第489話石ころと火の玉
さて、アレですね。
しっかりとした土台に今回は乗っているので書きやすいです。
うん、残りの登場人物も行くぜー!
もしかしたら、だが……王都よりも豊かじゃないか?
いや、豊かというよりも活気がある。
人々の声がところどころにあり……会話がいたるところから聞こえてくる。
人口密度的に言えば……すっげー、ってレベルだと思う。同じ人工的、でもこっちの方が数万倍良いところに思えてくる。
俺もここに住もうかな。
……などと考えているとセリーが俺の服の端を握り、引っ張る。
「……どうした?」
「犬死ちゃん、には……神様をさぁがす力があるんだよねー?」
「まあ、感覚的にわかるんだろうな。元々ある力かは知らないが」
首を傾けるセリー。
「だとしたぁら、一緒に可能性が高い」
「だろうな。二人一緒にいてくれたほうが手っ取り早いから良いだろ」
「いや、見つけぇててー、この世界の神様が王都へ向かってぇたらどうするのかなー、と」
……すれ違い?
馬鹿なッ!
そんな嘘みたいなホントのような。まあありえそうな話を信じるわけにはいかない!
ここまで来た俺の努力を考えろ! 座ってただけだ!
でもアレだよ。オケツが痛いんだよ!
本当にどうでもいいな。
「そういやアーネとか言うのは何処に言ったんだ? 町長の娘だっけか、町長の力を借りれば早く見つかりそうなんだが」
「馬車から降りたとたんに捕まってた」
ぶるりと肩を震わせるセリー。口調がまともで……かなり恐怖を感じたようだ。
……俺が最初に馬車から降りたわけだが、後ろは振り返っていないので見たのはセリーだけか。
なんだか惜しいことをしたような気分だ。
「しかし、これでアイツの協力はもらえないな」
「場所は聞いてぇるから大丈夫じゃないー?」
「ま、そうか。従者の人は宿を探しに行ったんだったか。いらん手間だと思うのだがな」
「?」
「娘の家に泊まる親、ってダメか?」
「オぅケー!」
☆
……森の、中。
こりゃあ……でかいな。慣れた奴じゃないと迷ってしまいそうだなぁ。
……うん。
「……うん」
「はーきっりと、迷ってまぁーす」
いやん、赤面ものだぜ☆
……さて、冷静になろう俺。
道に迷うなんてあるわけない。ありえるんだよコレが。
「セリー、地図!」
「……いらぁない、って言ったのはパパだよー」
き、記憶にないな。
っていうか地図を売りつけようとしていた商人が怪しすぎるんだよ!
何だよあのサングラス! 割ってやろうがオイ!
と、まあ割るのはこの森を抜けてからにしよう。
さすがに一度迷ったのだ、娘の住んでいる家を探すとか、それどころではない。
「この森、燃やしてくれようか」
「それは困るさね。川があるから山には飛び火しないだろうけどさ」
「じゃあ山も燃やしてやるから。墓地は二つな! ……って、誰だお前!」
「墓石二つじゃないと割に合ってないよ。というか、気配バリバリに出してたんだけどねぇ」
俺を馬鹿にしているのか!
ってセリーとそこの! 何で普通に挨拶してるんだ!
「だって、気づいてぇたよー?」
言葉に殺傷力があるのなら、いいや、俺の心が磨り減ると同時に体から血が吹き出るのなら。
トマトがグシャ、だぞ。
ここまで言葉を揃えておいて、この例えはなかったな……。
まあ良い。
「お前は何者だッ! えーと、うーん、茶髪ッ!」
茶色の髪の毛、茶色の瞳。
染め上げられたものではなく、地毛なのだろう……何ていうか本人の雰囲気とあっている。
そんな少女が俺たちの近くにいた。
何ていうか、平凡さが感じられない……というか、何かありそうな予感がする。
「いやぁ、暇だから散歩してたんだけどさ。迷ってる人がいたから助けてやろうか、とね」
「ほ、ほお。迷ってる? 俺が? 間違いじゃないのか、おっほっほ、おほゴホッ!」
「……付いてきなよ。あんた何だか可愛そうだ」
静かに俺は瞳を閉じた。
しかし、俺には見える。
俺をあざ笑うような視線の……茶髪がッ!
……仕方ないか。
「セリー、行くぞ」
「めぇずらしい。まあいいよー」
何が珍しいんだ?
と、聞こうと思ったのだが傷が深くなりそうなのでやめておく。
最近はっちゃけてないからなぁ。
はぁ、大人しい……大人らしいって。
俺に合ってないぜ。
やれやれ、と肩をすくめていると森の出口が見えてくる。
「さ、この先さ」
「おう、ありがとな。と、最後に聞きたい」
この森について詳しそうな少女。
今度この森に入る時のヒントになるように聞いておくのも良いだろう。
「"この森に住む神様の家"って知っているか?」
表情を硬くする少女。
しかし、俺の隣にいるセリーを見て柔らかくなっていく。
「さーね。こんだけ近いんだ、隣の子に聞いたほうがきっと早いよ」
「……それはどういう――」
「また、きっと会えるさ」
俺たちが来たのとは逆の方向、森の中心へ向かい走り始める少女。
……どういう意味なのだろうか。とかは考えない。
会えるというのなら期待して待ってみよう。
「セリー、お前場所がわかるんじゃないのか?」
「……い、いやぁ。バレたぁねー」
殴るぞ。
「……じゃあ、昼ご飯終わったらたらあーんなぁいするよ」
「一度迷う必要はあったのか!? おい、あったのかよ!」
かなり鈍足のセリーさんはすぐ捕まえられるスピードで俺に背を向けて走っていく。
……俺の視線に映るのはたくさんの石ころ。
ここが森だからなのだろうか、自然の跡というか石やら木やらがたくさん落ちている。
……ッ、コレは!
「いたっ!」
涙目で後ろを振り向くセリー。
石を投げろと木霊する! 俺の魂、この森に響いているぜ!
「はっはっは、避けるが良いッ!」
「女の子にむぅかってー! 外道ー!」
マシンガンの如く連射される石ころは喋っていては避けられねぇぜ!?
実際、数個の石がセリーの背中に当たっている。
さすがに本気で逃げ出すセリー。
はっはっは、甘い甘いぞッ!!
☆
『火の玉が俺へ向かい投げられる×100』
待ってほしい。
やめて! 俺の石ころは在庫切れなんだ!
セリーの両腕から連射される火の玉は俺へ的確へ向かって放たれ続けている。
正直、一発でも当たったら死ぬと思っている……。
「クッ、セリー! 俺のとっておきをやろう! SKだ!」
「SK?」
「ショートケーキ」
「……」
あれ、何で火の玉は止まらないのかな?
ねぇねぇ、何で!
町の入り口に差し掛かり、さすがに火の玉攻撃をやめるセリー。
はぁ、助かった。
……しかし、後半は股間を狙い投げつけられていた気がするんだが。
これは何か悪意があってのことなのだろうか?
「メシだ、メシ」
「従者の人はどぉこだろうねー」
昼からは一緒に行動できそうだし、宿も見つけているだろうからそこで昼食で良いか。
で、問題はセリーの言ったとおり従者の人は何処なのか! ということだ。
従者の人は自称男、他称不明なのでトイレにはいないと思う。
不明なのだから。
「……人探しはもうしたくないのだ……ん? 何だこの焦げた――」
「従者の人」
「おお、言われてみれば見える……セリー!!」
「ごぉめんなさーい」
従者の人ッ!? 大丈夫なの!?
まあ死んでいても俺的にはなんの損害もないわけだが。
「い、生きてます。い、行きましょう、昼食」
「あ、ああ。ゴキ並みの生命力だな」
従者の人に睨まれた。
勇「これを見なさいっ!」
海「……何だこれ。手紙? 俺に、じゃない。勇者宛てじゃないか」
勇「いいから読め」
海「……えーと、世界征服するので勇者様来てください、だって? ほお、行ってやれ」
勇「反応が薄すぎるんだよッ!!」
というところまで想像して自分は力尽きました。
この親子が揃ったらギャグしか生まれない……。何故なんだろうね。
というか誰から送られてきたんだろうね。
そして! 次からカウントダウン!
500話まで後10話になるのです。いやぁ、500話楽しみ!
では、明日の更新を待つが良い!




