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第502話『男はほら吹きなのさ』by海弟

ちなみに、毎話ごとに一日か二日ぐらいの日が開いていると考えてください。

開いていないのもあるので見極めが肝心――すみません、本文に入れておけと言わないで。

「うぎゃあ!!」

「うひゃあ!!」


うるさいぞお前等! キビキビ走れ!


そして――


「キビキビ逃げろ!! 外は敵だらけだ!」


これは、まあ……とある休日とでも言おうか。

俺は犬死ちゃんとセリーを連れ出掛けていた。もちろん、目的などない。


ただ暇だったから散歩でもしに行くか、と軽い気持ちで外出した。


……しかし!!


何だこの状況。何で敵に追われてるんだよ。

隣の町にいるはずなんだろ、あの軍団! なんでこの町にもう到着してるんだよ!!


……いや、徒歩で一時間以内に着くか。うん。


こうなってくると俺達はつねに危険に晒されているといってもいい。


とりあえず追っ手を撒いて逃げる、なんて出来そうもないので追っ手も少ない今のうちに戦い隙を見て逃げるとしよう。


「二人とも!」

「お父さん!」

「パパ!」

「おう、戦う――」

「犠牲になってくれるんだね!」

「せ、セリーもがんばぁって逃げますよー」


……え? あ、待て。


全員で戦うんだろ? ここは。


呆然としている間に逃げていってしまう犬死ちゃんとセリー。

ふざけんなよおい。


「クッ、やってやらぁ!!」


敵の数は……四人か。

実力はどれほどかわからないが、兎に角勝たなくてはいけない。


「ふっ、俺の剣の前に(くだ)るか?」

『ほざけッ!!』


敵の一人が真正面から突っ込んでくる。

この戦い……死亡フラグを立てたほうが負けるッ!!


ならば勝ちフラグ、逆転フラグを俺は立てなければ――


『うおりゃあ!!』


突き出された剣先が俺の頬を掠める。


……フラグとかじゃない。

うん、実力と実力のぶつかりあい。頭じゃなく体で戦わないと負ける。


展開は一つだけじゃないんだ。


「やるな。風よ!」


剣の腹に風を当てて十分なスピードを得た得物を斜めにし鋭い一撃を相手へ向かい放つ。

それを見事に受け止める敵の一人。


『こちらは四人いるんだぞ! みんな、いけ!!』


その掛け声とともに襲い掛かってくる三人。

さすがに分が悪い……。


飛びのき攻撃をすべて避けると剣を仕舞う。


「勝てそうにないので逃げるッ!!」

『あ、こら、待て!!』

「テメェみたいな主人公面した奴はいつか倒すッ!! じゃあな!!」


敵に背を向け逃げ出す俺。

勝てない相手に無謀と無茶で勝ち続けることなんて現実じゃあ出来ないんだぜ?

ああいうのは一回きりだからカッコいいんだ。


「だから俺はその一回を大切にする、チェリーボーイ」


逃げ足に定評のある俺だ。

本気を出せば四人だろうと三人だろうと二人だろうと、少なくなっていっている気がするが逃げ切れるッ!!


街の角などを利用し逃げていく俺。

それを追ってくる四人。


『チェリー! 先回りだ!』

『がってん! 飛んで先回りしてきまぅす!!』


クッ、チェリーだって!?

もう俺は怒ったぞ。


「天と地が生まれた頃より誰しも平等であると決まっているのだ。それがチェリーだろうとボーイだろうとな!!」


魔力を使い切る勢いで水の塊を乱射していく俺。

周りの被害のほうが多いがあのチェリーとかいう女には確実にダメージを与えている。


「さあ受けるが良い。世の不平等を秘めた一撃ッ!! 神秘(ピュア)領域(ゾーン)()り!!」


俺達の純潔はいったいいつ、誰にささげられるのだろう。


背後の爆発に目も向けず残りの三人のほうに近づいていく。

悪の根源チェリーは滅ぼした。あとは残党退治といこうか。


『よくもチェリーを!! この悪魔め!!』

「俺が悪魔なのならお前達は神だな。うん」


俺はあくまで一般人。ちょっと悪い一般人が悪魔と呼ばれるようになるのなら敵対するお前等は神か、もしくは天使だ。


『よくわかったな! 異世界より参上したオレ達は神、あくまで……母さんの味方だがなァ!!』

「……はっはっは、そうか! だが、父親の威厳を見せて――」


……何だって?


異世界より参上したオレ達は神?

つまり、あの軍隊は神に関係するすべての人間……異世界より寄せ集めた強い奴……ではないというのか。


これじゃあ用意に殺すことも……あ。


後ろを向く。

チェリーの残骸は既に消えていた。


「……一つの世界を滅ぼしてしまった、のか」

『今更遅い! すべての人の痛みを知れ!!』


男の剣を体を逸らすことで避け、その反動を使い重い一撃を放つ。


それを剣で防ぐがよろける男。


「まったく整理できねぇなぁ。俺の敵はママで。ママは俺の子供を仲間にしている、か」


その子供は神様で。

一つの世界を管理しているわけだから、その管理者が死んでしまった世界で一度均衡(きんこう)が崩れるようなことがあればその世界は再起は出来なくなる。


つまりは、その世界は死へゆっくりと直進しているわけである。

これはもう誰にも止めることが出来ない。


「……お、お前等! 管理者なのに他の世界にいていいのかよ!!」


こちらが若干有利な鍔迫り合いをしつつ聞いてみる。


『困っている人がいるのなら、助けるのが通りだろう! それが例え誰だろうと!』


現在俺は困っています。

助けて!


「ま、通りに反するとかで助けてくれないんだろうけどさー。うん」


相手の体を弾くとポケットから鏡を取り出す。

後ろからジリジリと近づいてきていた二人、気づかないと思うか?


その二人には見えないようにその手鏡を胸元へ当てる。


『させんッ!』

「残念だが、遅い」


既に転移は出来る状態だ。

ここに核爆弾が落ちてこようと別世界に俺が逃れてしまえばそれまで。


「まあ、俺は逃げるよ、ってこと」

『クッ、チェリーの(かたき)ィィィィィィ!!!』


そういうのはコンクリートとか車とか電信柱がない世界でやりたいものだね。





「……大変だったね……。犬死ちゃん達から聞いたよ」

「おう、青空。楽しいことになってきたな」


広いリビングにあるソファ。

そこにはテレビはなく、それ専用の部屋があるわけだが……この部屋の静けさは好きだ。


現在この部屋にいるのは青空と俺だけ。

理由は簡単で俺が青空を誘ったから。


「どうするの? その四人だけでも苦戦した、でしょ?」

「馬鹿野郎。怪我もなく快勝――」

「嘘は吐かないで!!」


……うん。


頬に傷があっちゃあ嘘って丸分かりだな。

それに散歩なのに剣を持っていた、ってのも青空は気がかりになっているだろう。

俺も予想していた事態なのだということは既に青空はわかっているはず。


だからこそ本題。


「虎子竜子に伝えておいてくれ。死ぬな、って」

「……それって、どういう意味なのかな?」

「そのままだ」


口元に笑みを作り言う。

簡単な話だ。


自分の身は自分で守れと。

それと青空を守ってくれ、ってこと。


まあ、二つの意味がある。


「どこかに、ううん。敵の親玉のところに一人で行くつもりなんでしょ?」

「……はっはっは、残念ながらハズレだ」


俺の言い方が気になった様子の青空だが、話を進めていく。


「ここも戦いが進めば安全じゃあなくなってくる。だから隠れ家探しに行くんだよ」


一理ある俺の言葉に黙ってしまう青空。

その様子を見て、話を切り上げる俺。自分から誘っておいてアレだな。


まあ、いいか。


「じゃ、そういうわけだ。世界平和のためにいっちょ頑張ってきます」

「え、海弟! ホントは何処に行くの!!」


聞こえなーい。答えなーい。


ま、元々青空さんの言葉など聞く気はないんだよ。

やろうと思ったときにやらなきゃダメだよ。やっぱり。


「点と点は繋がらないし俺の知る情報すら完璧じゃあない」


……知ったところでどうしょうもないことだ。

だってアレだろ?


今回、どう考えたってしょぼい。


ただの夫婦喧嘩じゃないか。

それに子供を巻き込んだママの負け。俺の勝ち。


ならもう後はやることは一つ。

ママを真っ二つ。


とりあえずチェリーだけは倒しておく、それが海弟クオリティ。


……学校に顔を出さないからアレなのだけれども。

海弟は一応高校三年生。え、どうやって進級したんだって?


気合いです。


……高校三年生、かぁ。

もう海弟のせいで三人とも高校でたら王に王妃に騎士になること決定ですね。

はっはっは、世界は今日も平和です。

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