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第470話『神ってのは馬鹿だなオイ』by海弟

うーん、今回外道っぽいなぁ。

というかまんま外道だ。

苦痛は激痛。

イコールで結びたくないのだが、生憎と俺の人体は大ダメージです。


精神になんら異常はないのだが、けろりとしていられる状況も終了してしまったようだ。

これからは年中永休(ねんじゅうえいきゅう)らしい。無休じゃない。


避けられないので防ごうにも体はついていけない。

攻撃は最大の防御、防御は最大の攻撃だ。


装甲を得た拳の持つ物理的防御力がそのまま攻撃力に変換されている。

そこにスピードやら何やらが乗っかりかなりの威力、もちろん防御力まで攻撃力に変わっているわけだから俺へのダメージは計り知れない。


避けるのも防ぐのも無理。

快楽だって得られない。こうなったら現実逃避しかないだろう? というわけで俺は目の前の現実から目をそむけている。


体中が痛いのに不思議と頭は回転するものだ。いや、一種の狂気なのだろう。

そこから俺は成長した。


ここまで血まみれになりながらも冷静でいられる、気持ちが重くならないのはほとんど狂気と言ってもいいものだ。


「パパはよぉわい男なのかなー?」

「どう……ペッ、どうだかな」


たんが絡んでたぞ。


地面にはき捨てたそれには血の色も見えた。

予想以上に俺はヤバイ状況なのかも知れない。いや、警告は受けている。

これ以上は無理だと体が言っている。


だが、やめられる戦いではない。

ここで立ち止まったら俺は……何だろう。もう向こうの世界へ帰る手段は得たし、青空と影流を連れて帰ることも出来るのではないか?


鳩尾へクリティカルにヒットする装甲に包まれた拳が定位置となったた娘の横腹の辺りへ戻るのを見つつ考える。


ならば、俺は何故戦っている。


――瞬間、視界が霞んだ。


横顔へ決まった脚蹴り。

そのまま吹っ飛ぶ俺。勢いに乗り地面へとすりつぶされるようにして着地、激突し転がる。


墓の一つにぶつかり動きは止まる。


……これはもう戦いじゃない。

虐殺(ギャクサツ)。イジメ、(イジ)メだ。


これが戦いなのだとしても俺だけのものではない。

だからこそ、俺はうまく戦えない。周りを巻き込み自滅する。


あの時はどうだったか。

お茶とアレンと、あの時は(むすめ)が二人も味方をしてくれた。


だからこそ掴めた勝利なのだろう。

では、では……?


思考が一瞬止まる。


チリチリと頭の裏の方が焼ける感覚。

きっと、何か……何だろう。


……ヒントはあの世界にすべてあった。

未来しか見れない才能のない王女がいる世界。いいや、それでも十分だ。


素晴らしい世界だ。


「……戦う理由なんて、最初からなかった」

「はぁい?」

「俺達は帰ることが出来るだけで満足できるはずだった」

「……何ですぅかー?」

「けど、俺達はここにいる。俺と、影流と、青空が。ここにいる」


……何でだと思う?

いいや、何かあるだろう!


知らぬ間に引き寄せられていた。

これが策略だろうと計略だろうと篭絡だろうと。


「――二度言ったぞ? 三度目だ。『ここにいる』からこそ出来ることがあるのなら俺の選択肢は二つになる。優先順位を考えろ」


……ここでしか出来ないことがあるのなら、ここでやるしかないだろう!


「信じるとか、そんなの簡単だし疑心に満ちた心を持とうと自分自身はどこかで信じているものだ」

「パパが説教をはぁじめましたー。セリーはお暇でぃーす」


うん、出鼻を挫かれたから終わりな。


「行くぞッ」

「えぁ? えっ?」


よろりと墓石に全体重を任せつつ背中をこすり合わせつつ立ち上がる。

足取り重く娘へ向かい走る。


そのスピードは小学生の徒歩にも劣る、だが俺は高校三年生。


「遅い」


知ってるよ。


意識はある。

ならば攻撃の(メイン)となるのは近接攻撃じゃない。


魔法だろうッ!


相手の姿を見失う……その瞬間、俺の周囲に炎が現れる。


「近づけないだろうッ!」

「まぁうえは空いてるけどー」

「空中ならば動けないだろう――」


ってのは負ける側の台詞っぽいな。


でもまあ、いいんじゃないか?

相手が自身の強さだけで向かってくるのなら、俺にしたことと同じことをしてやるだけだ。


クハハハハハッ!!


「『鏡』」


上へ向かい鏡を出現させる。

そこから放たれる攻撃の衝撃を防ぎ俺の真上から移動しようとしているのか顔の前で腕をクロスさせる。


「お前は、俺の強さを奪ったよな? なぁら、俺もお前の強さを奪うぜ!」


攻撃じゃない。

転移。


娘が俺の出した鏡に触れた途端、吸い込まれるように消えていく。

出現先は異世界ッ! 表の世界だ。


「自らの世界にいなければ神はどうなるんだろうなァ。一般人並みの力になるのか? いーや、記憶までぶっ飛ぶのかなァ?」

「クッ、ああっ」


焦りの表情を見せる娘。

俺は知っている。


他の世界に神が向かうと力は弱体化され大技も一度しか放つことが出来なくなる。


犬死ちゃんがやってた。


俺の周囲から炎は消え、真上から鏡は消える。


「……グッ、現実にない魔力の鏡で転移って……自我崩壊ものだぞコレ」


魔法は想像から生み出される、そしてその想像の上に想像を重ねたのならば知らないところで矛盾が生まれるのだ。

完全に一致することはない。どちらも自分自身の想像だとしても。


何度も連続してそれをやったのならば間違えなく精神崩壊、自我消滅。

俺も封印してたんだがなぁ。


「さーて、影流。青空、ちょっくら痛めつけてくるぜ」


二度目だ。

俺の出現させた鏡に触れる。


ああ、しばらくの間は狂っちゃうかもなぁ。

そうだなぁ、ちょうど良いや。アイツは世界を渡る力を持たない神だ。


「逃げる手段はなーい。使い捨ての力ならあーる。クハハハハハハハッ!!」


恐怖とか大好物だ。


抵抗できない少女をボコボコになんて酷いわ海弟ッ!


いいぞ、やれやれー。


はい、二択です。作者は後者です。

殴られる分には良いんです。海弟だからきっと反撃されますし。


さて、今回はキリエさんみたいな平和エンドじゃないですよー。


パパー → グサリ → ハッピー


何てのが二度連続で起こるとか怖すぎます。

にしても、こうやって異世界同士を絡めたのは初めてな気がする。


異世界間の問題に巻き込ませたことはあるけど、その後で力の後押しをもらうってのは王道っぽいですねー。

そこでやりすぎる海弟は外道ですねー。反省の余地など与えません。


ここで書きすぎるのもアレなので次話に書こう。

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