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第519話『久しぶりに本気を見せてやるぜ』by海弟

この世界の事情など一切知らない海弟。

悪龍の恐ろしさなど知ったこっちゃねぇぜ、と突き進んでいます。


いやー、このまま燃やされてほしいな。

王都が見えてきた。

巨大な都市であるそれは、人の出入りが激しいらしく、馬車の停留所が王都の外にあるらしい。

なので停留所から徒歩で王都に入らなければいけない。


勇者が祖先の国からか、出入りに金を取られることもない。

そのせいか、商業が盛んなのでこんなに出入りが多いのかも知れない。


俺たちも何とか王都に潜入すると真っ直ぐ城へと向かう。

敵の情報は未知数。目的とする悪龍……いや、暗黒龍の力も巨大らしい。


ここからは連戦になるだろう。

何処かで疲れを取りたいところだが、ジーナの言うとおり残り一日しかないのだ。


元の村に戻るのには『鏡』を使えばいいので、いつでも諦めがつくのだが俺が戻れん。

それは色々と嫌だ。


なので作戦はこうだ。


『城に侵入する→龍を下僕にする→背中に乗って村まで飛んで帰る→祭り』


さて、城に侵入したらここまでの作業を流れるようにしなければいけないのだ。

こんな真昼間から城に潜入したら敵は多いとは思うが、俺たちには時間がないのだ。


暗黒龍を復活させるのだけでも巨悪だとは思うのだが、勇者の祖先がいるのだし、下僕にするのを失敗しても何とかなるだろう。


「準備はいいか?」

「そっちこそ。わたしは死ぬ覚悟はできているし、こんなにドキドキワクワクしているのなんて初めて」


胸に手を当てて言うジーナ。

俺も多少は緊張しているのだが、暴れているうちにその緊張もとけていくはずだ。


腰にぶら下げている剣に手を当てて城の門番を睨む。


ここからはスピード命だ。

城の見取り図などないので勘で進むしかない。


目指すは暗黒龍……その名からあって封印されているのは地下のはず。

いち早く階段を見つけなければいけない。


「本当だったら変装していくんだがな。俺は生憎と鏡に映らない」

「どっちでもいいから」


緊張しすぎて怖い顔になってるぞ、お前。


「一度深呼吸しろ。成功率など計算していても足元を見るだけだが、数が多くて損はないぞ」


ジッ、と俺のほうを見てくるジーナ。


……あんま見るな。


ゆっくり息を吸い……同じように吐くジーナ。

それが何度か続いたところで……ジーナの手を引っ張り城門へ突入する。


「っ、深呼吸ぅー!!」

「長いんだよッ! 今の十回目だろ!」


ぼけっ、としている二人の兵士の間を抜けて城の中へ入るとそのまま真っ直ぐ進み大きな門の中に入る。

そこは広間になっていて、使用人たちがせっせと掃除していた。


「お疲れ様っ、と」


そのままそこを走りぬけ、階段を探す。


きっと封印されているぐらいだから見つかりにくい場所に――


「……右か」

「何でわかるの?」

「看板があるからな!」


罠か? とも思ったが、さすがに俺たちが来ることを予想していたわけではないだろう。

きっとアレだ。観光名所になっているんだよ、暗黒龍の封印の地って名前で。


奥にあった小さな扉を蹴り開けるとそこから下に続く階段を下りる。

まさかこれで終わりなわけじゃあないよな?


「ここが一番下か。何処に封印されているんだ?」

「見たところ、あそこ」


深呼吸したかいもなく、息遣いが荒くなっているジーナ。

着崩れして、しかも何となく薄暗い場所なので妖艶っぽさが際立っている。


着ているものはボロッちいのでそこまで感じないが。


そしてジーナの指差した場所は兵士が五人ほどで守っている門で。

その奥が封印されている場所らしい。


ここから先は許可か何かが必要っぽいなぁ。


「よし、ジーナは下がってろ」

「まさか……」


ああ、やってやるさ。


剣を抜くと兵士の一人に斬りかかる。

こちらは既に見つけられていたので軽々と攻撃は避けられる……が、近距離で炎を放つ。

(ふところ)に飛び込めたらこちらの勝ちだ。


一で剣、二で魔法。


衝撃で吹っ飛ばされていく兵士。


「残り四人ッ! 死にたい奴から掛かって来い!」

『っ、キサマ! この先が悪龍が封印されていると知ってここを通ろうとしているのか!』

「当たり前だッ!」


隊長らしき男がほえたので反応する。

さあ、やってみようか。





『ひ、ひぃぃ!!』


兵士が二人ほど逃げていった。

ったく、雑魚め。


「さて、この奥に暗黒龍もといアンちゃんがいるはずだ」

「アンちゃん?」

「暗黒龍だからアンちゃん」

「何か可愛くなってる……」


別にいいだろ。

実際、可愛いかも知れないし。


扉に手をかける……が、開かない。


「んっ、はぁっ! 開かない」


魔法でも打ち込んでみようかと数歩下がる。

そこでリンとした声が響く。


「キサマ等! 何をしている!」


後ろを向けば、カッコいい鎧に身をまとった女性が俺たちのほうへ向かってきていた。


何をしているかなんて明らかだと思うが。


「……キサマ等のような悪党は、この先にはいけんようになっている。出口は押さえさせてもらった、さあ大人しく――」

「扉が開かないなら壁を壊せばいいじゃない。そっちの方が(もろ)そうなのだもの」


魔法を扉ではなく壁に向かって打ち込む。

正直、後ろの女は無視したい。ジーナ、相手は頼んだ。


俺は暗黒龍とご対面して……と、うん。

先に進めたらの話だよね。


「良い壁ですね。うん、壊れない」


どっちも硬いぞ、おい。


「悪龍を復活ようとして、何を(たくら)んでいる!」

「背中に乗せてもらおうかなぁ、って思ってるだけだ! どうだこのメルヘン! 悪役に相応しくないぞ! だから去れ!」

「……お前達の目的が何であれ、悪龍が復活したらこの世界に厄災が降りかかる。どのような目的であれ、そこを通すわけにはいかない!」


ほお、そうかそうか。

この口調からして、お前はここを通ることの出来る方法を知っているのだな?


ならばやるしかあるまい。


「我が妖精の剣で相手になってやろう」

「妖精の剣。ふっ、海底に沈んだはずの剣がここにあるはずがないだろう。勇者の剣で成敗してくれる」


ちなみに(けん)ではなく(つるぎ)な。

今更って感じがするが、漢字だけじゃあ伝わらないこともあるのさ。


「アンちゃんは復活させるッ!」

「お前の兄なのか!?」


今だ! 何故か混乱している相手へと突きを放つ。

その距離はかなりあるが、問題ない。


「突き進むこと、それ即ち勇気である!」

「キサマのそれを勇気とは認めんッ!」


勇者の剣で弾かれると高速で胴を狙った一撃が放たれる。

動作が間に合わないので魔法を使うことにする。


「雷よッ!」


この距離で、一番早く相手の元にたどり着くだろう魔法。

しかし、寸前で魔法が弾かれる。


っ、どういう……クソッ!!


剣の振られた方向と同じ方向に体を飛ばし、傷を浅くする。

しかし切れ味は抜群のようで、かなり体が痺れる。


よろめきつつ立ち上がると相手を睨む。


「名前を聞こうか」

「……セルティだ。お前の名は?」

「海弟。いくぞセルティ、勇者の末裔!」


一度ぶつかっただけでわかる。

この世界に勇者はいる。コイツが、コイツこそがそうだ、と。


「お前を倒し悪を手にするッ!」

「キサマの悪事は私が止めるッ!」


相手の剣を振るスピードが上がるのと同時に体を魔法で強化していく。

こちらには実践で得た技術とコレしかないのだ。


才能とか。良い師匠とか。

そんなもんいない。


だからやれることをやってかなと、後悔するぞ! ラスボスでポーションが余った時のような。


ちなみにセルティはラスボスじゃあないです。

まだ後に残っている人、というか龍がいます。まだポーションは取っておけ!


いくぞ、勇者の末裔!


敵な台詞を海弟に言わせたいなぁ、とか思ってたらこうなりました。

すみません、いや、本当にすみません。


あ、ちなみにお前もだろ! って突っ込みはなしの方向で頼みます。


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