第476話武道大会と赤モジャエルフ
文章力は日々失われていきます。
では? そう、諦めましょう。
城壁は無骨な石の表面が見えている。色が塗られていないのだ。
そして城。守り攻められないためだけにあるそれは装飾品の一つもなく、ただでかい。
そしてこちらも色がない。華やかさや艶やかさとは無縁だ。
良い意味で、溜息を吐いているとセリーが俺の肩を叩く。
すると少し離れたところにある城と同じ大きさなのだろう、闘技場が見えた。
たぶん、あそこで今回の戦いは行われる。
……二日間暇なだけあって、今日は驚かされてばかりだ。
いやー、旅行ってのも良いものだなぁ、などと考えていると城門から一人だけ異質な雰囲気を持った男が出てくる。
見たことのある顔。
ふむ、この国の王……ティガレ……何だったかな? 忘れた。
まあ良い、ティガレさんだ!
「やー、こんにちは」
「……」
……あるぇ。何か間違えただろうか。
面識あるし、ラフな挨拶で良いと思ったんだが……仕方がない。
「ハロー」
「何だその挨拶は」
眉間に皺を寄せるティガレさん。もといおっさん。
「異国の挨拶です。っていうか挨拶したなら挨拶し返すのがマナーだろう」
なぁ、と後ろを向くとセリーと従者の人はそそくさと何処かへ立ち去った後だった。
何故だろう。何か嫌な予感がする。
「それもそうか。こんにちは、これで良いだろうか」
「そうだなぁ。五十点」
……うーん、おっさん相手だと妙に雰囲気というか周囲の空気が固まるような……そんな感覚を感じることがあるんだが……。
何故だろうか。
まあ、何でも良いか。
「それよりも、そろそろ城の中に案内して――」
「……どうも、見極められん」
……ん?
城門へ向けていた視線をおっさんへ向ける。
「強者のオーラ、というものがまったく感じられない。そこら辺にいる……普通の傭兵やゴロツキ……いや、すまない。その例えは不味かったか」
さっきから難しい顔をしていると思ったら俺の強さを測っていたのか。
ふむ、なるほどな。そりゃあ難しい顔にもなるな。
「まあ失礼ついでだ。城内を案内してもらおう」
「一度戦えばわかること、か。では、部屋まで案内させてもらおう」
ざわりと、周りがざわめく。
何だ何だ。
周囲を見ればほとんどがこの国の兵士。それも当然か。
そしてその兵士達は顔を青くしている。
「実力主義って恐ろしい」
「逆らおうとは普通、思わないからな。新鮮で良い」
おっさんが言う。
今ここで襲われたら俺死ぬからね。うん、間違えないよ。
「さて、ゆっくり出来るのは今日が最後だ――存分に休むと良い」
部屋の前。おっさん……いや、ティガレ王が俺に告げる。
好戦的な瞳は経験で染め上げられ有無を言わさぬ迫力がある。
……強い。
俺は部屋の扉に手をかけてから言う。
背中を向けたまま、というのもアレだがな……まあ良い。
「毎日が夏休みだぜ」
……ふっ。
意味がわからない。
☆
武道大会のルールを確認しよう。
予選……は俺達、招待された側の人間は参加しなくても良い。俗にいうシード枠。
だからルールを覚える時間があって助かった。
まず刃物、鈍器の使用は許可されている。各々が本気を出せるように……らしい。
しかし殺人は禁止。闘技場内部、観客席最前線にいる魔法使いが相手を殺してしまいそうになったら拘束魔法とやらをかけて試合を中断させるらしい。
刃物とか首狙ったら一撃だぞ、というのは意見にすらならない。
実際に抗議があったらしいが、ここは実力主義の国。実力無き者、弱者の言い分になど正当性はない……らしい。
まあ、死人は結構出てことないらしいので安心していよう。この五年で十人だって!
わぁー、多いぞコラ。
「……安心できねぇ」
予選は午前中に終わったらしい午後、次は俺の試合ということもあり頭を抱えているとセリーが俺の肩を叩く。
一緒に戦えはしないが、家族……何か言葉を――
「……何だその、十字架を俺へ見せてどうした」
何処で手に入れたんだ。って、その笑みは!
俺に死ねと!? 却下します。
「勝ってやるからなッ!」
さて、まだルールがある。
勝ち負けについて、相手が降参の意思を示すほか、反則、上記の殺されてしまうような一撃を受けそうになった場合……などなどだ。
場外は基本ない、が観客もいることなのでこの闘技場が壁として仕切られているので基本ここで戦いは行われる。
ざわざわ会場が騒いでいる中、俺は自分の得物を見つめる。
……敵はわからない。予選はトーナメント形式なのだが……決勝戦は……何だったか――
思い出そうとしているところで扉が開く。
『出番でーす』
「おう」
扉から出ると、向かい側の扉から肩の辺りまであるモジャモジャとした赤い髪の男と目があった。
俺より背が高い、そして何故か上半身裸。武器を持っている様子もない。
さて、ここでどういうリアクションをすれば良いのか、だがそれは簡単。
「「お前が相手かッ!!」」
ッ!?
何だコイツは、俺の心を読んだ?
いや――
「「真似すんなァッ!!」」
クッ、コイツそうとう短気に見える、って俺のことか。
ったく、こんなのが相手なのか。
溜息を吐いてから気づいたのだが、同じゲートから普通対戦相手同士が現れるものなのだろうか?
疑問が口から出る前に俺は案内されて会場へと出てしまった。
観客の声援、怒号、脅迫めいた叫びまで聞こえてくる。
耳を塞いで、この広い場内を見回す――って?
ゲートの数は四つ。そのゲートの一つから俺と赤い髪のモジャモジャ君は出てきている。
さて、残りの三つ。
そこから俺達のように二人組みの男女、あるいは男と男が現れていた。
つまりこの会場に、同時に八人の男女が入場したわけだ。
……ん? じゃあさっきの試合はなんだったんだ?
司会の男なのだろうか、それとも審判なのか。
わからないが、その男の声が会場内に響く。
『サァー、盛り上がってまいりましたァー! 予選一位と二位による素晴らしい戦いでしたねェー。で! は! 決勝本戦参りましョー!』
……ごめん、よくわからない。
予選、一位と二位による戦い? 盛り上がってまいりました?
……ああ、うん。そういうこと。
『決勝戦はァー、サバイバルッ! 全員が同時に、戦っていただきます!』
会場のテンションはマックスボルテージ。
初出場の俺は目を白黒させていると後ろにいた俺を案内してくれた女性、その女性が俺に言う。
「この大会、決勝戦だけ予選勝ち抜き組み含めたシード枠の人とでサバイバル戦になるんですよ」
「じゃあ、さっきの一位と二位ってのは? ……一応、わかるけど」
「午前中に予選は終わりで、午後から決勝が始まるでしょう? 時間が経っちゃってますから、盛り上げ役的な、ね?」
何という勘違い。
そして何で俺と赤モジャ以外の奴等は冷静なんだッ!
「クソッ、初出場だから何もわかんねぇんだぞッ!」
「よかったな。真っ先に俺がその首もらってやるぞ」
「あぁ!?」
「わからぬまま眠るが良い」
俺もわからないが。
グチグチ言っている赤モジャ君はさておいて。
強敵なのは……何故かいる王様達。ああ、一人だけ王女様。
予選勝ち抜け組である一位と二位さんは四つあるゲートの一つを占領していて――で?
エルフの国代表が見当たらないのだ……が?
あがが?
いや、待て。隣、いや、待て。隣、いや、待て。隣、いや――
「おい、どうしたよ」
「……お前、おい。エルフ、なのか?」
「あ? どっからどう見てもそうだろうが」
耳が毛、いや……髪で隠れててわかんないんだよッ!
この野郎……。
にしても、他のゲートにいるのが王となると……コイツも、なのか?
「まさか、お前エルフの国の王じゃないよな?」
「代理だ。今国王は病気……って、ごほんごほん。げほっ」
何だ。秘密言っちゃった感じか?
俺とお前の仲だ、存分に言うが良い。弱みぐらい教えてくれてもいいだろう? なぁ?
俺は教えないが。
「まあ良い、サバイバルならそれはそれで面白い。何かいろいろすっ飛ばした感はあるが、やってやるぜ」
さて、前書きが謎すぎるのですが微笑みだけで許してあげてください。
自分だって謎なのです。
にしても、海弟の言うとおりすっ飛ばしまくって武道大会決勝ですね。
予選? 何それおいしいの?