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第492話家族と集い

期待も希望も奇跡も手にし。

ニヤニヤ笑うが己の宿命ッ!

楽しみなくちゃあ面白くない。絶望なくちゃあ歯ごたえがない。


手にした得物が咆えるぜオイ。


……このごろ大きな敵などいないので、ね。

ママさん早く来てよ! いいや、海弟。裏の世界に早く行けよ!


やーまん(山ちゃん)の案内により森の中をすいすい進んでいく俺達。

移動の間に聞いたのだが、そのケイヤの家とやらに神様はいるらしい。何か聞いたことのある情報だぞ。


……。


まったく、セリーとは何だったのか。


そしてたどり着いた小さな小屋。

吹けば飛んでしまうようなところ、ボロっちい。


言葉を心の中でいくつか重ねていると、隣でセリーが感嘆の声をあげる。


「セリーは、貧乏ぐぅらしーやってみたいと思ってたのー」

「エルと同じこと言ってるね。神ってのは……似てるもんなのかね?」


俺のほうを見ていうな。


茶色の瞳がころころとせわしなく動く中、俺はただいま上昇中の心拍数を落ち着けるために深呼吸する。

あの家の中に俺の娘がいるわけだ。もちろん、犬死ちゃんもいるのかも知れないが、初対面の娘に会うとなるとやはり緊張する。


いやぁ、何て名乗ればいいのやら。

パパですよ? それとも、オヤジと呼ぶがいい?


うーむ、どちらにも優秀賞をあたえたい。

ちなみに、おはよう、こんにちわ、こんばんわ。これらは認めん。


日本の挨拶は海外に出た時『コンニチワ、ボク、カイデ!』とカタコトになるべきなのだ。

アレだよ、ここは異世界だからもっとぶっ飛んでないといけないわけだよ。四次元も五次元も突き抜けていかないと。


「☆#%£∮、бЮ、カイデ!」

「どぉこの言葉ー?」


突き抜けたところにある……最先端の技術だ!


……答えになってないな。


「まあいい。何か逆に落ち着いてきた。行くぞ、俺達の戦いはここからだッ!!」


俺は叫ぶと扉を開く……と、同時に身を引く。


何だ、このにおいは!?


家の中から(にお)ってくる異臭に顔をしかめつつ部屋の中に顔を突っ込む。


…………。


外へ出る。

扉を閉める。


……俺は何も見なかった。俺は何も見なかった。俺は何も見なかった。俺は何も見なかった。俺は何も見なかった。俺は何も見なかった。俺は何も――


「ぱ、パパ? 顔色がわぁるいよー? 何があったの?」


……ふっ、そうか。


守るべきもの。たった一つ、それだけは守らなきゃいけないもの。

そう、(オトコ)にゃ必ず一つ、それがある。


「セリー、やーまん」

「……死ね」

「ああ、死んでくる」


やーまん(山ちゃん)に言われずとも死ぬさ!

二人とも、俺が……もしも生きて帰ってきたら。


盛大なパーティーを……ふっ。


家の扉を開く。

その中から漂ってくる異臭、とともにうめき声。


俺は……俺はッ!!


「ウオォォォォッ!!」


クッ、何だコレは!?


「ウギャァァァァッ!!」





……俺の命もここまでか……と、思われた。

しかし、俺は……生きている。


下着姿で。


……と、この口調じゃ説明できないな。

この部屋の中に充満していた臭いの正体。それはまっちゃんこと松脂(まつやに)

そして天井からぶら下がっている犬死ちゃん。


元々生気のない瞳が霞んでいた。何か危険な状態だった。


俺はここで決意し、犬死ちゃん救出のために部屋の中へ――しかしッ!!


床に松脂の詰まったビンが転がっているらしく、それを踏んで割ってしまい俺は動けなくなる。

そのままバランスを崩し床へ背中を打ちつけ……服に松脂がつき動けなくなってしまった。


……そして、上下服を脱いで脱出。

で、今に至るわけである。


「犬死ちゃーん。生きてるかー?」

「……う、うう。その声は……お父さん? ううん、天使の人がお迎えに――」

「んな清らかなものがお前を迎えに来るかッ!」

「お、お父さん……?」

「おう」

「……裸」

「……おう」


言わなくていいことと悪いことがある。

これは後者であると俺は判断する。


下着着てるしねッ!!


「松脂って取る方法知らないんだよな。やっぱり服を着るしか……すると、アレだな天井に黒ローブなんてあったら怪しすぎるな」

「は、はやくー」


両手をぶんぶんと振っている犬死ちゃん。

背中と天井がどうやったらくっつくんだろう、という思考へ誘導されつつも解決策を考える。


……ふむ、やはり現実的に服を切る……ってのが一番か。俺は脱げたからいいものの、奴は脱げそうにない。


「よし、切るぞ! 切っちゃうぞ?」

「わたしの判断はー!?」

「……GO!!」

「NOォォォォ!!」


ズババババッ


……届かない。

いや、届かないとかそういうレベルじゃない。


「鎌で防ぐな馬鹿。おい、馬鹿」

「馬鹿って二度言ったー! っていうかお気に入りだから切らないで!」

「……後で服ぐらい買いに行ってやるよ。だから降りて来い」

「う、うー……。で、でも……うー」


悩み中の犬死ちゃん。

このまま放置しておいても問題ないような気がする。


いや、影流達が助けられないじゃん! ダメじゃん!


クッ、お気に入りとやらを傷つけないように救出する方法。


「二人とも、中に入ってきてくれッ!!」


ぶつくさ言いながら入ってくる二人。

俺の姿、犬死ちゃんの姿、臭い。この三つに壮大かつ壮絶、奇怪かつ奇妙な拒否反応を見せる。

だが逃がさん。


「い、犬死ちゃんさ。触っちゃダメなモンは触っちゃダメでしょーよ」

「ごめんなさーい。降ろしてー!」


やまーんと犬死ちゃんの会話。

セリーはというと、床に倒れていた。松脂の臭いが四方八方から来たら、耐えれない奴もやっぱりいるよな。


「さて、どうする?」

「切――」

「それはナシ」

「……」


フリーズしたぞ、おい。


俺たちが考え込むこと十数分。

後ろ、玄関(といっても簡素なもの)から声が聞こえてくる。


「おいおい、開けっ放しはないだろう。泥棒が来たらどうするんだ、この面子(メンツ)なら泥棒が可愛そうすぎるだろ」

「おみあげあるよー」


るんるん気分で帰って……気持ち悪げな表情の(矛盾)二人。

お、片方は町で会った……もう片方は。


「ったくどうなっているんだコレは……。って、海弟ぇ!?」

「ど、どもー。あはは」


何で下着姿なのか、とか聞かないでほしい。

俺のほうが謎である。


「え、エル。特別、特別に。神様パワーを許可するから、この惨状を何とかしてくれ」

「いいの?」

「例外は何事にもある、わけだが……」


これは酷すぎる、と言いたいのだろう。

半ば同情の眼差しを向けていると、俺の体が光始める。


「お、おおお。これは……ついに俺の最後の力が目覚める時が来たのかッ!!」


その光が収まると同時に床にあったはずの衣服がしっかりと身に纏っている状態へと変化していた。

張り付いていた犬死ちゃんも俺の隣に立っている。


「何だ今の!?」


俺の最後の力はどうなった。


「立ち話もアレだから、座って……といっても椅子が足りないな」

「増やそう」


『鏡』で今いる人数分椅子を増やす。


「……あ、あー。はい、うん。ありがとう」


何でこんなに冷めているんだコイツは。

……まあいい。


「家族会議をハジメヨウ」

「……か、」

「家族」

「会議!?」


俺、セリー、ケイヤの連れの少女、犬死ちゃんの順に声が上がる。


始まるよー。


始まったと思ったら今日の更新分が終わっていた。

な、何を(ry


長い(くだり)はキラいです。

面白いものは面白いんですけどね!


さて、次回は座って話しているだけの話……にするつもりはないぜひゃっはー。


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