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第421話『言葉じゃあ強さは語れないんだ』by海弟

やばい、自分で書いてて興奮してきた。


起き上がると、目の前に鏡があった。

薄い紫色を映し出している鏡は俺の全てを映しているようだった。


何もかも見られているようで気持ち悪い。


周囲を見回せば、同じように紫色の鏡……心の底からの恐怖を求めるような、そんな空間に俺はいた。

一見すると、何処までも続きそうな闇の中に設置してある俺よりちょっと大き目の鏡達は、俺を囲うように設置してあった為、動くのが幅かられた。


下を向けば、地面まで鏡で出来ている。それに天井まで鏡。


そして横は黒い空間、それに複数の鏡。


二度目だが、本当に気持ち悪いと思う。


『試そう』


何処からとも無く声が響く。

何を試すかなど言っていないが、内容はわかった。俺自身を、コイツは……『(キョウ)』は俺を試そうとしている。

特殊魔法、それは能力にも分類されると聞いた。けれども、ここまで特殊な能力とは聞いていない。


たぶん、俺が変だからなのだろうな。うん、それ以外に答えが見つからない。


「聞こうッ! お前は、俺に強くなって欲しいのか!」


声が鏡に反射され、対面にある鏡に反射され……と、光以外のものも反射しているようだった。

その反射された声は、闇に溶け込むようにやがて消えて、答えが返ってくる。


『……自身の意思で決めるがいい。試すことに意味など最初からない』


……試すことに意味はない。

それもそうだ。俺は試された先にある、強さを手にしようとしている。


なのに目の前の『試す』なんてお遊びみたいなことに構っていられない。

目を瞑り、俺自身の強さ……この世界を眺める。


俺の魔法が俺を試す。

何だか、面白い。コレだ、コレだよ。


最初に異世界に来たときに、たぶん感じた……ワクワクした何か。

意識した時に来る躍動感。


……たぶん、俺は知らぬ間にくっつけて考えていたのだろう。


背負った願いと、託された想いと。

それが強さに繋がっていると……そう錯覚していた。


王道パターンに今まで当てはまる事柄をすべてぶっ飛ばしてきた俺が、最初からそれに当てはまるわけがなかったのだ。

それこそ、最大の間違え。


正義の強さのある果てに、あったものを手に入れた者がいる。

それが、五万の……『兵士』である彼等なりの誇りだったのならばそれで良いと思う。


国を支える兵士という柱になれた、という誇りが彼等を強くしている。

ならば、俺を強くしてくれるのは……。


俺のなりたいもの。なるべきもの。

それがわかれば、俺は強くなれる。


この世界で出会った奴等は、何か……信念を持っていた気がする。

良くも悪くも、何か筋の通った奴等ばかりだった気がする。


それが錯覚だったのならば、今ここにいる俺は『試す』などと言われ本当に試されることなどなかっただろう。

自然と笑みが唇に現れる。


「そうだなぁ。俺がなりたいもの。昔は大金持ちになりたいと胸を張って宣言していた俺だが、今じゃあ違うなぁ」


何だか知らないが、俺の頭の中にはずっと一つのことがあったらしい。

俺を映してくれる鏡が教えてくれた。俺の……筋の通った部分。


「俺はさ。俺は――」


……ああ、ここまで……自分の心を晒したのはいつ以来だろうか。






青年、レンテは龍の背中にある鞍に捕まり龍と一緒に空を飛んでいた。

そしてガッカリしていた。


――コイツは人が飼い慣らしている龍。求めているものとは違った。


けれども、逃げる事は出来ない。

時折放たれる咆哮により、体の力は抜け……命綱である鞍を放してしまいそうになる。

そうなると、地面へ落ち……最悪の場合死ぬだろう。


――最初の会話でわかっていた。龍という単語に気を取られていたから。


気づかなかった、という言葉を胸の奥へしまい龍の背中を睨みつける。

ギルドでの出来事、出会った少年から青年へ、ちょうど変わりそうな年頃の少年を思い出す。


「アイツは、死を恐れていなかった」


刃物が向けられているというのに、悠悠(ゆうゆう)と表情を変えずに馬鹿にした様子で喋っていた。

なのに、自分は手の振るえが止まらない。


あの時……最初に龍と出会った、あの時を思い出す。


妹を連れ、両親の仇を討ちに……けれど、それも失敗し。

自分は瀕死の状態。妹は……。


だからこそ、もう一度龍へ挑戦しなければならかった。

その覚悟があったのに、今の自分は……。


自らの流す涙と雨が交じり合い、目の前にある龍の背中が歪む。

次の瞬間……手が滑り地面へと振り落とされる。


何やら声が聞こえてくる。


「だ、大丈夫ですかー!!」


よく見えないのでわからないが、少女の声だ。

どうして近くで聞こえるかもわからない。もしかして、妹の――


そこまで青年は思考し、突如自分を包むふんわりとしたクッションのような何かへ意識を向ける。


「……これは」

「ふう。百パーセントとまではいかないまでも、けっこーいけるみたい!」


はしゃぐ少女は龍に捕まっていた。


「……リーチア、じゃない、のか」


目蓋を閉じる。

自分にはもう気力は残っていない、このままゆっくり下降しようと……そのまま死ぬだろう。


しかし次の瞬間、今度は空気を切り裂くように鋭い声がレンテにぶつかる。


「地獄に帰れコンチクショォォォオオオオッ!!」


次の瞬間、レンテの鳩尾に力強い蹴りが入れられた。


「ぶごふっ!?」


周囲を何度か横に回転し目蓋を開けば、少年が立っていた。

自然と、少年に向かい手を伸ばしてしまう。


「この手を取るのは簡単だッ! だがしかし、俺は鬼畜の極みの海弟様なのでこの手は取らん!」


そう叫び腕の骨を今すぐ折らんとばかりに蹴りが放たれたので手を引っ込める。

しかし本命はそちらではなかったらしい。


腹の上に座り込む海弟。おかげで立ち上がれなくなってしまった。


「なぁ、さっき台詞間違えたんだ。聞いてくれないか?」

「反省会に付き合っている暇はない」

「嘘を吐け。顔に『暇』と書いてあるぞ」

「書いてない」

「じゃあ見てみろ」


少年が鏡を取り出しレンテの顔を映す。

確かに書かれていた。黒い、太い……何かで確かに書かれていた。


「ちなみに俺が書いた」


突っ込みたい衝動を抑えレンテは「退け」と短く少年に言う。


「でさ、俺ってばさっき「地獄に帰れ」って言っただろ? よく考えてみたら「妹の元に戻れ」だったんだよ」

「知るかッ!!」


今度こそ我慢できずに声をあげて突っ込む。

しかし、そこで気づく。


「妹は、リーチアは……生きているのか!!」


不敵に微笑む少年。言おうか言うまいか迷っている様子だ。

そこから答えはわかっていたが、少年の言葉を何故か待ってしまう。


「村へ帰れ。テメェに優しい現実が待ってるぜ」

「……リーチア」


たった一人の家族のことを思う。

何年前だっただろうか、あの行動を何度後悔したか。


けれども、彼女は生きていた。


「とりあえず『ありがとうございます海弟様、今度ともお供もしくは下僕、ついでに奴隷となって付いて行きます』と言えば解放してやろう」

「やらなければいけないことがある」


それはそうだ、という表情をする海弟。

何か嫌な予感のするレンテである。


「報酬無しの仕事はキツいんだよな、これが。だから頼みたいんだけどさ、報酬代わりに俺に付いて来い。最終決戦だ!」

「意味わかんねぇー!」


けれども、断ることの出来ないレンテだった。


……下書き? 構想はあるがそんなものはねぇぜ!


レンテのクール部分が崩壊し始めましたが仕様なので気にしないでください。

海弟と絡むと自然とこうなりますよ、という……まあ恒例のアレです。


しかし、海弟のなりたいもの。自分は構想を作りましたしわかっているのですが、皆さんは予想出来ているだろうか?


とりあえず問いかけてみて後書き終了。

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