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第479話邪魔と合体

一+一が必ずしも二になんたらかんたら。


でも一と一を足したら二になるのが正しいんですよね。

箱の中身。これだけ大きな箱なのだから、中に入っているものも大きいのだろうと予想して俺は箱の蓋を開ける。


――え、杖?

いや、予想外なんだけど。


一人で沈黙していると後ろから声が聞こえてくる。


「あの、明日の予定――」

「知るか。それよりもコレだ」


箱の中に入っている杖を片手で握るとそれを持って箱の外へ出る。

装飾品の少ない簡素な杖なのだが、何かを感じる。その何かが俺へ何かを伝えようとしている。

それが明確にわからないからこそ、じれったい。


「一応魔法道具みたいだから……師匠に何か聞けばわかるか。ああ、あの人何処にいるんだろうな」


影流にバニーの格好で旅に出たと聞いているが、その後がわからない。

まだ国へ帰ってきていないようだったし、つまりは放浪中なのだろう。俺の師匠はバニーで何をしているんだか。

いや、その格好をしてくれと頼みに行った俺が言うことじゃないな! うん。半ば自分を選べよ、ってオーラ出されて選んだけど。


まあ今はどうでもいいさ。

この杖を副賞にしたのだからベレテナ王に聞けば詳細がわかるはずだ。


「セリー、王室へ乗り込むぞ」

「おもぉーしろそー!」

「全然面白くないですって! それよりも明日帰国するわけですし、問題を起こさないでくださいよ!」


知識とは得て初めて価値になる。つまり知らぬなら、知ってしまえよチェリーボーイなのだよ!

はっはっは、チェリーボーイ知りに行ってくるぜ!


……悲しいな。うん。





王室。その入り口。つまりは廊下。


まあまとめるのが面倒だからこの程度で良い。

人通りの少ないそこにいる俺とセリーに従者の人。相変わらず名前不詳。


「作戦会議を開始する。特攻、拷問、帰還。質問のある者はいるか!」

「把握しましぃたー」

「いやいや、質問だらけというか、今すぐ帰還しましょうよ! 前の二ついりませんって!」


はっはっは、メインディッシュを残すなんて何てお馬鹿な選択をするんだ従者の人。

勢いに乗ってしまえば罪など気にならなくなるさ。


せーの、えーい。


俺とセリーで扉に向かいタックルする――と同時に扉が開き中から出てきた人にぶつかる。


「うぇあー!?」

「なんっ」

「ぐっ」


硬い胸板(むないた)のおかげで倒れずに済んだ……よかったよかった。

タックルしてしまった人物を見る。男なのはわか――


ああ、そうだね。王室から出てくる硬い胸板の男なんて一人だよね。うん。

少なくともこの国では特定が(ラク)。圧倒的に。


「あー、何と言いますか――」


数歩後ずさる。


犠牲になれセリー、って俺より後ろになんでお前がいるんだよ!?


さすがに他国の王にタックルが不味いことぐらい俺はわかる。

拷問するより不味い。


……同じレベルかな?


「これは、奇抜な挨拶だ」

「は、はははは。き、今日の試合の反省会でもどうだろう! な、なぁ?」

「……ふむ、いいでしょう。夕食の時間ですし、一緒にどうです?」


あれ、心なしか言葉遣いが丁寧なような……。

怒ってる? 怒ってるのコレ?


うわぁ、夕食に付いていったらどうなるんだろう。

毒入りスープは定番だから……うーん、死を覚悟しようか。


「で、では。うん、よろしく」


案内してくれるらしく、王様自ら俺を死地へと迎えてくれる。


とりあえず墓石は一番高いので頼むな。


後ろにいるはずのセリーと従者の人へと親指を突きたてた右手を見せる。

コレが覚悟を決めた男だ。





普通においしいです!

何この料理。初めて見た! そういやこっちの料理のことあんまり知らないんだよな。

アルコールキツいってのは知ってるが。


まあ運動のあとにアルコールってのもイヤだもんな。

スポーツドリンクだよやっぱり、ってことで果実ジュース。スポーツドリンクは言ってみただけ。


運ばれてくる料理を胃の中に収めつつ、本当に反省会を始めたベレテナ王の話を聞く。

腹も良い具合に膨れたころ、ベレテナ王がそれを見計らってか俺の戦闘の話について踏み込んでくる。


「今日の戦いでは、武器に頼っているように見えましたが――」

「うっさい。俺の実力だ」


同じ釜のメシを食った中なので敬語はやめです。いぇい。


「……はぁ、では。オレも敬語はやめだ」

「おう、自然体で行こうぜ」

「この国の王はオレだ」

「知るか」


さて、食事を奢ってもらった恩もあるので何でも質問に答えますよー。


何かいつの間にかセリーと従者の人も食事に加わっていたが気にしない。


「……白の剣と黒の剣。強力な力を秘めた武器、それに頼った戦いにオレは見えたのだが?」

「残念ながら、まったく違うな。時に剣は盾になる」


俺は、黒の剣を使うことで守られたのか? 答えはNO!

俺の意思は固まっている。


それは剣を頼っているんじゃないか? と言われても揺るがない。

一度、他人の力に頼って立っていた俺だからこそ、二度目はない。


「んじゃあ俺からも、一つ質問」

「何だろう?」


反省会の中に私情は持ち込まない。ゆえに杖のことは一度仕舞おう。

俺の質問は最後の攻撃。同士討ちと判断されたそれだ。


「最後のアレ、結局はどっちが勝ってたと思う?」

「殺傷面では、オレだ」


即答。まるで答えを用意していたかのようだ。

実際そうなんだろう。自分に思い込ませている。大人なのに情けないぜ。

まあ、大人だってカサブタは出来る。成長できる。


「じゃあ赤モジャ、エルフのことな? アイツの攻撃に殺傷性はなかったか?」

「……最後、あの攻撃には魔力が(こも)っていた」


そう、正解。

治癒に普段向けられている魔力が体外に向けられていた。


たぶん、アレは特殊魔法。

戦闘観察だけしてると暇なんだが、こうやって語れるのは良いな。


「結局は?」

「……負けていたかも、知れないな」

「しっかり訓練に励むが良い」


俺も最近は素振りとかやってるぞ。

もう何にも頼らない、いいや。何かを犠牲にして何かを得るのはイヤだからな。


「ごちそうさま。あーんど、本当に最後の質問」


食事は終わり、なので私情オーケーなわけですよ。


床に置いていた杖を拾うとティガレへ見せる。


「コレ、何?」

「……は?」





うぎゃい。

説明長い、お月様が今日も綺麗じゃないか。


ベッドに体を預けて杖を見る。

あの鉄の箱の中には本当に杖しか入っていなかったようで、この杖の力についてもティガレに説明されただけの能力しかないようだった。


剣士ばかりが参加するこの大会の賞品を杖にするとかありえないぞ。


「ま、まあ良い。それよりも、振ると直線状に衝撃波? 剣向きすぎるだろ、この能力」


しかも妙に長いから振りにくいし。

誰だよ、こんなの作ったの。


「セリーにてぇーあんありますけど?」

「却下」

「はぁーい」


この杖は倉庫に仕舞っておくかな。


倉庫用の鏡に入れようと取り出した鏡を見て少し考える。


「俺の鏡には錬金能力……まあ、物の形を変えてしまう能力があったはずだ」

「そー、きぃきましたー。それ使って――」

「剣に衝撃波の能力を付けれないか、だな」


良い提案だ。

白の剣を取り出し思い出す。


「これ、たまに形崩すとヤバいこと起きるんだよな」


表現できないが、ヤバい。

すると黒の剣も何かしら嫌な予感を漂わせているのが見えてくる。


無難に発光剣(マイブラザー)を取り出すと鏡の中に放り込む。もちろん中に何も入っていない鏡だ。普段は転移用。


「次に杖を放り込みます」


この杖、使えても不意打ちぐらいにしか使えないだろうなぁ、などと考えつつ、鏡に入れる最中に持ち運ぶの面倒だと思い知らされた。

本当に使えないな、この杖。


鏡に材料がどちらも入ると想像内で材料をいじくっていく。

刃の部分は……こうだな。木製の部分を圧縮、形を整えて……こんな感じか。で、金具も少し形を変えて……よし、ちょうど良い。


すべてを組み合わせ終わると三十分が経過していた。お月様も傾き始めているぜ。


「終わぁりましたかー?」

「ああ、お披露目は明日、ってことで寝るぞ!」


眠い!


マイブラザーシェイクッ!


はい、たぶん突っ込まれないだろうとこなので自分が突っ込みます。

たぶん苦笑いしか出来ないでしょうが許してください。自分が完全に悪いです。


さて、ただ光るだけの剣と振りにくい衝撃波を生み出す杖。

くっつくとどうなるんでしょうねー。

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