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第522話『逃げるが勝ちとかふざけんなよ』by海弟

逃げるのなら何処までも追っていってやるぜ。

例えそれが苦手な場所だろうとな!

「妖精の剣の実体化能力で出現した俺の夢。俺自身の目指すもの」


その果ては、あまり変わっていないようにも見える。

けれど、大きな違いがあるんだよ。


「さーて、戦いは終わりだ。そうだよな?」

「……夢。龍の背中に乗る、こと?」

「乗るんだから飛べよ。それぐらいはしてほしいものだな」


ついでに目的地は海辺の村な。

祭りには出たいし。


「悪龍様、人間の手でその身を汚すことは……」


振り向き言う黒ローブ。

失礼すぎる、が今回は許してやろう。


どうあがいたところで幽霊となった俺には勝てないのだから。

どうやら幽霊の俺に攻撃を当てられるのは黒ローブだけらしいし、黒ローブは俺の相手で忙しいし。


龍の咆哮が響き渡る。

それはぶち破られた天井から外へ響き、町中に混乱を生む。


人々の騒ぎ声がここにいても手にとるようにわかった。


「……はい、わかりました」


黒ローブの姿が消えていく。

そういえば現れたときも急だったな。


コイツには瞬間移動の能力でもあるのだろうか。

置き去りにされたアンちゃんはというと、両翼を目一杯広げる。


「ッ、まさか!!」


風圧か、それとも妖精の剣の効力が切れたのか、幽霊の俺が衝撃に当たると同時に消える。

それを見計らってか、龍がその大きな翼を使って浮き上がっていく。


「クッ、コイツ……逃げるつもりかッ!!」


真っ向から戦うのなら何とか出来るのだが……こう逃げに回られると俺は弱いな。


「では、さらばッ!!」


アンちゃんの頭の上にいつも間にか乗っていた黒ローブが叫ぶ。


天井に大きな穴、というよりも天井自体が壊れて崩れ、アンちゃんと黒ローブは空へと脱出する。

その様子をただぽかんと見ているだけの俺たち。


その姿が消えたころ、ジーナの叫び声が響く。


「これって、不味いことになってない!?」

「うるさいぞ。奴等、力を蓄える気だな。潰しに行くぞ!」

「待て。そう、急ぐ必要もないだ――」

「ある! あるから一日でこの城に潜入したんじゃないか」

「一日だと!? この城の警備は完璧だったはず……」

「俺は完全(かんぜん)壁壁(ぺきぺき)だからな。完璧の上を行くぞ」


っと、話している暇はない。

今日中に龍を(しもべ)というか下僕(げぼく)というか家畜(かちく)というか、そんな感じにしないといけないのだ。


ジーナもわかっているようで、二人して城の出口に向かう。

勇者の末裔ことセルティが何かを言っていたが、知るかッ!!


俺は忙しいんだ。





既に五時間が経ってしまった。

さすがに走って移動は判断ミスだったか。


息切れしているジーナを正面に思う。


だが、アンちゃんと黒ローブが休憩している場所を特定することは出来た。


「空にいるんだからな。そりゃあ目立つ」


山の頂上付近をグルグルと回っているアンちゃん。

その背中にはきっと黒ローブも乗っていることだろう。


「一日に二度奇襲か。楽しみだな」

「そろそろ時間もないよ」

「知っているさ。片付けるぞ!」


そういやジーナ、戦いの最中に何もしていないなコイツ。

少しは役にたってほしいものである。


「ったく、はい」

「はい? って、勇者の剣が何でここに!?」

「……ある時、勇者の剣は七つに分かれた……」

「それ分裂だね。馬鹿じゃないの! うわぁ、何か手汗が……」

「それだけじゃないぞ。武者震いも――」

「これはそういうのじゃないし!」


ただ怯えているだけか?

紛らわしい。


鞘も適当に見繕って最終決戦へと挑むことにする。

きっと未来永劫俺たちのことは語り継がれることに違いない。


「暗黒龍に挑む馬鹿達。と」

「勝算は見えているから馬鹿ではないね」

「ならば『強者』の実力を見せにいってやろうぜ。かつての魔王? 知ったことか!」


……で。


「どうやって空を飛ぶんだ? 言っておくが、俺は色々と無理だ」

「……わたし一人でも戦えないからね。先に言っておく」


あー、はいはい。

そういうことか。


「……セルティ連れてこりゃあ良かったのか。うん、酷い」


空に飛んでいる、ってだけで倒せる条件が勇者の末裔になるのも酷いけどそれ以上に俺たちが酷い。

色々酔う俺と二十歳の夢見がち女。


まあジーナについては何も言わないでおいてやろう。


「鏡の反射で何とかいけるか?」


距離が開くほど魔法の威力は低くなる。

しかし鏡に一度でも触れればそこから再び発射されることになるので魔法の威力を維持しつつ攻撃を与えることが出来るのだ。


意気込んで抜いた剣を鞘に仕舞うと角度などの計算に入る。

計算といっても目で見て適当に、って感じのものではあるが、実はこれ重要。


「……ああ、うん。龍の直径はでかいなー」

「それってどういう――」

「『鏡』」


龍の周囲に数枚、数十枚、数百枚、数千枚、数万枚、数億枚……と、鏡が展開されていく。

進行方向を塞ぐように配置された鏡は龍の動きを止めるような形になり、そのままひるんでいる間に完全に鏡がアンちゃんを囲う。


上も下も右も左も。

兎に角、全体を囲ってしまっている。


「鏡の反射は?」

「何の話かな?」


表面に鏡をつければ無敵のバリア。

裏面に鏡をつければ無敵の殺人ボックス!


その名も、特殊魔法『鏡』!!


「さーて、行くぞッ! 残り魔力ももう少ない。少ないってレベルじゃないな」


肉体強化ぐらいしか使えない。

それも数分間だけ。


「ま、鏡の維持に魔力は使わないしな。まあ、相手が攻撃撃ってきて反射能力が発動したら俺から無い魔力が吸い取られちゃうわけですけどね」


まあ、反射能力は出来るだけ使わない方向でいこう。

相手も不用意に動かないはずである。


「さて、ここからだ」

「……ここか――」

「あの鏡の箱の中に潜入する!」

「どうやって!」

「転移で」


転移魔法ゆえに、かなりの魔力は消費する。

消費するだけの魔力は俺の手元にない。


あるのはそう! ポケットの中にある小さな手鏡だけ!

頼もしい仲間を紹介しよう。


魔法石君ABCDE……と。


「全回復までに時間が掛かる。その間待っていてくれ」

「……いいけど、けど、何か色々すごすぎない? やっぱり海弟……あなたはドキドキとワクワクを運んできてくれる」

「俺に任せろ。と言いたいところだが今回は規模が規模だ。白の剣と黒の剣があれば楽なんだがな、命の危険は常にあるぞ」


俺も、アンちゃんの力を直接見ていないが、もしも黒ローブと一緒に相手をすることになったら危ないだろう。


さて、少し緊張しておきますか。

ヒーローの気が休まる時はないんだよ。つねに緊張、つねに誇張。


……後者は違うな。うん。


『鏡に包む作戦』


アンちゃんはでかいです。

それを丸々包んでしまった海弟の魔力はそこを尽き――でも頼もしい仲間魔法石たち。


……でもRPGってこんな感じですよね。

戦いの最中に道具を使われまくる魔王の身にもなってほしいものですね。


といいつつ、装備付属の効果は使っちゃう派ですけど。

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