第514話依頼とお願い
ハプニングだらけ!
それが海弟の周りです。そして台風の目は安全とかいいますが、台風の目が一番凶悪だったりします。
さて、依頼というのを受けてみた。
内容は野生動物退治。イノシシ三頭程度という軽いもの。
これなら剣がなくても楽勝である。いや、剣で戦ったほうが面倒である。
そして現在、指定された場所である『畑』で待機しているのだがイノシシが現れる気配がまったくない。
依頼を受けることが出来るのは十二時、午前零時ともいうか。その時間までで、達成報告と報酬をもらうのに時間制限はない。
つまり、深夜の何時に行こうとギルドに迷惑ではないということだ。
まあ、新たな依頼がもう受けれないということなので、この依頼一つをなんとしても達成しなければいけないわけだが。
「はあ、暇すぎるぞ。イノシシ早く来い!」
カモンカモン
と近くにある林に向かってポーズをとってみる。
すると、ガサガサという雑草が擦りあう音……つまり?
「イノシシかッ!!」
勢い良く飛び出してきたのは俺の図体をいくらか上回る……クマ?
あるぇー? 聞いてないぞ。
「グルルルァァァァァアアアッ!!」
咆哮、俺に対する威嚇にも思えるその行動に俺はついね、うん、カチンときた。
「ブタ? いいや、クマの丸焼きだッ!!」
ファァァァイヤァァァッ!!
荒ぶる炎、乱れる火炎、飛び散る火花、焦げ散るクマ。
さあ、最終奥義、俺と君とでブレイブハート……行くぜッ!!
「ブルルルルッ!!」
「なぬぃ!?」
横からイノシシだと!?
クッ、このタイミングじゃ間に合わない……ならばッ!!
「神回――ぶごふっ!」
避けられるわけないよね。
剣を振り上げてもう踏み込んじゃってるんだもん。
数メートル吹っ飛ばされる俺。
剣が手から離れ実体が消える。
よろめきつつ立ち上がり、剣を拾おうとしたところで気づく。
「この姿なら、一方的に攻撃できるじゃないか!」
この剣を手に入れるために戦った青白い光を思い出す。
アレは俺の姿が見えなかったようだった。つまり、視覚を有するクマにイノシシだけならば俺は楽勝ってわけですよ。
「水よッ!」
水の塊をイノシシに打ち込む。
クマの方は既に倒れているし、問題ない。
「攻撃連打ァァァッ!!」
嫌な音が連続して響き、イノシシが林に入り見えなくなったところで攻撃をやめる。
一応、クマのほうが気絶しているか確認してから(結局よくわからなかったので燃やした)、林へ向かう。
「クマはハプニングだったとして、イノシシの方はあと二頭か。楽勝だな!」
ぶしゃっぼぎゅぶるるんっ
……ん? 何だろう。
この背後から聞こえてくる音は。
振り返ってみる。
「既に食われてる!?」
やばい、野菜がイノシシ二頭に食べられている!
これじゃあ十分な報酬がもらえないかもしれない。
いや、元々少ない野菜だ、少しぐらいなくなったって……少ないからこそ見つかるよね!
「これ以上はやめろッ! 俺の、俺の生死に関わるんだッ!!」
風の塊をぶつけてイノシシ二頭を吹き飛ばすと剣を急いで拾って乱雑に振る。
それだけで退治できた。
「……どうしようか」
多少、俺が踏んでしまった部分もあり、食べれそうな野菜が一つか二つしか見当たらない。
いや、イモは無事だ。イモは。
あとのは知らん……そうだな。
俺が来る前から荒らされていた、ということにしておこう。
えーと、帰るか。
☆
「……宿、一晩分、ってね」
ふかふかとはいえないが、野宿よりはか寝心地のいいベッドで横になりつつ言う。
報酬は僅かに残り、薬草でも買ってやろうかと考えているところである。
だが、剣を装備している俺は眠気に襲われるのであった。
寝るよ。剣を外して……と。
「おやすみー、誰もいないけど」
☆
からんからん
間の抜けたような。
そんな音で俺は目覚めた。まだ朝も早いだろうに……って眩しいな。
もう九時ごろだったりするんだろうか?
「お、お客様が……いない? 消えてしまわれたわ!」
「うるさいぞ」
「ああ、どうしましょう」
「無視かッ!!」
……ん? あ、剣を持っていないせいで見えないのか。
いきなり現れてもビックリするだろうし、この女が出て行った後に荷物を持ってこっそり宿を出るとしよう。
もちろん、金は置いていくさ。
おろおろしている女。早く出て行け、と念じていると他の従業員であろう男性がこの部屋に来た。
そして女から事情を聞くと、急いで部屋から飛び出る。
「……嫌な予感、しかしないぞ。逃げるかッ!」
急いで剣を腰にぶらさげ、荷物を軽くまとめると布団の上に代金を置く。
目を真ん丸くしている従業員女に挨拶もせずに窓から宿の外に飛び降りる。
ここで俺までおろおろするのはゴメンだ。
ったく、次から宿に泊まるときは早起きしなくちゃな。疲れてるのになんてことだ。
コキコキと首を鳴らしたりしながらギルドへ向かう道を歩いていく。
金は多いほうがいい。簡単な依頼をこなして小遣いをいくらか集めて、旅に出ようと思う。
元の世界に戻るための鍵、いいや。元の世界に戻ること自体を目的にして、旅をする。
うーん、何だかカッコいいな。
「っと、ん? 何だか見覚えのある格好をした奴がギルドの前に……。顔を見られないようにしよう」
急ぎ足でギルドの中へ入ろうと努力するも、残念ながらその努力は無駄な努力でした。
「ああああああっ!! 兄ちゃんはあの時のッ!」
「誰のことかな? 僕わからないな」
「ぼ、ぼくの髪を見てくださいよ!」
「うわ、ふっさふさだ。若さってすげー」
「カツラです」
……はっはっは。
いいね、そのギャグ。
「何ですか! その自分のせいじゃないみたいな顔つきは!
「だって俺のせいじゃないもん。お前と俺のせいだから俺はお前に責任を押し付けるもん!」
「最悪だ!」
少年よ、心を沈めよ。
さすればひじきなど気にならん。
「そうだッ! このギルドに用があったってことは、お金を稼げるだけの腕前があるんでしょう?」
「当たり前だ。お前の数億倍俺は強い、天と地ほどの差……いいや、冷房と暖房ほどの差がある」
「何でもいいんです! このギルドに依頼したぼくの依頼を受けてください! 報酬もしっかり払いますから、これでチャラでいいですから!」
報酬がもらえる、のならいいか。
まあ、俺も悪いと思っていないわけではないしな。
髪は男のなんちゃらほいと言うしな。言わないな。
「依頼を受けてきたらいいんだろ? わかった、達成できたら報告する」
「はい! ではぼくはこれで!」
何処かへ走っていくひじきボーイ。
もとい、カツラボーイ。
いいねー、青春だねー。
よくわからないけど。
「アイツ、何か用事があったんじゃないのか? わざわざここに立ってたぐらいだし」
俺を待っていた、わけでもないだろう。
じゃあ誰かと待ち合わせしていた?
……彼女?
「……この依頼、破棄するのが正しい、というわけか」
ふっふっふ、そこまで悪いお兄さんじゃないです。
村を半壊させる程度で済ませて……と、冗談はいいか。
依頼の内容は何だろう?
☆
剣とパンツのみ。
俺の武器はそれだけだッ!!
パンツが武器になるとは思えないが、大事なところはしっかりと見えないようになっている。
「ウミ、服は見ててくれよ」
「いいけど、アタシが取りに行ったほうが速くない?」
「泳ぎたい気分なんだ、気にするな」
飛べもしない、船に乗れもしない俺だが……泳げるッ!!
はっはっは、常人にはない利点ッ! カナヅチには叶えられない大きな夢ッ!!
それこそが泳ぎッ!
見るがいいッ! スーパークローーールッ!!
よーし、少し沖のところまで来たぞ。
さあ、ここからが本番だッ!
「……っ、あれ! 潜れないッ! おかしいな、ああっ!」
下へ潜ろうと思い上半身をくねらせていると剣が鞘から滑り落ちていく。
その深さ、結構ある。
そして俺の体は消え……落ちる。
「何でだよー」
最近睡眠を多くとるように……まさか、冬眠?
はっは、冗談です。
……でも寝てしまうのは冗談じゃないので困ったものですね。
更新が……更新がー、ってわけなのですが。はい、解決策は書き溜めておくことですね。無理です。