第451話『芸術? いいや、俺が爆発だ』by海弟
海弟視点だと常に手抜きなので正直言って楽です。
他の奴では出来ないことをやっているのです。
手抜きでもいいんです。
でも、今回のは自分でも微妙なのです。
豆知識。
『保険医叩けば制服落ちる』
さて、そんなこんなで入手した制服。
サイズは合っているので大丈夫。細かなところの調整はやはり出来ていないが、関係は無い。
これが服である事実には変わりないのだからッ!!
衝撃的な事実が頭の中を駆け巡った。
「よーし、このまま教室に突撃しちゃおうか! なぁ!」
保険医(気絶)に向かい言う。
当然ながら返事はない。ないのでコイツの意思を俺が汲み取ってやる事にする。
きっと彼女はこう言うはずだ。
『うん、それが良いわ!』
俺の考えは正しい。
正しいか間違っているか判断するのが俺なのだから当たり前。
さあ行くぞ!
☆
ってな感じで迷子になりました。
まずさ。体育館裏を知らない間に目指していたみたいなんだよ。
気づいてから引き換えしたけど道がわかんなくなって、そのまま歩いていたらコレだよ。
HAHAHA、敷地でかすぎだろこの学校!
三分の二ぐらいクレーターにしてやろうか!
無理だけども!
無駄な争いを好まぬ俺はここで思考を一端止める。
まずは建物の中に入るべきだ。
飼育小屋の前で兎を眺めている場合じゃあない。
周囲を見回し校内への入り口を探す。
そして見つけた! 三つぐらい!
うわ、どれに入ろう。
こういう時迷ってしまいがちだが俺には秘策がある。
まず地面に――コンクリートとかありえない。
いきなり挫折してしまったわけだが俺は諦めない。
コンクリートだろうと、その下は土。地面。虫達の住処!
そこまで想像してとりあえず一番近い入り口へと入る。
やっぱり無駄な労力を使わないのが一番!
下駄箱のような場所に自分の靴(魔王)を――邪魔な靴(平凡)を退かし――入れて廊下へと上がる。
掲示板のようなものがすぐ近くにあり、大きな文字で『入学式!』などと書かれていた。
あれ、もう卒業式は終わったのか?
「……むむむ。まあココと向こうじゃあ違うからな」
何せ、トラミミと尻尾をつけてても授業を受けれるような世界なのだ。
当然のようにイジメを受けていたが本人も許容範囲内だろう。
そんな馬鹿が俺は大好きだ。
ってなわけで室内に入ることが目的だったわけだが、もう入ってしまったことだし奴を探してみよう。
欠伸をしつつ先へ進む。
途中階段があったが、気にせず真っ直ぐ進んだ結果、外から見た二つ目の入り口に着いてしまった。
何ていうかご都合主義がないのね、この世界。
戻ろう、と振り返ったところで気づく。
「校門で待ち構えていれば必ず会えるじゃないか! 完璧だ!」
完璧すぎて言うこと無し!
外へ出る為に、さっき拾った靴(平凡)を履く。
先ほどの魔王靴とは違い、何というフィット感……。
科学とは、研究とは……人とは、偉大である。
とりあえず人間様に対し挨拶の一言もない蟻を数匹潰した後、校門へ向かう。
校門の学校名が書かれた場所に背中から持たれかかる。
「……さーて、ここで問題です」
出題者は海弟、回答者は海弟でお送りします。
「第一問、学校が終わるまで後何時間?」
海弟の答え『わかりません』
……正解。
くそう! 俺はいったい何時間待たされるんだ!
☆
暇つぶしとは恐ろしいものよ。
途中、雨が降り出しどうしようかと考えたが、そのまま待つことを決意し三十分ほど。
やっとちらほら部活のためか外に出てくる奴等が見えてくる。部活のない奴は帰路につくわけだが、彼女もそんな一人であってほしいと俺は願う。
というか野球部! 雨降ってるんだから熱血すんな!
泥にスライディングなどやらかしている野郎共から熱血を三百ミリリットルほどもらいひたすらトラミミを待つ。
その間に『パンダミミ』『ブタミミ』など希少種達が通りすぎていったわけだが、居そうで居ないトラミミが来ない。
もう彼女の名前は『トラ ミミコ』で決定だ。
略して虎子。
俺の全脳細胞を使い考えたトラミミ少女の名前を頭の中で繰り返しながら本人を待つ。
すると、可愛らしい黄色に水玉模様の傘を差して歩いてくる虎子。
俯いているのはイジメられっ子の仕様です。
前を向かなきゃ危ないよ! ってことで足を伸ばしてみるが、その隣を歩かれ転ばせ作戦は失敗する。
何も考えていないのか、俺に反応すらしなかった。
「……おい、虎子」
テクテクと、それはもう俺を無視する意思さえ伝わってくるような小さな歩幅でも高速移動が始まる。
追いかけるように俺も走る。
俺の歩幅をナメるなよ!
総距離にして三キロメートル、ようやく虎子が止まる。
「……ストーカーか」
「今の言葉で傷付く奴のことを忘れるな!」
「……知らない」
そうですか。
なるほど、その耳は飾りなのか、この野郎!!
よく聞き、よく理解せよ!
ムギュッ、と耳を掴む。
「あっ、うぅ……」
「この世の接着剤ほど憎いものはないわ! フハハハハハッ!」
「け、警さ――」
……ぬっ!
「させんっ! パートツー!」
手のひらを虎子に向ける。
携帯など燃やして――ああ、そうだった。
「……魔法、使えないんだったな」
溜息が出てくる。
何だかコイツの興味も失せてきた。
こっちの世界の奴等は耳と尻尾が生えている。
こっちの世界は接着剤がすごい。
これが真実だ。
耳から手を放し、近くの電柱へと頭を打ち付ける。
この頭の中から、俺の思考の中から魔法が消えたのならば。
思い出せよ、コンチクショウ!
「……び、病院? どっちだろう……」
「どっちもだ!」
「ひぃぃ、わ、わかったけど……」
電柱が傾いた気がした。
ついでに俺の頭から血が流れている気もした。
……うーん、何事にも本気ってのは大切だと思うよ。っていうか電柱ってこんなに硬いんだね。
「……何で打ち付けてるの? あたしじゃ相手に出来ないよ、ストーカーの人……。血、出てるし」
「俺はストーカーじゃないッ! 外道騎士が一人海弟だッ! ちなみに外道騎士なんて名乗るのは俺しかいない! 豆知識な!」
「先に病院だね……」
「都市伝説の黄色いヤツを頼む」
弁解に言葉は不要だ。
そう、次頑張るという努力さえみせればな!!
ってなわけで、次回にご期待ください。