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第503話殺しと思い

ネーミングセンスのなさに絶望したんだぜ!

生きている感じのしない空間に居心地の悪い椅子。

これでもかというほどに悪循環を繰り返し出来上がったむしむしとした部屋の中で三人の男女が部屋の中央に集まって座っていた。


その様子は外からでは確認できず、窓一つない部屋の中で怪しげな密談……とでも表現できればいいのだが、それは御通夜のような雰囲気。


彼等の仲間が一人死んでしまっているのだから、当然である。

神だからといって喜怒哀楽の表現できないわけではない。しっかりと生きることを楽しんでいる神だっている。


けれども、彼等は少し違った。


ママ、自らの母親を名乗る者とともに戦っていた。

大規模な夫婦喧嘩みたいなものだった。兎に角、字だけで表現するならば。


厳密に違うのだが、彼等には関係ない。

既に仲間が一人殺されているのだから。


『……っ、ふざけんな……。ふざけんなよ!!』

『父親だか何だか知らないけどさ、やりすぎなんだよ……』


死体はまもなくして消えてしまったのでチェリー彼等の記憶の中だけの存在になった。

だからこそ、恨みも強くなる。


『次会ったら、ぶっ殺して――』

「嫌だな。殺されるの」

『――や……。な、な、なぁ!?』


背後に二人の子供を連れ、立っている黒を基調とした服を着た男。

見覚えのある顔に不幸を告げるピエロでもしないだろう悪魔のような笑み。


この瞬間、完全に場を支配していたのはこの男、海弟だった。





はっはっは、この登場いいな!

見てみろよジョニー、この神たちのぽかーんとした顔を。


これもそれも犬死ちゃんのおかげだ。

犬死ちゃんは神様を探すレーダー代わりになる能力がある、らしい。だからこそこの三人を見つけることが出来た。


さっきは奇襲を食らったから奇襲し返してやるのだ。

ママとやらはその後だ。


『クッ、テメェ!!』

「おっと、今の俺は本気だ。お前達で勝てるか?」


自らの得物に触れる。

それと同時に殺気を放つ。久しぶりの本気に自分自身も圧倒されながらうまく力を調節していく。


「ま、ウォーミングアップぐらいにはなるか。掛かって来い」

『……ぐ、ぐ……』


各自、自らの得物を抜く三人。

そこまでは良かったのだが、そこから動かない。


数分経ったところでわざと隙を見せる。


その瞬間、周囲が見えていなかったのか俺へ目掛け三人同時に飛び掛ってくる。

当然、お互いにぶつかり弾き飛ばされる。


「……怖気づいてたのか。クハハハハハ、表に踏み潰されろ!」


後ろで黙ってみている犬死ちゃんとセリーを他所に虐殺が始まる。

神だというのにモヤシみたいに簡単に刈り取れてしまう。


もう片手で十分。


戦いにすらならない。ウォーミングアップにもならないぞコラ。


「犬死ちゃん、次行くぞ。場所は?」

「……う、後味悪いなぁ。裏の世界の人……どんどん死んでるんだよね……」

「まだ死んでないだろ。コイツらが管理していた世界が一度傾いた時、その時。世界が崩れるのに巻き込まれその世界の住人は死ぬ。それだけだ」


だから猶予(ゆうよ)はある。


表にいる父親。

俺のことだが、俺には特別な力はない。


だが、裏にいる母親。

彼なのか彼女なのか、彼だったら気持ち悪い。


母親に特別な力があるかどうかといえば、たぶんない……ってのが俺の予想だ。


しかし、俺が表の世界に思入(おもい)れがあるように、ママにも裏の世界に思入れがあるはずだ。

つまり、裏の世界の住人が危機に晒されているのなら……本体が俺たちの前に現れるだろうということが予想できる。


だからこそ、俺たちは隠れずに暴れる。


この場で一番守っておかなきゃいけないのはセリーだ。

セリーが死ねばこの世界が崩壊する、つまりは逃げなきゃアウトな状況が出来てしまうわけだ。


で、だ。

別に俺はそれでもいい。虎子と竜子を連れて何処か別の場所に逃げればいいのだしな。


しかし、それでは解決にならない。


俺はここ以外の裏の世界を知らない。

つまりは裏の世界でママと対峙することが出来ないわけだ。


俺たちが表の世界に逃げ帰ったのでは、きっと表の世界にママ達、軍団は表の世界に攻め込んでくるだろう。


こうなってしまってはこちらが不利だ。

圧倒的に不利。


俺も表の世界をすべて把握しているわけではない。

どっか変なところから侵略活動されてはたまらんからな。


「……何か、いやだなぁ」

「俺もだ。さ、次いくぞ」

「なんかさっぱり!? いや、あっさりしすぎだよ!! 人が、死ぬなんて……」

「当たり前のことだな。うん、次だ」


何だかわからないが生気のない瞳が白くにごり始めたような……。

おい、気を確かに持て!!


肩を揺するも戻ってこないのでしばらく他っておくことにする。

ま、ここに留まるのも一つの手だ。


目立つという意味では理にかなった行動だからな。


しかし、俺は動いていきたい。

相手が慌ててくれないとこちらとしても作戦失敗なのだよ。


「セリー、お前も人が死ぬのって、嫌か?」

「パパは?」

「俺は嫌だ。けど、今の行動には戸惑いがないぞ。もう意味がわからなくなってきたからな」

「……セリーは、怖くない、かな? 何を感じぃているのかわからないの」

「ま、哲学など語り合う仲じゃあないからな。答えなんぞに意味はない。誰かが納得する答えなど俺たちに不要だ」


自分のしたいことをしたいようにして、怒られて。

でもやめられない、ってのを何て言おうか。


「俺たちに言葉は不要ッ!! か?」

「ほぉんだいすら蹴り飛ばした感じだねー」


次行くぞ! 犬死ちゃん起きろ。

もう我慢の限界だ。





……これで十三人目。

俺はいつの間に世界を滅ぼす魔王様になったのだろうか。


何だよこの数字。

何でママは出てこないんだよ!!


「次だ。犬死ちゃん」

「お父さん……誰を殺しているのか知ってる?」

「言うな。言ったら、俺は耐えられなくなる」


顔を背けて言う。

罪悪感だってあるさ。殴ると殺すは違うし蹴ると斬るは違う。


罪の重さじゃない。


明確な答えなど俺だって知らないが、同じだとは言えないだろう?


だから違うんだ。


「……さて、そろそろ来てくれると嬉しいんだがな」

「……パパ、思ったんだぁけど」


セリーが小さな声で言う。


「ママが追いついてくる前にセリーたちが逃げてる、みぃたいになってないかな?」


……はっはっは、何をおっしゃいますやら。

確かに、俺達はスムーズに動いているが……敵の親玉だぞ?


素早く動いて対処できない、なんてことあるか?

あるはずがないだろう。


「……でも、まあ。一応待ってみるか」


やっぱり、俺には異世界の方が似合っているかもなぁ。

都会は何か早すぎる。


ペースが、雰囲気が。


……こんな世界や、俺まったく知らない世界を……潰してきたんだよなぁ。


ま、この戦いが早く終わったら……俺が何とかしてやるよ。


俺に任せておけ。


海弟の本気……最近は本人の意思で鍛えていますからね。

だからというわけではないですが、何か強くみえてしまいますね。


しかし、これだけは言っておきます。


全部奇襲、不意打ちによる勝利です。

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