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第531話『明日はないだって?』by海弟

この世界で海弟がやるべきだった行動の流れを何処かで書いたほうが分かりやすいかも知れませんね。


あ、でも最後の最後で書いて読者様に

『ああ、そういうことだったのか!』

となってほしい気もあります。


……間を取って後書きに書こうかな。

「あ、あ、ちょっと! 僕がいないと君は元の世界に帰れないんだよ?」

「帰れる方法は一つじゃないッ!」

「一つしか作られていないんだ、夜が明けたらこの世界は……」


何を言っているんだコイツは!


対になった二つの剣を振るい、突き……放たれる剣舞にあわせ体を揺らして避ける天使。

しかし魔力が通っている剣の切れ味は天使にかすり傷をつけていく。


避けていても、それでも相手を傷つける。

破滅の剣の威力はこの目で見た。


けれども、俺は俺の都合で負けられないッ!!


「説得は出来ないと判断しよう。では、君も破壊されてもらう」

「させんッ!!」


破滅の剣をこちらへ向ける天使。

しかし俺は目の前に鏡を出現させ衝撃を跳ね(かえ)――無理かッ!!


一秒もない間にそこまで考えると白の剣に祈る。


「光は消滅ッ!!」


物凄い脱力感……しかし、衝撃はこない。

魔力を吸い取った白の剣(仮)から放たれた消滅の波動が見事に破壊の津波を打ち消してくれた。


だが、こうやって防げるのもあと一回が限界か。

俺の魔力も、この白の剣(仮)も。


壊れそう、という感じではないが白の剣よりも弱体化しているこの剣では完全に光を操りきれない。

燃費が悪すぎるし、ジリジリと剣の寿命を削っているのさえ分かる。


あと一回、それ以上この剣を使ったらきっと暴発する。


「……破壊の剣はすべての剣の頂点にある剣。君の魔力で強化された"光の剣"でも防げるのは次の一回が限界だろうね」

「それがどうしたッ!!」


あと一回。防ぐことを考えるより、あと一撃。相手に叩き込むことを考えたほうが利口ってモノだろう?


まだ未知の能力を持つ剣。

それが俺の手元にはある。


「月光の剣」


白の剣(仮)と黒の剣(仮)を鏡の中に仕舞い、月光の剣を鏡の中から取り出す。


「"入手条件"……ピンチからの脱出。この短期間でよく……君の持っている剣の数は四つか」


さっきからわけのわからないことを。

それに、俺が持っている剣が四つでも、俺が知っている剣の数は……ん?


「六つ……。あと一つ」


あと一つの剣を俺は知らない。


「海弟ッ!!」


後ろからウミの声が聞こえて、前を見ると衝撃の津波が目の前まで来ていた。

避けられないッ!!


そのままぶつかり後ろまで吹き飛ばされると大きな木々をなぎ倒しながら十数本目で勢いがとまり体をうちつけた木に弾かれる。


背骨が折れたような感じがするが……気のせいだ!

えーと、命に関わるけどな。大丈夫、きっと。


視界が霞み始め、ゲームの中でいう絶対に倒せないキャラを相手にしているような気がして敗北の二文字が脳裏に浮かぶ。

それを振り払うだけの気力はなく、仕方がないのでまだ握れていた剣を見る。


コイツが俺に勇気をくれる。


やらなきゃならないことを思い出させてくれる。


「まだ破壊されない。……そうか、"物語"をスキップできるということはつまり、それだけの強さを短期間で手に入れられたということ」

「ゴチャゴチャうるさいぞ。さっきから"光の剣"だとか"入手条件"だとか"物語"だとか。ゲームみたいに言うんじゃねぇッ!!」

「君もあったはずだ。彼が創造した世界、君が強くなるためだけに存在する世界。この世界は明日の朝に終焉(しゅうえん)を迎える」

「……お前が死んで、か?」

「いいや、元々そう出来ている。僕と君が出会い、僕が君を元の世界に送り届ける。そして、この世界は消滅する。それが物語(シナリオ)だったのさ。現実、僕と君は出会ったけれど、君は僕と敵対している。これじゃあ、僕も君も一緒に消滅することになるね」


何もかも消滅する、この世界の全てが。

そういう風に出来ている。


なるほど、物語(シナリオ)ねぇ。

ならば俺は最初から物語(シナリオ)に沿った動きを一つもしていなかったわけか。


いいや、ウミに会ったのはシナリオ通り……そこだけが。


「……帰る方法を探す時間もないな。夜明けか」

「あと数時間。君は何をすればいいのか、わかるね?」


帰ればいいんだろう。

帰れば……。


うん、わかる。


「でも、最後に言っておこう。この世界の謎はまだ解けちゃあいないんだ。探究心こそが、物語さえ突き動かして……ハッピーでもないバッドでもない、もう一つの終わりを(つか)むんだ」

「……君の選択肢は二つ、この世界から元の世界に脱出する、それか一緒に消える。どちらか」


ジリジリと近寄ってきながら言う天使。

その後ろからウミが追うようにトボトボ歩いている。


……物語なんてブチ壊してやるぜ。


ついに俺の目の前まできて、ボロボロになった俺の肩に優しく手を乗せる天使。


「さあ」


……天から光の柱が俺へ向かいゆっくりと落ちてくる。

それに包まれる俺の体。


「……七つ目の剣」

「何?」


……時間がない、手段がない、絶望しかない。

完璧だ。


ドキドキワクワクしかない。


「夢ってのは、果たすものじゃない。いつか目の前にふらって現れるものなんだ」


それを掴むか掴まないかは自分次第。

周囲に同調してちゃ掴めない。自分を信じていなくちゃ掴めない。

もっと言えば――


「やる気がなくちゃあ掴めない。やる気十分の俺がこの世界に夢を見させてやる」


月光の剣を(かざ)し、天から降りてきた光を反射する。


表情を硬直させている天使。

小さなものだったが……見逃さない。何を考えているのかわかる。


「いつもおどけているピエロの中に、大きな夢があったら……それだけでカッコいいものなのさ」

「それは、馬鹿としかいいようがないね」


月光の剣を横殴りに一閃する。


それを後ろへ飛び避ける天使。

別にこれは避けられたっていい。


背を向けて走る。


さあ、七つ目の剣を探しにいこう。

そして天使を倒し元の世界に帰る。


完璧な物語(シナリオ)じゃないか。

どんな攻略本にも載っていないゴールを目指してやろうじゃないか。


「海弟ッ!! 本当に帰れなくなるよ! ああっ」


ウミの声。

最後に途切れたのはきっと、海から離れすぎたせいだろう。


全部まとめて俺に任せろッ! 天使のことも世界のことも、俺に任せりゃ三分……いや、五分。……いつか終わる。





海弟の逃げていく後姿を見て追おうとしない天使。

その様子をジッ、と見ているのはウミだ。


もうすぐ日の出だからか、妙に涼しげのある風が吹いている。

木の葉が舞い、森の中ということを意識させる。


「……何故、拒否したのか、僕にはわからないよ」

「誰よりも複雑な心を海弟は持っている。やりたいことをしているのに、同時にやりたくないこともしている」

「それは?」


問うような視線に目をあわせずウミは言う。


「責任。知らず知らずのうちに、背負い込んでいる……海弟は……」


続く言葉を飲み込むウミ。

まとわりつくような風を意識しながらも、背を向けて海を目指して歩く。


「この世界に一番詳しいのは僕だ」


空を飛ぶ悪龍を眺めながら言う天使。

しかし、ウミは答えない。


「僕らは消える運命」

「それは言い訳にしかならないから、だから理解できていない」


視線を下に落とす天使。

色々と考えている様子だが、ウミはそのまま天使の傍を離れていく。


「夢を追う者に言い訳はない。遠回りなどしない、するはずがないのだから」


気配は感じていた。

天使は声のほうへ振り向く。


先ほど消滅したはずの黒ローブの姿があった。吹き飛ばされたはずの黒ローブもしっかりと身に纏っている。


「……物語の中で、お前はここで登場しないはず……。いいや、出来ないはずだ」


特に驚くような感じもない天使はつまらなそうに呟く。

夢、希望を深く考えている最中に経験の浅い一言を言われ、気が滅入る……そんな感じだ。


「あれだけ簡単に殺されたら私もイヤだし、それ以上に……あなたの破壊でいくつの責任が生まれたと思う?」

「責任……?」


かつて自らに問われた質問を天使にする黒ローブ。


「古い時代の責任を、今は償うことは出来ないけれど……今、現代(ここ)で気づかされたおかげで償うことの責任はある!」

「……この世界は終わるのだ、責任の話などしていても仕方がない。僕も疲れた、君を殺す必要もない」


その手から破壊の剣を消す天使。

まるで戦闘意欲のないその姿を見て黒ローブは呟く。


「王道がいるなら邪道がいる。そして外道は存在している。さっきの水の言葉を借りるならやりたいことをして、そこで生まれた責任も取る。それが出来なければやりたいことをするな」

「……やりたいことなど、ないさ」

「私にはある。残念だったな、私は世界を破壊したい。その手に収まらないなどとはもう二度と言わせない」


野望の大きさと、その器の小ささの違いを馬鹿にされ……気づき。

理不尽で巨大な力に圧倒され……気づき。


自らを変えるだけの余裕は黒ローブにはなかったはずだ。

しかし、それでも……こうして進化でもない成長でもない変化がある。


「この責任はどうしてやろうか。まあいいさ、第一の障害を片付けるとしよう」

「放っておいてもこの世界は壊れるっていうのに……。まあいいさ」


めんどくさそうに構える天使。

自らの力を過信しているでもない、確かな強さはある。


だが、黒ローブは目の前にある夢を遠回りして地道に掴むような秀才ではない。

変化があった、だから。


「憎悪はあるだろう。けれども、それを受け止める私まで憎悪に狂う必要などないのさ!」


やりたいことが出来なくて、ぐずっているのは子供だけでいい。

私は、何年生きていると思っている。


「……始めよう」





……どうやら追いかけられていない様子。


山奥とは言えない、たぶん森の奥深く。

小屋でも建ってて妖精さんが済んでいても違和感がない。


ほら、あそこに湖が……あるぇ?


「剣だ、剣があるぞ!!」


これは……岩に突き刺さっているな。

抜けるか?


剣の柄を持って片足を岩に乗せると思いっきり引っ張る。


……抜けない。


「……っていうか何だよこれ、岩と完全に同化してるだろ。抜けるわけねーだろ」

「当たり前だろ、馬鹿者!!」


いきなり怒鳴られて思わずそちらを向いてしまう。


そこには暑苦しそうなおっさんが立っていた。

片手には槌よりも少し大きめの金槌(かなづち)を握っていた。


「何だ、お前」

「お前こそ何者だ! 村の方は騒がしいし、時折揺れは起こるし……ん? さてはキサマ盗賊だな?」

「全力で否定させてもらおう。俺は騎士を名乗りたい」


……何だか疑いの視線を向けられている……。


「……この国の騎士の制服はいつ黒に変わったんだ?」

「別の国の騎士だ。まったく」

「……ほー、つまり戦争でもおっぱじめようってのか。どうりで地鳴りや騒ぎが起こるわけだ。で、お前はワシを捕まえにきたわけだな?」


深読みしすぎだ。

戦争なんて起こすか馬鹿者め。


「何で俺がお前を捕まえるんだよ」

「そりゃあ、伝説の武器職人と(うた)われたワシことガリオンを捕まえに来たに決まっているだろう。だが、そう易々と捕まらんぞ」

「そうか。じゃあ勝手にしていろ、じゃあな」


俺が探しているのは武器で、武器職人じゃあないんだよ。


七つ目の剣かと思ったが、どうやらこの岩に刺さった剣は違うらしいし。

というか、こんな近くにあるわけがないよな。


「勝手にしていろ、だとぅー?」

「ああ」

「じゃあ勝手にさせてもらおう」


背を向けて去っていくおっさん。チラチラとこっちを何歩が歩けば見て、何歩か歩けば見てを繰り返している。

っていうかえらく蟹股(がにまた)歩きだな。


十数メートル離れたところで叫び始めるおっさん。


「追っかけてくるんじゃねーぞ!! 絶対だからなッ!!」


……おっさんのデレは嬉しくない。

が、追いかけてみるか。


俺はやる気のない尾行をすることにした。


海弟の強化物語


1、ウミと出会う

2、妖精の剣を手に入れる

3、ギルドで資金を集め王都へ旅立つ

4、封印された悪龍の使いの亡霊を見る

5、王都につき様々な情報を聞き七つの剣の情報を知る

6、その一つがあるという王都に潜入

7、勇者に接触

8、悪龍について話を聞く



中略



50、今まで集めた七つの剣を使い悪龍を復活させる

51、その場でバトル

52、見事勝利し約束のためにウミのいる海辺の町に帰る

53、祭りが行われ天使に元の世界に帰してもらう


海弟がここで世界から退場


54、夜明けとともに世界が崩壊



という流れです。

省略部分? ああ、剣集めの旅ということで。


というか54じゃあ順番に説明していったら収まりませんね、絶対。


こういう言い方はしたくないのですが、いくつもフラグは立っていたわけです。


これだけ見るとアレですね。ジーナとの接触、それこそが物語を狂わせた――


……すみません、ネタバレとかには関係ないのですが使えそうなネタのためにこれ以上は書きません。

このネタは使わないかも知れませんけどね!


では、次回。

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