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第422話腹の底から施しを

海弟視点で書くよりも、他人から見た海弟のほうが自分的には面白い……。

それに書きやすい……。だからこそ、たまにやるのが良いのかも知れません。

現在、空中で浮かんでいる状態で下はふわふわした雲のようなもので出来ていて、クッションのような感覚をレンテや海弟に与えている。

いつか消えないか? とか、耐えられなくなって落ちないか? とか心配ではあるが少年に悟られようにする。


「……最終決戦。お前達のその言葉を借りるとしよう。その最終決戦の相手というのは、どれだ?」


空を見れば龍が羽ばたきこちらを睨みつけている。今にでも炎のブレスを撒き散らしそうな雰囲気だが、少年ならば対抗策があるだろう。

地を見れば五万の兵士がこちらを見上げている。さすがに弓の届く距離ではないので、魔法の使える者の一斉詠唱の声がここまで響いてくる。


レンテはチラリと海弟の顔を覗く。


「どれ? と聞かれれば、そうだな。王と神だ」


雷鳴と雨音、更に詠唱の声。

雑音のようで規律の取れた曲にも聞こえる三つの音が場を支配する。


それはレンテに返せる言葉がなかったからだ。

しかし、聞かずにはいられない単語が混じっていたので海弟の両肩に手を乗せて聞いてみる。


「……王、はわかる。地にいるのはエシヴァンの兵士だ。それにこの数。王が……神殿内にいるのだろう。神というのは?」


海弟は思考した様子も見せずに言う。


「神は神だろ。この世界の管理者。俺の娘……いや、息子って可能性もあるのか? まあ、そいつを倒すんだ、野望をバッキバキに折りに行くんだよ」


面白いものでも見つけたような子供のような、そんな表情で教えてくれる海弟を目の前に苦笑いするレンテ。

"神殿"の中にいる王、そして神。それらを倒す。


そんな無茶苦茶なことを少年は言ってのけたのだ。


「……無理だ。勝算はない」

「本当にそう思うのか? こっちにだって神様ってのは味方してくれているんだぜ? ちょっと弱っちい奴だけどな」


そう言い、親指で背後……いや、その上にいる龍。違う、少女へと向ける海弟。

少し、信じられないようなものを見ている心境だった。


けれども、本気だというのはわかった。

だからこそだろう――


「わかった。その話、信じよう」


――心の底からコイツらの馬鹿を最後まで見たいと思った。





「簡単な話だ。龍を説得し犬死ちゃんを解放した後、五万の兵士に突撃し神殿の入り口を占拠する。そして俺たちは神殿の内部に侵入だ」


ぽかんと、口を開けているレンテの頬を抓り反応を確かめる。

先ほど俺の話を信用すると言ったばかりなのに変な反応しているんじゃない。


「龍を説得する? そして五万の兵士に突撃? ましてや入り口を占拠など、無理だ」

「その言葉を待っていた」


腕組みし、今まで暖めていた(約三分)俺の作戦を一つずつ説明していく。


「あの龍。人が飼っていた、というのは知っているだろう?」

「ああ」


短く返事をするレンテは何だか変なものでも見る目付きで俺を見ていた。

なので一発殴っておく。


「で、だな――」

「今のは、何だ……」

「で、だな。龍を見ていて気づかないか?」


無視でいこうと思う。


「……野生のものよりかは、弱い。そういうことか?」


馬鹿の相手をしていると辛いなぁ。

俺も馬鹿だがレンテは『大中小』の『大』が付いた大馬鹿だ。


「あの龍。一度も攻撃をしてこないだろう? 全て、自分の身を守る行動ばかりをしている」

「……確かに」


もう予測は出来ていると思う、けれども最後まで言うとしよう。


「アイツには理性がある。人を攻撃してはいけない、そう教え込まれたんだろうな。だからこそ、お前が謝れば解決だ」


そう言いレンテを指差す。

理不尽な、と今にも言いそうだったので説明してやる。


「アイツが暴れている理由はお前が理不尽にも攻撃してきたからだ。お前が心の底から謝れば許してくれるさ」


もしかして、俺たちの味方になってくれるかも知れない。


考え込んでいる様子のレンテにトドメの一言を放つ。


「ちなみに……だが、あの龍の飼い主はこの国のお姫様な」

「……土下座の仕方を教えてくれないか?」


うむ、とりあえずお茶にも一度謝っておいたほうがいいぞ。

そして龍のほうは俺に謝れ。


雨風に当たり汚れた部分が洗浄されていって証拠が消えそうになっているが、お前のせいで俺は知らぬ間に死にかけたんだ。


チラリと犬死ちゃんを見る。


「……パンツまでびしょ濡れだぜ」


おかしいな。龍が殺気を放ち始めたぞ?


「とりあえず龍の目の前まで移動するぞ」


神は視力がいいのか、と納得してから犬死ちゃんに合図を送る。

徐々に雲が上昇していく。クッションのように感触は柔らかいが、神の創造物の一つだ。ぶっ壊される事は――


その時龍の咆哮が空に響く。


「あぎゃぁっ!」


同時に聞こえた少女の悲鳴。

……何だろう。足元が物凄く寂しいです。


「ま、毎度……耳が痛いよ!!」


……次会うときを楽しみにしているぞ、犬死ちゃんよぉ。


「受身の態勢ッ!!」

「この高さだ。意味はない……」


だよね。うん、死ぬよ。

物凄く死ぬよ。


「ええいっ! まさか新魔法をココで披露する――ん?」


龍がこちらへ飛んでくる。

片翼(かたよく)の上に俺達を乗せると、今度は先ほどよりも小さく咆哮する。


……やばい、この浮遊感嫌いなんだよな。

犬死ちゃんの雲のほうは我慢出来たが、こっちは我慢できない。


「急いで鞍があるほうに移るぞッ!!」

「お、おう」


……馬鹿ッ! 大きな声を出すんじゃない!

朝食が木の実だったせいもあるのだろうが、腹の調子がアレなんだよ!


雨風から振り落とされるのを注意しつつ鞍のある背中まで移動すると急いで鞍に抱きつく。


「座ったらオシリが濡れるぜ」


おっと、ボケている場合じゃあない。

吐き気のコントロールが暴走中です。直ちに周囲の人、もしくは龍は避難してください!


「……さて、警告終了だ」


後ろにいるレンテのほうを向く。


「……どうした?」

「第一の犠牲者に聖なる加護を」


……ゲロゲロうぇぇ。


王道の中に紛れ込んだ邪道、ならぬ外道。

施しを受けたレンテ。

弱っちい神である犬死ちゃん。


彼らは目的を達することが出来るのだろうか。

……自分的には達成してほしくない。


まあ作者意思(うんめい)など無視してしまう海弟を制御することは不可能なのですけれどね!


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