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第478話優勝と副賞

勝つか負けるかが重要なんじゃない。

そこに立っていられるかが問題なんだ。

よく考えればわかることだ。

大体、数も少なくなってきた今、誰を狙うかなんて簡単。


一番面倒な相手、それか一番弱い相手だ。

つまり俺の狙う相手は一人、いや二人。


「そこの一位、二位ッ! 覚悟しろッ!!」


死闘を繰り広げている(?)二人の後ろから俺が強襲し、一人目を撃破する。

二位のほうはあっけない最後だったな……(ラック)を上げろ。


さて、あとは一位だけだ。

かなり疲労しているのがわかる、それゆえに手加減してやろうかなぁ、などと考えていると――


「クッ、卑怯だぞッ!!」


などという罵声が一位さんから飛んできた。

なぁに、よくあることだよ。俺の中では。


白の剣と黒の剣を鏡の中に仕舞うと発光剣(マイソード)を取り出す。

この武器の種類の豊富さが俺の特徴の一つでもある。まあ剣から剣に変えることなんてほとんどないけれども。


浅く広くをモットーにしている俺としては、適当に使えれば良いわけである。

剣だけが武器じゃねぇッ!


さて、手加減して戦ってやろう。


「行くぞッ!」

「グッ、こ、こいッ!」


二位を疲労していたとはいえ一撃で倒した実力、それにゼッカス王女を倒したのを見ていたのか若干後ろへ下がりつつも踏ん張る一位。

努力するのは良いことだ。


「でも、努力じゃあ努力を上回れないッ!」


疲労している手首へと狙いをつけ剣の先端で突く。

ふらつく足元でのふらりとした避け方。見切ることは簡単で追撃をすぐに放つ。


「お、オレは傭兵の中でも天才と――」

「知るかァァァァッ!! 水よッ!」

「ぬわぁっ!」


不意打ち、それを見事に避ける天才野郎。


傭兵と言っていたが、騎士の俺より月給低いぜ?


はっはっは、勝敗など決まったも同然、あとは斬って斬って斬りまくるだけだ。


殴りかかるような気楽さの一撃を複数与えていくこと数分、一位の持った剣が曲がる。

何ということでしょうね。


「な、何だと……」

「俺の剣は刃毀(はこぼ)れ一つないぜ?」


何たってあのアインと俺の師匠、ディティが一緒に作った(手抜き)作品だからな!

相手への突き、そこで俺の体が硬直し一位に退場命令が出される。


……ふっ、俺の勝ちだ。


いや、残り俺を含め三人。まだ気を抜いてはいけない。

勝ちを宣言できるのも残り二人を倒した後……さて、影流の代わりにこの大会に出ているんだ、優勝ぐらいしてやらないとな。


チラリとベレテナ王とエルフの使いのほうを向く。

こちらは戦いが長引きそうである。お互いの武器を用いて一撃に力を込めている。


つまりは避けなど考えていない戦い。エルフの方の切り傷が目立つが、息遣いの荒さではベレテナ王の方が激しく、どちらも強者であることがわかる。


いやぁ、潰しあってくれるってありがたいね。


よっこらしょ、と場内の壁へ背中を合わせて座る。

さて、観戦といきますか。特等席だぜー。





魔界より取り寄せた戦鋼(いくさはがね)を使い出来上がった剣を握るベレテナ王。

ギチギチという音が剣の柄を握る握力の強さを表している。

第一にも第二でも王ではなく、剣士としてこの場に立っているベレテナ王、ティガレは思考をすべて中断させると相手の動きを睨みつけるように観察する。


――勝負という次元ではない。


闘士(とうし)達だけが感じる何かしらの雰囲気に圧倒され、出てきた思考を一瞬で捨てると再び相手を睨む。

一方、エルフの使者こと赤モジャは両手に武器を持っていない。あえて言うのなら、その拳、その脚が武器。


エルフというと魔法、魔力が強い印象がある……が、しかし。

彼の持つ魔力は人並みで、エルフの持っているそれとは別なのである。いわゆる異端児。

神様は能力(パラメーター)の割り振りでも間違えたのか、彼は魔法ではなく武術が得意だった。だからこそ、今ここに彼は立っている。

考えるのが苦手な彼が使う戦法は一つ、自分の持つ魔力はすべて回復に回し己の肉体一つで戦う、といった戦法である。


だからこそ痛みを恐れない戦いが出来る。


数十秒経ったところで赤モジャが動く。文字通り神速と言っても良い速度だがティガレは目視でき反応していた。

赤モジャの拳を剣の腹で防ぎ弾くと一回転してからの重心を乗せた一撃――それを軽いステップで赤モジャは避ける。


再び数メートルの距離が出来、硬直状態となる。


辺りからは叫び声が一つもない。応援など不要、見入っているのだ。

このありえない光景に。


「さすが、この国の王だけのことはある」

「エルフの国にも、このような者がいるとはな。今後ともよろしく、と言っておいてくれ」


お互いに頬に皺を作るだけの笑みにとどめ、試合へと再び集中する。


そして次の一撃――


「グッ」

「チィッ」


――勝負が決まった。





「オォォォォッ!! コレはァーーーー! 両者ともに急所を的確に捉え魔法使いに拘束されています! つまり、優勝者二人ということかー!?」


ウォォォォォォ、と盛り上がる観客席。

同時に二人が優勝など歴史あるこの武道大会のなかでは異例である。


つまり観客はというと、勝負の決着によることと、その歴史的な目撃者になったことで二つの意味で盛り上がっているわけである。

その盛り上がる観客を普通は止められないのだろう。が、しかし。


一人の少年の声で観客は声を静める。


「馬鹿野郎共がッ! 優勝は俺だァァァァァァッ!!」


叫び声が響き辺りをシン、とさせる。

そして座っていた海弟は立ち上がる。


「……聞こえなかったのか? 生き残りは俺のみ、俺の勝ちだ!」


史上最低の優勝者のいる大会として、この大会は一応歴史に残った。





さて、授賞式だ。

何と同士討ちという手間の省ける結末で終わらせてくれたベレテナ王と赤モジャ君。

いやー、すごね君達。


まあ俺は一位だけど! はっはっは。


そして俺はベレテナ王、ではなくベレテナという国から一位の副賞として景品をもらった。

その景品は夜、俺の休んでいる部屋に運ばれるらしい。


――なので現在待っているのだ。


授賞式はこの国の王の性格ゆえか短かった。圧倒的に短かった。

意味がわからないが兎に角短かったのだ。


「……うわぁ、うわぁ。うわぁー」

「何だよ。その卑劣で下劣で汚いものを見るような目は」

「あぁーら正直ですねー」


何が正直だ。

あんなもの勝った者勝ちだろう。いや、残った者勝ちか。


まあどちらでもいい。


早く副賞が届かないかとワクワクしていると、扉がノックされる。


「はぅーい」

「はぅ」


言うな。


さて、扉の前に立ちドキドキしているので深呼吸を一、二回。

取っ手に手をかけて扉を開ける。


「あのー、明日の予定ですが――」


従者の人だった。失望した。

もう開けてやんねー。


扉を閉める。


『えっ、あのー、明日にはもうここを出るんですよー?』

「知ってるさ! だがッ! 俺の待ち望んでいるモノはお前じゃないッ!」

『ええー。それはひどい――って何ですかアレはーー!?』


何ッ!? 何があるんだ!


扉を開き廊下へと出る。

この城の構造はよくわからないが、廊下の曲がり角に見えるものはわかった。


「俺への副賞だ!!」


あのでっかい、箱? 鉄製のものらしい。

その中には……何があるんだろう。


「ウオリャァァァッ!」

『ッ、困ります。これは海弟様の――って本人!?』


何か驚いているが……知らん。

兎に角、重い蓋を開けて――いや、待て。


「この箱どこかで見たことあるような。うーん」


思い出せない。

が、しかし。それはそれ、あれはあれ、これはこれ、どれがどれ? である。わからなきゃ思い出す必要はない。


「開封ー」


蓋を開き、中身を見る。


「こ、これは――」


いつの間にか総合評価800越え!

奇跡です。


さて、勝ちには勝った海弟なのですが、その勝ち方は普通じゃない。

暖かい季節になってきたせいか作者の脳内にお花畑が咲き始めています。

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