第528話敵と救出
……更新速度?
はっは、ガス欠って誰にでもあると思うんだ。
例えば、自分の欲するガソリンが足りない場合。
速度は遅くなってしまうだろう?
「ッ、アンちゃんか!!」
村の入り口付近で見かけた大きな影、と言っても遠目からでもよく見える。
黒い鱗を何枚も体に貼り付けた龍こと、僕らの兄貴、アンちゃんだ。
ちなみに俺の弟分ではある。
ギロリ、と何故か睨まれてしまう俺。
急いでいるのに足が止まってしまう。
そのまま数秒だが見つめあう。
……龍の言葉はわからないが、何となく伝えたいことはわかった。
コイツも覚悟は決めてあるのだろう。何となく、感じるだけだけれども。
「行ってくる」
視線を逸らして村の中へと入る。
後ろで俺を激励するかのような大きな咆哮が鳴り響く。
その応援を受けたところで半ば燃えカスとなっている村の中で右往左往している住民の団体を見つける。
その中には村長がいるようで、その側近の男たちが村長の声を周囲に届かせようとしているのが聞こえた。
ならばここは大丈夫だろう……けれども。
油断は出来ないのだ。絶対にしてはいけない。
きっと、目の前の恐怖に立ち向かうってのは……こういうことを言うんだと思う。
一歩でも間違えた方向へ足を踏み出したら俺の背負っている……俺の後ろを歩いている奴等は死んでしまう。
命ってのは重いなぁ、なんて改めて思わされてしまう。
「と、どうしてやろうか」
魔力が周囲に充満していて、敵の姿はわからない。
目視も出来ないし、第一に俺には目的がある。
アンちゃんに託された。
心が通じ合っている相手、ジーナを助けてやってほしいと。
男と男なら視線をあわせただけでわかってしまうものなのだ。
間違っていたらゴメン。だが俺は思ったとおりの行動をするぞ。
住民の団体の中に突っ込みジーナの姿を探す。
探して、焦りも頂点へ達したところで村長のところまで着いてしまう。
ちょうど反対側から探していたので、これで村の住人は全員ということだ。
見逃している可能性もあるが……こっちだって必死なのだ、早々見逃していることなんてないだろう。
まあ焦っているからこそ、というのもあるが……一度村長と情報交換をしておきたい。
「村長ッ! ジーナを知らないか!」
「何!?」
……どうやら騒音の中でいるせいか、声が聞こえないようだ。
というか、歳のせいもあるのだろう。
「ジーナは何処だッ! 最悪の事態になる前に、教えろッ!!」
「……住民全員はここにいるはず……海の精霊様は……一人、黙祷を捧げているが……」
真上を仰ぐ村長。
その視線の先には高い位置で火に囲まれながらも黙祷を続けているウミの姿があった。
こりゃあ、不味い。
アイツも言っていたが火が苦手だとか、蒸発なんてされたら天使が呼べなくなってしまう。
それはアイツの苦労も無駄にするということで、無駄に主人公思考なので一度頭を切り替えよう。
「俺にはどんな力があるッ!! 俺に出来ること」
……妖精の剣、一度はコレでアイツを倒した。
俺の夢、それに届いていない今の俺。
けれども、今の俺じゃあ救えない。
「一番夢見てたアイツがいないんじゃ、俺が夢見る意味なんてないだろ。なら救うしかないッ!!」
重要なのはそこだ。
何度目だろうか、俺はジーナを救う、ウミも救う。村だって救ってみせる。そこに住む人々も。
不可能なんてない。
絶対とは言い切らないがな。
「最後の何処でジーナを見た。高いところにお前はいたんだろう?」
「お前……ッ! 村長になんて言い草ッ!」
「うるさいぞ脇役」
「脇……ッ!!」
睨みつけてきたのでこちらも睨み返す。
今はこんなことしている場合ではないのだが、情報を求める相手にペコペコしているようじゃあこっちが馬鹿みたいじゃないか。
まあ、馬鹿にならなきゃ出来ないことだってあるのだろうけれども。
今は……人の気持ちを察することのできる賢い人間にならなきゃな。勉強が出来る奴だけが賢い奴じゃあないんだ。
「……むぅ、確か……曖昧、じゃが……倉庫……?」
「倉庫?」
「その方向へ歩いていったのを見た、ような」
……本当に曖昧じゃないか。
頼りになる情報かわからないぞ。
……でも、まあ何処かへ行ってしまったのは確かだろう。
「ウミの為にも海水を使って火を消すんだ。そっちの方が逃げるよりも遥かに利口だ」
「わかっておるわい。今、桶を用意したところ――」
チラリと俺とにらみ合っていた若者の目を見る村長。
「……はい?」
「コラッ! 格好がつかんじゃないか!」
「じゃあな村長! ジーナのことは任せろ」
茶番に付き合う暇はない。
けれども、少し……安心できた。
思い出した。
あのジーナだ。そう簡単に"死ぬ"はずがない。
というか、寿命を目一杯生きて他人に迷惑かけて生きそうだな。
「倉庫か。位置はこっちで……」
ウミがいる高台のちょうど横を通り抜けようとしたところで、上から何かが落ちてくる。
キラリと光ったのを見て立ち止まる。
「海王の剣。持っていったほうがいいかもね」
……ジーナの声。
うん、コイツは役にたつ。
何で今渡されたかは知らないが、海の王だって俺は味方につけちまうんだぜ?
白の剣(仮)、勇者の剣、妖精の剣、海王の剣。きっと黒の剣(仮)もあって。
残り四つ。
そのうち三つがわからない。
でも、きっと……この展開から察するに……七つの剣を集める、ってのも鍵になるのかも知れないな。
「だからウミは俺にこの剣を託してくれたのかも知れない」
そうこうしている間に倉庫の前に着いてしまった。
何もかもが早い。
先ほどまで乱れていなかった息を整えて……先ほどまで痛みを感じなかった足を摩る。
疲労もあるが、道中で小石でも踏んでしまったのが、足の裏がズキズキする。
ああいうのって本気で痛いんだよね。
……すべてがすべて、万事オッケーなわけじゃあないけれども。
それでも、俺は今笑える。
不敵な笑みと、その格好。
誰かのためにあるんじゃあない。
恥などないが、格好つけて……。
「助けてみせよう、一人の仲間をッ!!」
振るう剣が砕かれようと、己の命が尽きようと。
外道と呼ばれる男を見せてやる。
前書きで生意気なこと言ってすみません。
何か段々と短くなっているような気がします。
アレですかね、スランプ。何度目だよ、って感じです。
っていうか、これでも2000文字以上は書いているんだからねッ!
頑張れば一日で10000文字更新とか出来るからこれは実力の五分の一か……ふっ。
脳ある鷹は何とやら。
得物などいませんが隠してしまうが天才です。
自分は天才じゃあないですけど、自己満足としかいいようがないですからね、この小説。
さて、バトルしようぜ! って感じで次回はいきます。