いのだからなァ! はっはっは。
「人魚の肉は永遠の美を保つため、食用とされるらしいな。一攫千金――」
「ち、ちょ、その話題はワタシの死亡フラグッ!? ……つぅ、仲間を失ったワタシの怒りを知れェ!!」
水中の中で話しているのによく俺に声が届くな。
少し関心するが、その能力はあってもなくてもいいと思う。正直不要。
とりあえず台詞を続行ッ!
「一攫千金狙うぜ」
妖精の剣を構え水中を狙う。
もう一分も無駄にできない状態だが……ここを強行突破したって気持ち悪いだけだ。
この人魚、放置しておけん。後々、面倒になりそうだしなッ!!
「隙ありッ!」
「おっと、靴ひもが――」
「えっ!? 避けられ……」
ハッ、とした表情になる人魚。
おい馬鹿。この水流の中で靴ひもが解けたとかそんなのでしゃがむわけないだろ。
一瞬の気の迷い。というか、普通は靴ひもを結びなおす状況でのわざとそうしない行動。
ふっ、自分でも何を言っているかわからないが……つまり、俺の靴ひもは解けていないッ!!
「隙あり――返しッ!!」
妖精の剣を人魚に向かい突き、放とうとしたところで……妖精の剣を仕舞う。
おい、コイツ峰打ちできそうな場所がないぞ。コレじゃあ気絶させられないし……。
どこ斬っても刺身になりそうだ。
「な、何故……しかし、コレでッ!!」
「はいはい、先に行くぞ」
楽々と避けると、人魚の腕を掴んで引っ張る。
強行突破するともやもやするし、まあそれはコイツが海にいないから違和感があるだけかも知れないけれども。
だからこの手を引っ張って海まで行こう。
まあ、奥へ進む俺の目的が先だがな。
「ぐおおっ、腕がッ! 腕がねじれる!! あんさん、ワタシの腕がァァッ!!」
「どうしたことでしょう。水流に転がされ人魚さんの腕は外れそうです」
水流のおかげで水の上にあがってくる人魚はぐるんぐるん水上で横に転がっていた。
特に気にしない。
先へ進むこと数分、行き止まりが見えてきた。
どうやら行き止まり部分には穴が開いており……そこからこの水の流れは下へ向かっている。
「ウギャァァァッ!! クッ、そこの穴に落ちると一番奥……いや、瀕死間違えなしのトラップが!!」
「お前は味方だ。信じよう。うん、まずはお前を投げ込んで――」
「あんさん信じるって意味知ってる!?」
ああ、お前が死なないことを俺は信じている。
この先には瀕死のトラップがあるんだろう? お前なら何とかなるさ。
ないってことは既にわかっているけどさ。
「人魚やーい。俺も行くぜー」
「あ、ありえねー。ワタシ死ぬ」
んー、水音で聞こえないなぁ。
お魚クッション(非売品・ナマモノ)のおかげで落下ダメージはなく、そこそこの距離を落ちたというのに無傷の生還。
どうやら文字通り、一番奥らしい。
何というか、そうだな……。
聖剣でも置いて、もとい封印されてそうな場所だ。
天井からは太陽の光でも人工の光でもない。
眩しいほどの光源だというのに、それが何かわからない。
だが、まあ気にしてはいられない。
世界崩壊までもう三十分もないだろう。何故だか時が加速しているように思えてくる。
まあ、それなりの距離も進んでいるとは思うけれど。
「……ここに世界を守るヒントでもあればいいなぁ。残り時間三十分で何とかなるとも思えないが」
というか、あるのは剣だけだ。
元々、七つの剣を犠牲にして手に入れる仕様になっていた最後の剣。
俺が求めていたのは七つ目の剣なのだが……とうとう見つけたのは八つ目の剣ということか。
「……ん? じゃあ、待てよ?」
物語。その中に出てくるはずだった剣の数は七つ。
なのに、何故八つ目が存在する。
いいや、入手方法が七つの剣を使う……というのも不思議だ。
暗黒龍の復活のために七つの剣を使うことは前提となっていたはずだ。つまり、この場所の封印は絶対に解かれない。
シナリオの外にある番外編ともいうべき場所にある剣。
少し期待している。
「……レプリカ、ということはないよな」
この形状の剣は見たことがないし。地面に刺さっているからレプリカとかそういう基準もないだろう。
というかそんな謎基準は存在しなくていい。
「人魚、ここからはどうやって地上に戻れるんだ?」
「そりゃあ、その剣の能力を使ってでしょ。少なくとも、外へ最短距離へ出るための仕掛けは知らないし」
まあ、そうか。
水攻めの部屋があったり……宝箱だった入り口だって今頃は潰れているだろう。
「でも、何か違うような気がする」
前提を変えよう。
この場所がシナリオに関わっているのだとしたら、どんな形で?
……考えられるのは俺以外にも剣を集める者がいる、ということ。
そうなると、その者の望みがこの神殿内にはあるってことだ。この剣とか。
その前提だと……ここにある八つ目の剣は世界崩壊を食い止めるような力を持った剣ではない。
うーむ、まだわからないことを言っていてもしょうがない。
剣の柄を掴み引き抜く。
刀身はピカピカでまるで新品のようで眩しい。
「……とても能力が宿っているように見えないんだが」
「そんなはずは……」
魔力のカケラも感じない。
あの違和感はコレのことか。この神殿自体が放つ魔力の大きさをこの剣が宿している魔力だと勘違い……いいや、思い込もうとしていたんだな。
思ったより俺も追い詰められているわけだ。
まあ、今更なのだがこの剣は今の俺にとってゴミに等しい価値を持った素晴らしいものなのだ。
捨てよう。
「人魚、コイツはお前にくれてやる。振ると食パンが現れる素敵なステッキさ」
「素敵なステッキ……って、うわぁ! 刃こっちに向けて投げないでよ! あんさん危ないって」
そうだな。うん、そうだな。
……どうしよう、世界終わる。
「ちくしょう。三十分だぞ!? いいや、もう五分は過ぎた。救えるかッ!」
ここはゲームのように物語のある世界だが、現実だからこそ時間の流れがある。
ゲームにあるようなシナリオと同時に進んでいくようなものでなく。
「……食パン」
はぁ、どうしたものか。
地面に手をつき絶望のポーズ。
「……食、パン」
やる気だって沸いてこない。希望だって降ってこない。努力だってしたくない。
ああ、楽して世界を救う方法はないかな。
「……食とパンの奇跡的な融合……」
……いや、パンは元々食べ物だろ。
っていうか水中でパンなんて食べたら何かもうメチャクチャになるだろ。
「って、待てよ? ふっ、ふふふ。フハハハハッ!!」
世界が崩壊する? いいだろう、出来るものならな。
この俺の目の前でそんなことが出来るのならば神や支配者などとうに越えているぞ。
「あんさん気でも狂ったん――」
「人魚肉ソーセージ」
「悲惨すぎる!?」
さて、少し黙ってもらってと。
俺も奇跡を起こしにいこうか。
「白の剣(仮)よ。消滅だ!」
天井にあった光もろとも白の剣(仮)の能力で消し飛ばす。
結局、何故光っていたのはか謎だ。たぶん、ハゲの人が光を反射する原理を用いて作られた超未来の物質なのだろう。
「それで納得。海王の剣。水流で地上まで一気に押し上げるぞ」
「食パンなんて出ないじゃなギャー!!」
人魚の叫びとともに地上へとでる俺たち。
何という水のエレベーター。こんな無茶やるのはピンチだからです。
「ここは……あ、えーと。村長の家、跡地か」
何ということでしょう。
村長の家は神聖な場所の上に建っていたんだね! オラビックリだぞ。
さて、消し飛ばしたことについては謝らないとして、早速準備していこう。
水流から降りると海まで人魚を吹っ飛ばし(肉体強化)、俺の持ち物の鏡をすべてポケットの中から出す。
ふむ、この世界での俺の戦いのあと。
「知識じゃないよ、知恵なんだよ。さて、原点に戻ろう」
俺の姿は鏡に映らない。だから転移できない。
俺は鏡の中に手を入れられる。そこから物を取り出すことが出来る。
……結論、俺は鏡に映らないが鏡の中に入ることが出来る。
「前提など覆す。それが奇跡のヒラメキさ」
それからどうするって? ふふふ、他力本願という言葉を知っているか?
世界の構造について一番詳しい人に頼るのが以下略だッ!!
まあ、そうなるとクォンさんですよね。うん、俺の知りえる中であれほどのキャリアウーマンは……。
「……おや、戻ってきていたのか」
神々しさと禍々しさの塊である天使、もとい悪魔、いや……見送りの人。
「見送りか? そうか、ハンカチの代わりにその翼で涙を拭くが良い」
「……見送り? そうか、帰る気になったんだね。それじゃあ――」
「おい、俺をナメるなよ?」
っていうか、俺が現役で世界の支配者やってれば祈りの一つで崩壊なんて止まっちまうんだからなッ! 今更ッ!
「じゃあ行ってくる。ちなみに紫の鏡って知っているか? 不幸が訪れるんだぜ?」
対になる言葉は教えない。さて、転移だ。
ノリと勢いでいかないとそろそろ俺も世界も滅んじゃうぞ☆
「何をして……なん――」
何が役得なのか!!
それは神のみぞ知る禁忌。
正直、考えてサブタイトルは付けませんでした。