第509話『牛乳飲め男だな』by海弟
なんてこったい!
サブタイトルに魂が感じられないぜHAHAHA!
思いつきでやってしまう自分が悪いんですね、はい。
「光よッ!」
空間を消し飛ばしつつ、文字通り光速でシラに迫る光。
それを寸前で回避してみせるシラ。
しかし次に迫る空間を侵食する闇の波動。
これを食らい吹き飛ぶ。
「ぐ、その、能力……。おかしい」
ふっ、剣の一本や二本で強くなった俺がおかしいって?
残念ながら白の剣と黒の剣は別なんだよ。
それこそ、ゲームにある強さのパラメーターを無理矢理『999』に変えてしまうほどの。
現実世界でのバランスブレイカーってヤツ……前にもこんなこと考えたような気がするんだが。
そこまで考え、起き上がるシラに注目する。
「白の剣、黒の剣。ああぁ……」
何だ、コイツは。
何にしても攻撃のチャンスを逃す俺ではない。
「闇よ、拘束しろ!」
空に浮かんでいた闇がシラを取り込む。
そのままシラの体中を闇が包んでいき、完全に見えなくなったところで……俺は走り出す。
「光よォォォォッ!!」
ズシャッキィン
実際にこんな音が鳴るとは思わなかった。
横殴りに振られた白の剣。
それが纏った光により触れたすべてのものは消滅する。
そして闇により動けなくなったシラの腹を消し飛ばし振り抜かれる白の剣。
「酷い能力だ」
闇を解き、シラを自由にする……が、もう動けないだろう。
「アレだな、人形みたい」
……この沈黙に耐えれないぞ、おい。
しゃがみこみ、開かないであろうシラの目蓋を見つめる。
殺傷の罪は重いというが、軽い罪などないと俺は言いたい。
……何だかとんでもないことをしてしまった気分だ。
『空っぽの器に水を注ぐ。溜まるはずの水が流れ落ちる、穴が空いているのだ』
……ん?
空気に混ざるかのようにシラが消えていく。
それと同時に、気配。
背後を振り向けば、両脇に犬死ちゃんとセリーを抱えた男が立っていた。
「誰だ、お前」
『神秘というのは偶然と奇跡によって創られる。そして以後、人々を魅了し続けるものである』
……何を言ってるんだコイツは。
頭がおかしいんじゃ……って待てよ。
シラが消えるのと同時にコイツは現れた。
何か関係している……はず。
『空は広大である。世界の空は繋がっている、だから我々は空に思いを託す』
男の視線が俺を捕らえる。
『任せておきたかったのだけれど、君はとことん遠回りが好きなんだね。さすがにイラつくよ』
二人を床に置く男。
『では、やってもらいたいことだけ言うとしよう』
「……ま、待て待て。理解が追いつかん、俺が追いつけん。お前は誰だと聞いている」
『教える必要はない。これは命令だ、この場所に行け』
この場所、と言われても何処だよ。
周囲を見回してみる。
しかし、何処に行けばいいのかわからない。
『姿とは仮初と真価の混合物である。君は姿という枠に囚われることのないように』
ぶつり、と意識が根こそぎ引き抜かれたかのような……。
強烈な痛みとともに俺の意識が何処かへ飛んでいく。
何をされたのかはわからない。
が、俺の目の前は真っ暗だ。
二度目、真っ暗だ。
……ふぅ、深呼吸しよう。
☆
……波の音。
何だか心がふわふわするー。
はい、何か俺の体ないです。
いや、正確に言うのなら現在俺、半透明です。
しかも一般人には見えないッ!
俺自身は俺を見れるんだけど、他の平民A的な人には見えないらしいんだよね。
ちなみに鏡にも映らない。
だからか、転移能力が使えない。
つまり脱出不可なわけだ。
「……この場所に行け、で飛ばされました。で、どうすりゃいいんだ!」
普通に考えて、元の場所に戻った方がいいんだろうが……。
でも、うーん……どうやって……いや、どうせなら……うーむ。
そうか! そうだよな! どうせ見えないんだから気にする必要なんてないッ!
「お風呂♪ お風呂♪ 覗きが素敵ッ♪」
男のロマン? いいや、人類の希望さッ!
どうせ見えないのだからやるしかないだろ!
と、言うわけで透明な俺の人間観察の結果、この町、いいや村か。物凄く小さな村だ。
その村のナンバーワン、ナイスボインちゃんのお宅に上がりこむことに成功した。
ちなみに名前はナイスボインを省略してナスにしよう。女の子なのでナス子と呼ぼう。
そのナス子はもう日が暮れたというのにまだ風呂に入らない。
馬鹿野郎ッ!
もう何か飽きたので窓から飛び出る。
その、ちょうど窓の枠に足をかけたところで、何者かの視線を感じてそちらを向く。
「……うぎゃあー」
「お前、俺が――」
ごくり
「――俺がしてたことは内緒だぞッ! 絶対だ!」
首を縦に振る男の子。
ロックンロール!!
風を切るその姿は凛々しさよりも哀愁を帯びていた。
すまんな、色々と。
「に、しても。俺が見えるのか?」
「あ、ぼく幽霊とか得意なんです」
「そうか。なるほど」
とりあえず髪の毛を引っ張っておいた。
「何するんですかッ!」
「背が伸びればいいな、と思ってな」
「もっとやってください」
ふっ、了解した!
ぶちりッ
……これは……ひじきかッ!!
「アァァァァァッ!! 痛いッ! おかあさーーん!!」
「ダァァァッシュ!!」
とりあえず村の外まで逃走。
俺は悪くない。
この姿だ、人に見られることなどないだろう。
はっはっは、俺は心の清らかな者にしか見えないのさ!
溜息を一つ吐く。
「……さて、この先俺はどうすりゃあいいんだろうなぁ」
手っ取り早く……そうだな。
「姿だ。姿を手に入れよう」
姿とは仮初と真価の混合物。
よくわからんが、俺の今の状態が仮初なのだとすると……真価というのを見つけてやればいいわけだ。
ふっ、簡単な話よ……。
「俺の真価を見抜けない者などいるはずが……」
俺、見えないじゃん。
話しかけれないじゃん。
救われないじゃん。
「……うわぁぁぁぁぁぁぁーー!」
必要工程その一。
内に秘める強さではなく、自分磨きで強さを得よう!
現在ここです。
もう500話超えちゃったし自由にやろうぜ、敵な気分で虎子と竜子との絡みを多くしてみました。
敵の親玉?
倒したみたいですね。うん。
……え? 続きますよ。当然です。