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第455話『警察は俺のギャラリーだ!!』by海弟

何の反動か知りませんが、異世界なのにファンタジーがすくねぇぜ!


ってのがこんがらがりました。解決の糸口は海弟に掴んでもらうとしましょう。

何がどうとか、常識だから、とか関係なく、俺は虎子(昨日命名)の後ろを歩く。

もちろん、学校に行くためだ。


「……もしもし、警察――」


牢屋に行くためではない、と冷静に心の中で話しかけてみたのだが、当然届くはずもない。

何で学校に行っちゃいけないのさ! 義務化されていない高校生だが、久々に通ってみたい! そういう思いもあるのです。


行けなくなって初めて行きたくなるものなんですよ!


「さて、熱く語ったところで、学校へ行こうか」

「警察の人に連れて行ってもらってください」

「HAHAHA、警察と書いてタクシーとは読まないぜ?」


俺の声が発せられた直後、鳴り響く音。

そう、アイツが来るのだ! 何てはやい対応!


恐ろしすぎる!


「家に帰れ」

「……チッ、ならば鍵を――」

「自分の家に帰りなさい」


……何を言ってるんだコイツは。

俺の家なんて表にしか……ああ、そうだった。


説明してないんだったな。


まあ、説明のしようもないのだが……。


虎子の視線に耐えつつ、何とかならないかと考えたが答えは出ない。

こっちの世界の常識がどうであれ、あの怪物との戦いに一般人を巻き込むわけにはいかない。


武器を持たない奴を戦場に送り込むほど俺も鬼じゃあない。


剣も槍もろくに扱えない奴は俺に宿の提供をしていればいいのだ!

朝ごはんうまかったし!


「俺の家はないッ! だからお前の家の鍵をくれ」

「……家出もいい加減にしなよ。親とか、たぶん悲しんでるし」


昨日とのテンションの差が激しい……というか最初に会ったときみたいだ。

俺との関わりはもうできているのに拒むとな?


フハハハハッ!!

俺が許可しないぜ!


道の真ん中で、パトカーと警察に囲まれながら対峙する俺と虎子。


……ん?


そうか、既に俺は負けているのか。


「いいだろう。武力を持たぬ一般市民を縛り上げ、挙句の果てになぶり殺しにしたければ俺を捕まえろッ!!」


というか、本気(マジ)で警察を呼ぶ奴があるかッ!


「この人、家出中みたいなんで、保護お願いします」

『あー、最近そういうの多いんだよね。春だから?』


知るかッ!!


警察を殴ることは控え(法律? 怖いぜ)何とか状況を逆転させようと考えるも答えはない。

あえて言うならば殴って突破できるだけの包囲網なのだ。


けど、法律が怖いのだ。


「公務執行妨害、とか? 異世界なのにファンタジーじゃねぇぜ!」


ええい、もうちょっとファンタジーを!

ファンタ――あれ?


体をくねらせている俺の視界に映る、神を表したかのような服を着た少年。

一軒家の屋根の上に立っており、俺のほうを向いている。


「ミィツケタ」

「アハッ、見つかっちゃった☆」


殴って突破できる包囲網じゃあなくなりました。

どうしよう。どうする?


クソッ、土下座しか思いつかない!

何にも悪いことしてないのに土下座しか思いつかないって何だよ!


「すみませんでしたッ!!」


頭が痛いッ! でも大丈夫。

土下座すればすべてが解決するよ!


コンクリートの地面にひれ伏す俺を(さげす)むような目で見ている警官数人。

その数人の後ろにストンッ、と舞い降りる少年。


虎子も、警官達も気づいていないようす。

警官の顔色を(うかが)っている俺だけが気づいている。


「死ンデ。全員」

「――俺以外の」

「オ前モ」


俺もか。


その発言で気づいたのか、警官と虎子が振り向き身構える。

虎子は少女とは思えない軽やかな足取りで拳を構えている。コイツ……できるッ!


対し警官。

震える手で拳銃を抜こうとしているが滑って落としている。

何だコレは。もうアレだよ。


『死ンデ』って言われても文句言えないよ。


「もう言われてるけど」

「……逃げて」


何故? と聞く前に剣がないことに気づき、恥を掻かずに済む。

俺はこの場で足手まといにしかならないのだ。


銃があれば警官のように戦えるのだろう。だが、俺はどうにもできない。


朝のあまり覚醒していない頭で考えるも、もやもやしてて答えを導き出すのに時間がかかる。

イライラする。


「お前、朝は牛乳飲めよ!」

「意味がわからない。逃げて」


それでも俺を逃がそうとしてくれる虎子に感謝しよう。

だが、ただの虎子だろうが俺はそれを置いて逃げないぜ。


理由は簡単ッ!


「俺の野次馬根性に火がついたからだッ!!」

「クッ、敵が背後にも……」


俺のことですか? 違いますよね?


俺の後ろを向いたが当然ながら、誰もいなかった。

通学時だというのに何でこんな時だけ誰もいないのさ。


ああ、パトカー避けてるのか。なるほど。

パトカー?


「……運転免許、なし。逃亡手段、あり」


……いけるか?


俺が逃亡計画を企てていると、正面から来た風圧によろめく。

その風圧は少年から発せられているよう……殺気か!?


さすが俺、と言うべきか汗という汗をかいていない。

プレッシャー浴びてるのにだぜ? すごいぜ?


「よっしゃー、行くぞトラミミッ! ファイティングポーズッ!!」


ファイティングポーズ中の俺に静かに歩み寄ってくる虎子。

何ですか?


振りかぶられる拳。

嫌な予感がしたが、すぐにこのファイティングポーズはやめられず、鳩尾という急所にのめり込まれる拳。


何と表現したらいいのだろうか……一言で言うなら――


『ああ、死んだ』


――みたいな感じだろう。


もう生死がどうでもよくすら感じる一撃だ。

意識がぶっ飛び何処かへ飛んでいきそうになるも、何とかつなぎ止め後ろへよろめくだけに被害は留まる。

当然ながら、腹が痛いけど。


「ふっ、拳は拳にぶつけるものだぜ?」


拳を虎子へ向ける。

ふるふる、と肩を揺らし(うつむ)く虎子。


何かまずいことをしただろうか。


いや、まずいことをしたのは虎子のほうだ。

警察の目の前で暴力行為! まぁ、何てことでしょう。


「……何で、痛くないの?」

「馬鹿言うな。痛いに決まってるだろう」

「……じゃあ何で、痛いって言わないの? 表情一つ変えないの?」


あ、そう? 表情変わってない?


言葉のほうは何とかわかるが、表情まではなぁ。

何でだろうな。


たぶん、用意された答えも正しい解答もないんだろうけども。

こう言うだけだ。


「言葉も表情も、無くたって。お前は俺が痛いってことを知ってるだろ? つまりそういうことだよ」

「わかんない。痛かったら、痛いって言えばいいし。周囲に助けてもらえば――」

「一番不器用でそれが出来ていない奴の言うことじゃあないな」


めんどくさそうにしている少年のほうに顔を向ける。

待ってくれるのか、優しいじゃないか。

おっと、そうだ。


「警官、撃つなよ」


撃ったらアイツ待ってくれないもん。

きっと襲ってくるもん。

俺たちの会話途中で終わるもん。


まあこの三つがわかれば良し。


「ここも何とかして、お前のことも何とかしよう。難易度『簡単(イージー)』だぜ」

「……人生、って面白い?」


何だ、いきなり。

俺のこの言葉で終わるんじゃないのか? なぁ、俺の言葉が引き金になったのか? なぁ!


くだらない話を聞いている暇はないぞ!


「ええいッ! 人生が面白いかって? 面白くねーよ!」

「……そう、だよね。散々だもんね」

「そうだ。面白くしようとか、そんなの俺は考えない主義だからな! もちろん、毎回主義に反しているわけだが!」


自分自身が!


「あたしは楽しくないよ。面白くもないよ。何にも無いもん、空っぽだもん」

「空っぽの器は水に浮くぜ?」

「……どういう意味?」

「豆知識」


程度の低い、豆知識。


「まあ、お前はその器がでかそうだからなぁ。浮くかなぁ」

「……体積が大きければその分浮力も大きくなる」

「クッ、豆知識で返されるとはな!」


俺の負けだ……。


「だがしかしッ! この戦い、勝つぞ!」

「……逃げてよ。何で逃げて――」

「野次馬から俺は競走馬に進化した! 走り()くぜ、ヒャッハーッ!」


何も考えず少年へと突撃する。

死ぬならここで死ぬだろう。だが俺は俺自身の幸運を信じるぜ!


前書きの続き。


だからと言って、幸運に頼ったりはしちゃダメだと思うんですよ。

あまりにも外道っぽくな……え?

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