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第482話食後と愚痴

流れとは、断ち切るためにある。

そう、読者さえも付いていけないスピードの斬ッ!

サッパリした後のご飯はうまい。

いや、和食に似ている味でおいしいのだ。なんとも奇妙なものである。


「ほう、とするとつまりアレか。帰るに帰れなくなった……ってアレか?」


目の前のおっさんが言う。あの元気な男の子の父親らしい。

この村の住人は周囲の草原やら森やらに住む動物を狩って生活をしている人がほとんどらしい。


野生児万歳。


さて、食事もそこそこにずっと父親の話を無視し続けていたので反応してあげよう。


「まあ、徒歩でも何とかなりますよ。一応」

「一週間は掛かるだろ、それでも」


ですねぇ、などと話していると従者の人が台所から顔を出す。


「食べ終わったら食器持ってきてくださいねー」


すごい適応能力だ。

俺も見習ってみよう。


「俺の食器は適当に回収しといてくれー」

「面倒なんですね、はい。了解しましたよ」


半ば呆れていた声が聞こえてきたが俺には関係ない。

いや、間接的にしか関係ない。なので問題ない。


「よし、わかった。明日近くの町に案内してやろう」

「おー、良ぃ人だねー」

「だな。うん、じゃあ食べ終わったし帰るか」


ハテナを浮かべるセリー。

おいおい、皿を見てみろ。食べ残しはないだろう?


うん、じゃあ帰るんだ。


「従者の人(名前不詳)も早くこい」

「発現内に|()(カッコ)を入れないでくださいッ! えぇ?」


何だか敬いの心がない声なのだが気にしない。問題ない。

だが殴る。


「り、理不尽な」

「運賃パンチ一回だ」


手鏡をポケットから取り出す。


「ああっ! なぁんでそんなの隠しとくかなー」

「そ、そうですよ。特殊魔法のこと、何で早く言ってくれないんですか!」


今思い出したからに決まっているだろう!

いやぁ、帰るために一生懸命頑張ってるとアレだよ。目の前にあるものさえ忘れてしまうものなんだよ。


「と、まあそんなわけで帰ります」

「ちょっと待ちなよ。あんたら、何でこの村に寄ったの?」

「……メシがうまかったぜ☆」


さて、食い逃げだ。あと一番風呂もちょうだいしたな、一応。


「我が名は軽犯罪者騎士(コソドロナイト)海弟ッ! 名乗ったからさらばっ!」


鏡に触れて逃げる。

そう、逃げる。俺の後に続くように鏡に触れるセリーと従者の人。


俺の魔法がギリギリ働いたようで二人も一緒に転移させる。

いやぁ、ど忘れって怖いね。





俺の部屋。

その鏡の前で俺は現在倒れている。


「う、ぐ……重い」

「セリーじゃないよ! セリーはおもぉくないッ!」


否定する前に退けッ! あと従者の人も!


腰を浮かせる二人を蹴って移動すると立ち上がる。

いや、最初からこうすれば速かったんだよね。うーん、何処かの誰かに何度か突っ込まれていた気もするが……気のせいだ。


「と、帰ってきたわけだが……どうする? ファンに会いに行くか? 今すぐ神探しを手伝いに行きたいし」

「セリーは買い物行きぃたいー。行ってもいいよね。パパ言ったもん!」


……あ、いや、そりゃあアレだよ。


顔を(そむ)ける。


「嘘なぁの!?」

「良いことを教えてやろう。お前はそのままで十分綺麗だ」

「ほぉんとー?」


顔を背ける。


「嘘なぁの!?」

「いや、待て。ここは優先順位ってのがあると思うんだ。俺は神探しに行きたい、お前は服を買いたい。優先すべきは?」

「女の意思」


そうか。

名言だな。


優先すべきは女の意思。


はっはっは、でもそれを俺が守るかどうかは別だもんな。


さて、セリー置いて神探しに行くか。

身支度身支度。


分裂後の杖は置いて、剣は持って……そうだな。

勇者に白の剣を今回は預けていこう。黒の剣はどうしようか。


「セリー、お前に貸すからな。無くすなよ」

「はぇ?」


手鏡をセリーに渡すといつの間にかいなくなっていた従者の人の後を追うように部屋から出て行く。

ここからセリーは自由だ。この城で自由に暮らすと良い、そう思うわけです。


さて、まずはファンに会いにいかなければいけない。

武道大会で優勝したことと、軽犯罪者騎士海弟様の武勇伝を伝えなければ。


このまま後世に語り継ぐと良い。





「ふぁ、ふぁ、ファーン」

「イラッとしますね」


すみません。

わざと。


執務室、そこでせっせと仕事をしているファンに今回のことだけを伝える。

武勇伝は却下された。いや、軽犯罪者海弟の『け』の部分で「言わなくていいです」と言われてしまった。


鋭すぎるぞオイ。


「しかし、まあ……影流様の面子は保たれました。雑務は溜まっていますがあなたに任せるとやはりとんでもないことになりますし、こちらで処理します」

「それもそうだ、頼んだぞ」


俺から頼むことでもないのだが一応言っておく。

ふぅ、と溜息を吐いているファンを見て今更だが思う。


「……なぁ、ファン」

「な、何ですか?」


……言うべきか、言わざるべきか。


決意、俺は決意をする。


「ファン、お前少し太った?」

「……献立表を甘い物で埋め尽くした犯人さんが何をおっしゃっているのですか? えぇ? 最近は座って仕事をするのが多いというのに――」


グチグチグチグチ……


永遠に続きそうな愚痴が俺の耳に届いてくる。

そういや献立表を操作したのは俺なのだが……うん、雑務を増やしたのも俺だ。

なるほど、ファンが太った原因は俺か。その俺はこっちの世界で甘い物を一口も食べていないわけですがね!

幸せじゃないかファン! 甘い物は最高じゃないか!


まあ最強はより刺激的な辛いに譲るが最高は譲れない。

何なら俺の名前を海弟から砂糖、もしくはシュガーに変えたって良い。


いいなシュガー。俺の名はシュガーだ。


「俺の名はシュガーだ!」

「うるさいですッ! それよりも――」


……まだ愚痴は続きそうだなぁ。

糖分は足りてるんだろうけど……カルシウムか?


引き続き海弟でやっていきます。砂糖でもシュガーでもないです。

ただのオチです。


……あれ、コメディー……化?

いや、驚くようなことじゃないか。いつものことです。

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