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第473話捜索と代用品海弟

影流と青空がいなくてもほのぼの出来ることがわかりました。

「よし、集まったな!」


早朝も五時ごろ、城門の辺りに集まった俺の部隊の顔ぶれを見る。

呼び出しした時は「えっ、戻ってきたんですか!?」的な表情(リアクション)をしてくれていたのだが、残念ながら寝起きということもあってかテンションが全体的に今は低い。


「おいおい、神様探しだぜ? 何でも願いを一つだけ叶えてやろう、だぜ?」

「いや、もう目の前ので代用できますって、隊長」


出来ないだろ。

というか、セリーも異世界の神だということは広まっているんだな。


うんうん、と頷く。


……実は俺が広めた。


「兎に角、犬死ちゃんを見つけなければ俺たちに、この国に未来はないッ! そのうち捜索隊でも組まれるだろうが――ここは俺たちに手柄にしたいだろう?」

「この国に貢献できるわけですね! これはまたとないチャンス……」


カサロが燃えている。

カサロが燃えている。


いや、あまりにも珍しかったので二度言ったんだ。

特に意味はないと言えばそうだ。


他のメンツも特に頑張ろうという気持ちすら感じさせない。

王様のために何かしようという気持ちはないのか! 騎士は愛国者揃いじゃないのか!?


俺だって頑張ろうとしているのに――ん?


視界の中央。メイン玄関となる出入り口から走ってくるファンの姿が見えた。

何を隠そうにも目立つ服装、動きにくそうな服装のアイツなのでわざわざここまで走らせることにする。


おお、朝なのにこんなに注目を集めてるな。

朝練(あされん)に力が入ってない様子の騎士達を見つつ思う。


息切れしている魔法使いに「どうした?」と問いかける。

本来の立場的にはファンのほうが上なんだけどね!


「海弟様ッ! 馬鹿ですかあなたはッ!!」


……はい?


会ってそうそういきなり馬鹿とはご挨拶なものだ。

後ろでぷぷぷ、と笑っているセリーに後で島流しの刑をするとして、今はファンの話を聞くことにする。


「馬鹿はお前だろう? で、何の用だ」

「言いたいことだけ言って話題を変えないでください。あなたが馬鹿です。それで――」

「待て待て。俺じゃなくお前が馬鹿だ」

「っ、馬鹿はあなたです!」

「いいや、お前だ!」

「あなたです!」

「お前だ!」

「あなたです!」

「お前は誰のことが好きなんだ?」

「引っかかりません。影流様――」


はい、お見事。引っかかりました。


顔を真っ赤にするファンだが、走ってきたせいだけじゃあないと思う。

いやぁ、からかうのって楽しいなぁ。


「話を変えましょう! 海弟様、何てことをしてくれたんですかッ!!」

「なに? よくわからないが、まだ俺は何もしていないぞ」


現に、自由部隊と名づけられ行動を制限されない俺の部隊で犬死ちゃん捜索を行おうとしていただけだ。

何処に怒られる理由があるというのだ。


「だから、コレですッ!!」


何処からかファンが取り出した一枚の紙切れ。

どうやら手紙らしい。コレは……ベレテナ王の名前か。


……うん?

つまり、えーと?


「あなたは大変なことをしてくれましたね! 武道大会に勝手に影流様を出場させる約束を取り付けてしまうなんてッ!!」

「あ、そんなこともあったような。でも影流は強いし、問題ないだろ?」

「今いないでしょうッ!!」


何?


開催日時は……明後日だと!?

間に合わん。究極完全体的に間に合わん。


例えがよくわからん。


「クッ、どうする……。犬死ちゃんを探して、影流を迎えに……じゃあ間に合わないッ! いろいろ向こうも手続きやらがあるだろうから」


犬死ちゃんはきっとこの世界の神様のところにいるだろう。

そして、俺たちはその場所を知らない。何日掛かるかわからないのだ。


「どうしましょうか。この国の代表として勇者様を――」

「待て。アレを出すのはこの国の恥だ」


いいや、俺の恥だ。

母親が恥なんて一生恥だらけにするようなものだが、しょうがない。


「ここはその、武道大会とやらに俺が出よう!」

「なっ……」

「実力主義国の王様だ、影流の代わりに俺が行くんだったら許してくれるさ」

「……認めたくありませんが、白の剣と黒の剣を……保有するあなた――」

「私が白の剣持ってまーす」

「オレが黒の剣は持ってるな」

「……え?」


ああ、そうだった。回収しておかないとな。

二人から鏡を受け取りポケットに仕舞う。


「……え、まさか。こんな大事なものを……自分の部下へ?」

「一時的に預けてたんだ。いやぁ、ないせいで向こうの世界でピンチだったぞ」

「な、ピン……。すぐに増援を!」


馬鹿、どうやって増援をおくるんだ。

すぐに気づいたのか俺の持っていた手紙をぶんどると同時に手を後ろへ回す。


「では、海弟様をベレテナの武道大会へ参加させるということでよろしいですね?」

「ああ」

「使者を送っておきます。正式な大会なので海弟様は馬車に乗ることになりますが――」


……かかってこい。

寝なければいいのだ。寝なければ。


酔うことはないものの、幾度となく寝違えたことがある馬車の内部。

軽いトラウマだぞオイ。


「馬車の手配はこちらでしておきます! ここで待っていてください!」


たったった、と走り去っていくファン。

忙しい奴である。


「……隊長?」

「あ」

「あ、じゃないですよ! 犬死ちゃん? 捜索はどうするんですか!」


おいアオル。テメェ顔に『お休み最高!!』って書いてあるぞ。

ふざけんなよ。天国から地獄へ、もといお仕事の時間だ。


「副隊長、指揮は任せた」

「ふ、副……久しぶりに呼ばれたような気もしなくはないのですが……」

「やるときゃやれるさ」

「は、はいッ!」

「死ぬときは死ぬって感じで」


何だ、いきなり侮蔑の視線を送ってくるんじゃない副隊長(イリア)

その後五分ほど騒いでいた部隊連中だが、カサロが燃えに燃えて燃え尽きようとしていたので俺が強制的に出発させた。

人一倍騎士だからな、アイツ。


「と、セリーはついていかないのか」

「聖跡の貯蓄者の意味、わぁかるー? 常に奇跡をよそぉーくし発現するそれは搾り取る。それぇが聖跡の貯蓄者」 

「奇跡を予測、ってなぁ」


……まあ、神様だから出来るのかも知れないが。

それはそれで間違っているような気もしなくはない。


「俺と戦ったときは、奇跡が起きなかったな」


はっはっは、と笑ってやる。

何だその目は。


「今、セリーに命があること、それが奇跡」


本当に感謝しているかのように、丁寧な口調のセリー。

誰へ向けたものかは知らないがいきなり立膝(たてひざ)にならないでくれ。


両手を合わせ両目を瞑りそのまま黙祷。

とりあえずちょうど良い位置にある顔を蹴って後ろへ倒す。


「へぇぶしー」


あまりにもわざとらしかったのでそのまま鳩尾へ追撃を放とうとしたところで俺の背中に強い衝撃がッ!

前に吹っ飛ばされごろごろと転がり止るとぶつかってきたものの正体を見る。


「う、うまー? 何だ、馬車かッ!」


よろよろと立ち上がると背骨が折れていないか確認する。

よかった、折れていない。


初めて見るのか、知識では知っているのだろう、馬に興味津々のセリー。

なので良いことを教えてやる。


「馬肉はうまいらしい」

「……こぉの子……食べられちゃうんだー」


うるうるとした瞳。

残念ながら俺を運ぶ前に食われたら困る。


あの馬車の何処に乗っていたかは知らないが、突然現れるファン。


「では、何人か護衛とお付のものを付けますが私は雑務があるのでここで見送ります」

「おう、影流の顔にドロを塗らないように健闘賞もらってくる」

「それって最下位ですよね?」


うん、健闘賞。

いわゆる残念賞、参加賞である。


別に良いと思うんだ、それでも。


「出るからには絶対優勝とか抜かすと思っていたんですけどね」

「いや、俺は異世界帰りで疲れてるんだ。その後いきなり旅だろう? やってられないぜ」


実は余裕だったりする。


「ま、優勝しなかったらこの城の門は開きませんけどね」


待ってくれファン!

おかしいだろうそれは!


いきなり優勝しなければ衣食住に加え職業まで失うことになった俺。

どう生活すれば……ええい、こうなったら魔王の手下となりこの地を征服して――


「勝てぇばいいんですー。ね、パパ?」

「……勝つ? 違うな、奪うんだッ!!」

「優勝を?」

「この世界をッ!」

「武道大会に優勝したってもらえるのは地位と名声に加えてお金ぐらいですよ」


ん? あれ。

世界征服の話は?


「では、いってらっしゃい」


何だか無理矢理感のあるものの、俺とセリーは馬車へと乗り込んだ。


ファンの久々の登場。

いろいろ伏線に絡んでいるのに存在感を作者が封殺しているので伏線自体が封印されちゃい出番の少ない女の子。


苦情なら作者に言うがよい。


そして、海弟が白の剣と黒の剣をゲットしました!

おめでとう海弟! いや、言うに及ばないですね。はい。

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