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第526話儀式と整理

自分の大切なものを傷つけられれば、人は自分の心さえも傷つけられてしまうのかも知れません。

例えば自分の恋人、嫁、子供、なんて色々あります。例えそれが物であろうとも。


それらは弁償できるのでしょうか?


『思い出』の分だけ『嫌な思い』を詰めたものを弁償されても、ねぇ?

「ちょいと悪い龍を復活させて仲間にしてきた」

「……ああ、そう」


何だ、その呆れたものを見るような目は。

失礼すぎる。


「で、相方は?」

「ジーナか? アイツなら、祭りでも楽しんでるんじゃないか?」

「へぇ」


海を眺めながら村のほうから聞こえてくる愉快な音楽を意識しながら言ってみる。


「そろそろ行くか」

「へ?」

「お前祭りで重要な役やるんじゃないのか?」


天使を呼ぶとか何とか。

俺的にはどうでもいいのだが、コイツがここにいたら祭りの様子などわからないだろう。


「天使を呼ぶ、ってほどのものじゃあないんだけどね。まあ、海で死んだ漁師の霊にも祭りを楽しんでもらおう、ってことで私もこんな感じで参加しちゃってる感じで」

「お前はノリで動くのか。感じって何だよ」


思考している様子の海の精霊様。


「どうした?」

「今回の祭りは休もうかなぁ、って」

「それは困る」


俺も祭りを楽しみたいし、天使と神には関係性があること間違えなしだ。

ま、どんな関係でも頼りたい、って気持ちが大きいんだよな。


最終的にどんな結果になるかはわからないが、元の世界に戻ることは出来るだろうな、うん。

俺は頑張ったし。


「一週間ぶりなんだし、もう少し話そうよー」

「近づくな、服が濡れる」

「それぐらい気にしない。男の子だもん」


よくわからないが、水もしたたるいい男、ってのを言いたいのか?

とりあえず本当に濡れるって意味じゃないから遠慮してほしい。


若干眠いし、祭りの熱気に当てられたい。


「さて、行くぞ」

「……仕方がないなぁ」





「で、でかい」

「よお、アンちゃん」


これが言いたかったッ!

これが言いたかったんだッ!!


よお、アンちゃん、ってさ!


いやぁ、顔のニヤケが取れないぜ。


「ち、ちょっと、アンちゃんって何? それに何でこんなところにいるの?」

「はっはっは、コイツは動くんだから何処にいても不思議じゃないだろ」

「そうだけど、何で村の近くに立ってるの!!」


ここまで連れてきてもらったんだ、だからいても不思議じゃあない。

が、そう言っても理解しそうにないな。


「んじゃあな、アンちゃん」


村の入り口へと向かう。

納得していない様子のジーナだったが……知らん。


まず入り口から見えた木製のテーブルに並べられた豪華料理を一つひとつ眺めていく。

かなりアバウト、というかコレを作ろうとしたんだなぁ、でも似てるって程度だなぁ、なんて感じのものが複数存在した。


とりあえず、不味そうではないが手はつけない。

ウミは海水なので以下省略。


じゃあ何で楽しむか、といえばキャンプファイヤー的な何かなのだがウミが蒸発するので無理。

塩しか残らないな。(はかな)すぎる。


「あっ、海弟ぇー!」


呼び止められ後ろを向くと長旅で疲れているとは思えない様子のジーナさんがいた。

コイツ顔が赤いぞ、酒飲んでるな。


「俺は子供だから酒は飲まん。酢は許すがな!」

「はい?」

「何でもない。というか、何のようだ」

「一緒に踊ろう!」

「ウミ、任せた」

「シオに改名しろと?」


……つまり、うん。

まあ……そうだな。


「そういうことだ」

「ちょっと傷ついた」

「その傷口を広げる方法でも考えるとするか、本当に俺たち祭りに来た意味ないし」


俺は天使に用があるんだからな。


推測として、神がいた場合でも神がいなかった場合でも、天使に会うことは重要だ。

というか、帰る方法の一つであることは……俺の脳内では確かなものとなっている。


「もう儀式とやらを始めようぜ」

「いいけど、道具とか調(ととの)うまで時間が掛かるよ」

「今すぐな」

「この鬼畜! 村長に言ってくる」


村長の居場所もわからないというのに何処かへ走って(?)行くウミ。

残ったのは良い笑顔のジーナだけだ。


というか後ろの男共は何だ。

あわよくば祭りのテンションで告白とか狙ってるのか? 残念だったな、今日は俺で貸切だ。


「龍の背中での記憶はあんまりないが、よかったな」

「うん。でもさ、アンちゃんがいるの反対! っていう人もいると思うんだ……」

「ほお、えらく現実的だな」


祭りなんだから、そんなことは忘れてしまえばいいのに。

後で何とかなるさ。


失った信頼はなんとやら、と言うが築き上げた印象は簡単にブチ壊れるんだぜ?


悪い龍ってイメージも一つの善行で壊れてしまうかも知れない。

もしも、があるから人は運に頼る。


俺もありえるのなら、同じ夢を追い掛ける同志が欲しいな。

俺の求める夢なんて小さなもので、地面ばかり見ている奴が思う、そんな面白みもないものなんだけれども。


大空を見ていれば、そこにある無限に手が伸ばせるのに、残念な夢だな、本当に。


「ま、お前の不安なんて吹き飛ぶさ。お前が頑張れば」

「……そうなんだよね。どう頑張ればいいのかな……」

「前だけを見て訴えろ。真っ向勝負しかないだろ、諦めたらそこで……ま、そんな感じだ」

「最後をぼかすのはどうかと思うんだけど」


肘で小突いてくるジーナ。

酒が入っていると関わりあいになりたくないな、コイツ。


「でもさー、仲間っていいよね! 今回のことで、アンちゃんはめでたく、わたし達の仲間になったんだし!」

「その気持ちがあれば、何とかなるさ」


コイツとアンちゃんの関係は、そう簡単に裏切りが起きるようなものじゃあない。

どうやらジーナはアンちゃんの言葉がわかるらしいからな。


だとすると、ジーナは良い奴だしアンちゃんも気に入るだろうから良い関係になるに違いない。

すでに仲間だしな。


「皆の者、静かに……!」


村長が何か高いところから出てくる。

その後ろにはウミが立っていた。裸である。


いや、いつもそうなのだが、こんな時ぐらい着飾ってもよいものを。

着たものがずぶ濡れになること間違えなしだが。


「儀式が始まるのか。天使を呼ぶ、精霊の儀式」

「……久しぶりだねぇ。今年は景気のいい年になりそうだ」


今更な気もするがな。

一年の半分はもう過ぎている気がするし。


「……そういえば、思ったんだけど……」


ウミの儀式が始まっている中、ジーナが呟く。


「……わたし達がいなくても、この祭りはあったんだよね」

「そうだな」

「じゃあ、わたし達の行動に意味はあったのかな?」

「……どうした? お前、手元にあるものだけが夢じゃあないぞ?」


叶えた夢だって立派な思い出に変わる。


「もっともっと、やりたいことが見つかったし、一つ忘れたってそれ以上にやりたいことが浮かんでくるし」

「けど?」

「……けど、これ以上のドキドキワクワクはないかな……って」


アンちゃんを仲間にするためにした旅のことか?


まあ、お前が進んで行動したのは初めてなのだから仕方がないのだろうな。

けど、それを素直に言うのもコイツのためにならない。

二十歳を超えた大人なのに、成長の遅い奴である。


けど、誰よりも夢を大切にしているのはいいことだと思うぞ。


「人生ってのは諦めの連続なんだよ。諦める度に思う、何で自分だけ……って」

「……自分だけじゃあ、ないんだよね」

「そうか? 諦めることはそれぞれ違う。そのきっかけさえも。夢が日々の中で薄れていく、恋に破れる、他人の意思に服従する。様々だ」


それは立場で変わってくるし、運命すらも絡んでくるだろう。

ただ、それは自らが望んでしていることではない。


だからこそ"諦める"度にもやもやを抱く、正体に気づかぬまま鈍感になっていく。

失敗は一度しかしてはいけない、なんて決まりはないのに。


何度も挑戦して、成功してこその失敗なのに。

一つのことに打ち込むことこそが人に認められる、ドキドキワクワクする近道なのに。


「もしも、お前の心の中のもやもやが取れなかったらこう考えろ。近くにあるのに届かないもの、それは不必要なものだ。人は遠くにあるから手を伸ばすって表現を使うんだぞ」

「……よく、わかんないけど、その手が届かなかったら?」

「叫べばいさ」


守りたいものを守れなかった力には、諦めがない。夢、希望、恋、意思が折れることがない人間だ。

うん、とても魅力的。だからこそ内面に価値があるとかいうのかな。


「一度も絶望を見るな、とは言わない。それは希望も見るなってことだからな。だから、埋めきれない傷は気にするな。直球で進む球ほど好かれやすい」

「そう、だね」


……さて、叶えた夢を思い出に変えて、目指すものがなくなった喪失感。

本気でやりたいことが消えた、という複雑な感情。


それらを無視して進むのもいいが、時間はたっぷりある。

それを隠すか隠さないかが問題なんだよな。


……瞬間、ぞくりと……絶望の気配とでもいうのだろうか。

終わることのない運命、ループし続ける嫌な音でも聞こえたときのような……そんな嫌な感情が俺の胸の中を横切った。


この感覚、感じたことはある。


「……ジーナ」

「海弟、これで本当に帰れるのかな?」

「……ん? あ、ああ」


……気づいていない?

それは……。


『浜辺へ来い』


……この声、聞いたことあるぜ。

そうなんだろう? 黒ローブ。


さて、前書きに謎を残してしまいましたね。

うん、得に意味はないのですが、人のものを取ったり遊び半分で盗んだり、返すつもりだろうと隠したりとかはダメですよね。


それが自分で持ち主を選ぶのならば別ですけど。

人間には意思があります。


だからこそ高望みをするわけです。

その基準は謎めいています。解こうとすればきっと、絡まり自分の中にあるはずの基準さえも持っていかれてしまうでしょう。人の心ってムズカシイものです。


んで、後書き前書きに長々と書いてしまった理由は簡単。

二日更新してなかったので長さ的に……あ、ダメですか? すみません。


まあ、何処かで何とかします。

要望があれば(重要)。

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