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第472話『寒いときは風呂に入ろうぜ』by海弟

いやー、おっさんとか言っちゃダメです。

とりあえず、影流と青空をこちらの世界へと連れて来ないといけない。

またファンに怒られ――


その時俺は気づく。


「……あー、うん。ミラー、ミラー、見当たらない(みらーたらない)

「こぉこにあるけどー?」


無視か。


セリーが俺のポケットの中の鏡を指差す。

うん、こっちの世界にはあるんだ。こっちの世界には。


「……向こうの世界の鏡の位置、覚えてないぜ」


普通、こんな帰り方をすると思わないだろう?

だから設置しておく、なんてことはしていない。虎子の部屋にも鏡はあったのだろうが配置が朝やら夜やらでコロコロ変わるのでよく想像できない。

そういえば最後の最後でジタバタしてたし、風邪ひいて……あれ? 風邪治ってる?


俺すごいな。


まあ、つまり転移できないわけだ。

いくら俺が戦闘の高揚感一つで風邪を治してしまおうがそれは揺るがない。


「お前も無理っぽいからなぁ。使えん神だ」


使(ツか)えン(かみ)。略してツン神。


……何だこの新ジャンル。

素晴らしいと馬鹿らしいが比例してやがるぜ。


「ったく、ファンにまた怒鳴られる……。だけじゃあ済まないな。どうしようか」


影流と青空だけ置いてこっちに来てしまったこと自体が誤算なのだ、これ以上手のうちようがない。


が、出来ることはしておこう。


「クォンに話をしてみようか。アイツ元世界の支配者だし、俺より世界のことに詳しいしな」





「まず、"人間"が異世界間の転移が出来ること自体が異例です。世界と世界、表と裏。どちらも移動できる、ふざけてます」

「クォン先生、それは酷いとおもいまーす」

「それには納得できぃるところがありまぅす」


激レア。言葉に二つ小文字が含まれてる。


いや、関係ないな。

それよりも、クォンに表と裏を行き来する方法を教えてもらうのが先だ。


「正直なところ、世界の管理者でなければ無理でしょう。例外は例外として、他の方法はわかりません」

「そうか……」


そうなると、影流と青空は裏の世界に取り残されてしまうことになるわけか。

いや、裏の世界には"ママ"がいるらしい。もし捕まっていたら……心配だ。


どんな化け物かは知らないが神様食う奴が裏の世界にいるんだ。それも世界の間を抜けるように動いているらしい。

だから最悪、今の影流達が遭遇したのなら……死んでしまっているかもしれない。


それほどの化け物だと俺は聞いた。

だが、俺は信じてない。


「ったく、面倒だな。他に方法、異世界……魔族は?」

「昔なら出来たでしょうね、支配者の空間、それが表の世界と裏の世界をつなぎ止めていた昔なら」


ただ、とクォンは続ける。


「裏の世界の存在すら表の世界の住民は知らないわけですから行く力があっても行けないわけです」

「なるほど」


行く力はあってもいけない。


「そして知ってしまった今、支配者の空間は消えている。その瞬間から表の世界と裏の世界は空間が消えた衝撃に伴い徐々に離れ離れになっていっているわけです」

「距離が遠すぎて今じゃあ転移して裏の世界に行けない、ってわけか」

「飲み込みが早くて助かります。三十倍は掛かると思ってましたから」


そうか、殴るぞ。


拳骨の味をクォンに堪能させてやってからセリーのほうを向く。

何となくだが、コイツは何か知っている……そんな気がするのだ。本人は否定していようと、だ。


俺には読心術など使えないのだから知りようが無いのだが……脅して吐くとも思えない。


「帰るぞ。こっちの世界にも俺の娘が二人いてな、一人は知らないが片方に紹介――」


……ああ、犬死ちゃんはもう片方を探しに、もとい竜の子供に捨てられてたな。

今はこの城にいないのか。


……ん?


「んー、鏡がダメなら扉では? いや、門ならどうだ」

「……? 意味が少しわかりません。自分の実力の無さを自覚しまさか扉を開けば別世界に繋がっているとか妄想し妄信しているわけじゃあないですよね?」

「少しわからないだけでそこまで妄想するお前はすごいよ。違う、犬死ちゃんの生死の門。アレは異世界転移にも使えるんだ」


元々は何とか何とかとか言っていたが(覚えていない)、兎に角今は使えるものに頼りたい。

(わら)には(すが)らない。


犬死ちゃんの捜索を急いでしなければ。

ついでにこの世界にいる俺の娘に会えたのならば両手をあげて万歳しよう。


「生死の門、私は知りません」

「セリーは知ってぇるー」


やはり俺に隠していたな?

後でお仕置きが必要だな。島流しの刑。


「よし、俺の部隊の奴ら――」

「もう夜ですから寝てますよ、きっと」


……うん? そうか。

いつの間にか夜になっていたか。


いろいろなことがありすぎて時間を忘れていた。

しょうがない、今日はもう寝るとしよう。


まあ、優先的に影流と青空を何とかしてやらないとな。

俺は外道だが非道じゃない。


割と本気でそう思っている。





割と本気で何が起こっているのかわからないかも。

うん、すごい気迫。


でっかいお風呂。

ここは竜子ちゃんの家にあるお風呂。

兎に角お風呂。種類がたくさんあって、その中でもメインとなるのがこのでっかいお風呂。


男湯女湯に分かれていて、女湯の大きさがこれくらいなのだから男湯も同じ大きさと考えて……何だかすごい以外に言えそうもないかも。


さすがに地上にはなくて、お風呂は地下施設(あるんだよ!)の一部らしい。


私は肩までお湯に浸かると後ろを振り向く。

そこには二人の少女が立っている。


一方は竜子ちゃん。もう一方は虎子ちゃん。


二人とも仲が悪いわけでもなく、かといっていい関係でもなさそう。

つまりは微妙なわけである。


けど、何かモヤモヤがあるように私は思えてちょっと早くお風呂に二人を誘ったわけです。

にしても虎子ちゃんの尻尾は本物なのかぁ。


「二人も入りなよ!」


体は既に洗ってある。

服を脱ぐ段階で無言にもう耐え切れなかったから先に洗っちゃったのだ。


洗わない方がマナー違反、まあそれでいいと思う。

個人の所有するお風呂みたなんだけど。


とぼとぼと歩いてくる二人の濡れた髪が妙に色っぽく見えて自分の髪をいじったりしていると、二人が同時に湯船に浸かる。

私を挟むようにして座ったので沈黙の集中砲火を両方から受けているんだけど!? お風呂で癒されようよ!

何でこんなに疲れるの!?


「……すまない、な」


ぽつん、と呟く竜子ちゃん。

私へ向けられた言葉なのか……それとも――


「いいよ、あたしは……」


……何だろう。

何か関係がもつれていたのはわかる。けど、今ここで竜子ちゃんが謝っても……何か違うような気がする。


何がどうなのか、私にはわからないけど。

……海弟ならどうするんだろう。


……う、うーん、想像できるといえばできるけど……私にそんな行動力は……え、ええいっ!

二人が決意し、打ち解けるにはまず私が手本を見せてあげないと!


自分の両手をお湯の中から引っ張り出して二人の肩――より下にある胸へと鋭く放つ。

むにゅん、という柔らかいものを掴んだ感触。


海弟なら――俺の嫌いな雰囲気だ。そうだ、コレハーレムっぽいから一つ盛り上げようか。


となるわけです。

胸を揉みます。……海弟、最低。


ああ、でも今最低なのは私なわけで!

でもコレも決意だよね! 私にとって決意です。


「っ、あっ」

「な、なあああっ!」


短く声をあげただけの竜子ちゃんに対し思いっきり顔を赤らめて体を私から背ける虎子ちゃん。

個性があってよろしい、ってどんどん海弟に近づいていってるかも私。


「……黙ってちゃ、ううん。一言二言じゃあ思ってることは伝わらないよ。私はそう思う」


言っていることと行動があっていない、そういう状況。

片方が謝ったのなら、それでスッキリして元通りの関係になればいいのに……結局は引きずっていてしまう。


竜子ちゃんは会いたくないと自ら今まで拒み続けてきて、虎子ちゃんは……わからないけど、きっと竜子ちゃんと嫌なことがあったんだろうと思う。


「竜子ちゃん、虎子ちゃん……もっと話を――」

「虎子」


竜子ちゃんが私の言葉を遮る。

そうか、やっと――


「私と、戦ってくれないか?」


――私もうダメです。


「……わかった」


二人とも女の子だよね? 戦うって……そりゃあ竜子ちゃんも虎子ちゃんも強いことは知っているけど。

……けど、それで……二人はきっと仲直りしちゃうんだろうな。


何となくだけど、そんな感じがしてきた。


……にしても二人とも胸おっきいなー。


青空の本質に海弟さんがやってきました。

……ダメだ。コレは胸を……その、揉む必要があったのでしょうか?


あるね! 少なくとも妄想している自分は得をしている。


さて、裏の世界に鏡の設置された場所を想像できなくて転移ができない海弟君。

かなりピーンチ……かと思いきや最後の手段犬死ちゃん!

ついでにこの世界の神様まで出ちゃうんでしょうか……。


性格と名前は既に別のヤツで出しちゃってますからね。

……さて、どうしよっかなぁ。

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