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第436話無理と無茶

抗えぬ運命があるのなら、

誰かが抗うのを見ているのもいいよな、

俺? 俺は見るほうだぜ。


という他力本願を全力でしている海弟の台詞が夢の中で出てきました。

溜息すら出ない。

ただただ朝日を見るその瞳には全力で勝ち取った勝利の二文字が浮かぶのみだ。


「……隊長、それは幻覚です。一日じゃあ無理です」


現在時刻は五時を少し過ぎたごろ。メイドさんやら執事さんが忙しそうに朝食の用意などしているのを見て時間に気づいたわけだ。

そして片付いた仕事の量は百分の二。つまり五十分の一なわけだ。


あれ、こうすると何だかすごい数の仕事をこなした気分にならないか?


「……よし、ラストスパートだッ!」


犬のフンにも満たない灰のような状態になった部隊連中に叫び命令する。

のろのろと動き始める連中はまるでゾンビのようだ。


さて、俺も――


瞬間、この部屋の扉が開かれる。


「海弟? 本当に一晩中篭っていたらし――」


くっ、早いッ! 早すぎる!

半分以上開かれた扉、そこから姿を現せようとする影流。


……させんッ!!


扉へタックルをかまし影流の登場を妨害すると、鏡の中から重いものを寄せ集め扉の前に置く。


「まだだ。まだ、俺達の戦いは終わっていないんだ!」

「いや、隊長素直に謝りましょうよ。私達に死ねと命令するんですか?」

「生きろという命令を同時進行でこれからは頼む」


うな垂れるイリア。

副隊長だと言うのに何という根性のなさ。次の訓練の際は俺が一から鍛えなおしてやるとしよう。


「いつつ……。お、おい、海弟!? 何だったんだ今のは!! って、開かない。おーい、いるんだろ? なぁ!」


扉の隙間から聞こえてくる影流の声。


「影流よ。今宵はまだ始まったばかりだッ!」

「もう朝だぞ? 今日は一日中お前の話でも聞いていようかと思っていたんだがな」

「残念だが、夜は寝る時間なんだぜ?」


午前五時? 意地でも夜だと認めさせてやろう。


「……ああ、まあ良い。頑張ってくれよ」


呆れたような声を俺は激励として受け取り自分の席に戻る。

さあ、まだまだ俺達の戦いは終わらないぜ!





「……ふ、ふふふ。ふっはっはっは!! 終わるか馬鹿野郎!」


時間は午前七時を過ぎた。

脱出を希望する数名(教師の役目が残っている奴等)を解放し、残った数人で仕事をしているわけだが……勿論ペースはガタ落ち。

腹も減ってきて『効率って言葉知っていますか?』状態になっている。


「カサロッ! お前の剣で書類を真っ二つだッ!」

「ま、任された仕事を放棄するなど――」

「言語道断ッ! 仕事は放棄する為にあるのだッ! テメェの剣を信じろ!」

「騎士の恥を背負うような真似はできません!」


睨みあっていると(明らかに俺が悪い)、ジューネの声が掛かる。


「喧嘩するなら出て行こうか!」


彼女が握る万年筆から聞こえてくるミチミチという恐怖の音が響き、それに乗るように声が響き渡る。


「喧嘩? はっ、これは討論だ。男と男の討論だ!」

「騎士は喧嘩など野蛮なことはしない」


ブチッ、と万年筆が折れ、俺とカサロの間を通過し床へ落ちる。

ただ、それだけじゃあなかった気がする。


「……えーと、あの……頭、大丈夫?」


髪の毛が逆立っているように見えるのは彼女が怒っているから、とかそういう理由じゃあないことを祈る。


「うふっ♪」


寝不足で狂ってしまったのか、わけのわからないまま俺達に魔法を放つジューネ。


「カサロガードLv3!!」

「れべるすりー? なんっ」


ボシュン


……カサロは犠牲になったのだ。

黙祷。


瞳から涙を流し犠牲になった一人への黙祷を終わらせる。


「くっ、全ての元凶は書類仕事にあるんだ!」

「海弟」

「いいや、書類――」

「海弟」

「いや、だから――」

「海弟」

「い」

「海弟」


……ああ、俺が悪いよ。

折れてやろうじゃないか!


「だがな、俺の責任はお前らの責任だッ! 最低だと言われようと、俺の責任を果たすためにお前は俺の手伝いをすべきなのだ! さあやるぞ!」


熱い視線をジューネへ向けるが、暴れるだけ暴れ言いたいことを言った彼女は眠ってやがります。

ああ、こんなところに剣が落ちている。


「カサロ、借りるぞ」


すんでのところで早まるな、という声が何処からか聞こえ深呼吸する。


「……はあ、一人でも頑張るぞ。うん」


今、俺の武器は剣じゃあない。

そして倒すべき相手は仲間でもない。


「成長の果て、はまだ辿り着いていないが。強くなった俺を甘くみるなよ!」


わからないことのが多いがやってみせる。

そう、俺の見栄と意地に賭けて!





ああ、今日の夜は長いなぁ。

それに太陽の見える夜も珍しい。


「……現在午後三時ッ! 俺、生存ッ!」

「カサロ、復活……」

「ジューネ、同じく復活」


俺の一人勝ちだ!


涙が流れるのはアレだ。眠たいからじゃあなく、感動したからだ!

心の底からどうでもいい状況なのだが、そこに感動したんだ俺は。


「さて、続きやるぞー」


努力は報われるべきだ。

だからこそ、だからこそ、だからこそ、俺は努力しよう。


「最終日はやはりホールケーキのバイキングか」

「隊長、いつまで献立表に悩んでるんですか」

「最初から最後までだ!」


さて、オチが思いつかないので長引かせているわけなのですが、どうしよう。


とりあえず青空さんに土下座な終わり方は控えておきたいので、うーん。


悩みどころです。

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