第418話燃焼と謎の声
あれさ!
剣を魔法で学園にする? いや、何か違う。
……さて、このネタは入れるのが難しいので皆さんの日常会話で使ってあげてください。
魔物とは、もっと弱いものだ。
例え、四本足で俺へ向かって突進してこようが体を真っ二つにすれば死ぬはずだ。
そうでなければ怖い、怖すぎる。もう丸焼きにして食ってしまおうか!
と、まあこんな感じのことが現実で起こっているわけである。
俺の手には炎、それを止める犬死ちゃんが叫んでいる内容は『森が近くにあるので危険です!』だそうだ。
なるほど、素晴らしいところじゃあないか。魔物のステーキのバイキングだ。
「炎よぉ!」
「させないよ! 水よ!」
お互いがお互いに反発しあい、消えていく炎と水。
やはり、互角か……。
俺と犬死ちゃんが密着状態で睨みあっていると、気の上から声が聞こえてくる。
「き、君達っ! 前っ! 前ェっ!」
前?
前を向けば、魔物が俺達へ突進してくるモーションを見せたところだった。
なるほど、あの牙で貫かれれば死ぬな。間違えなく。
回避行動を取ろうと横へ飛ぼうとするが飛ぶことが出来ない。
「なっ! 犬死ちゃんの馬鹿野郎っ! 前からくるだろうが!」
「わたしにも見せてよー! 何がくるの!?」
魔物だ! そう、イノシシみたいな魔物!
ええい、口で説明している暇はない! 俺の命が掛かっているのだ。
「口から炎でないかな? ファイアー!」
……無理か。
そうこうしているうちに近づいてくる魔物。
俺は相変わらず犬死ちゃんのおかげで回避行動が取れずにいる。
最悪だ、誰か助けて!
ねぇ、神はいないというの!? あ、後ろにいる! しかも俺の脚を引っ張ってるよ!
「この死神焼死体犬死ちゃんがァァァァァッ!!」
「何か長くなって――」
言葉が途切れる。俺はというと牙で体を貫かれ、その衝撃と共に後ろへ吹っ飛んでいる。
後ろにいた犬死ちゃんも然り、同じように吹っ飛んでいる。
「吹っ飛んでるぅぅぅぅぅ!!」
「何処まで飛んでくんだ!」
予想以上に低空飛行を続ける俺の体。いくつかの木々の間をすり抜け十メートルと少しぐらいのところで尻と地面を擦り合わせつつスピードを緩める。
この世界の魔物は見た目と違い力強く強力だ。
最初にこっちに来た時、お茶が言っていた台詞を思い出す。
『――アレンを連れて行けば私も合わせ魔物の一匹にだって敵うだろう。何故それがわからないッ!』
なるほど、あの二人の実力と……この魔物の実力は同じということか。
ならば、倒せるッ!!
俺はあの二人より勝っている、たぶん! だからそれが理由だ。
やっと放してくれた犬死ちゃんの頭を思い切り殴ってから魔物に向き直る。
「やってくれたなイノシシめッ! 気高く貴い我が血を流させたことを後悔させてやるっ! 特殊魔法『鏡』」
イノシシの周りに展開していく鏡。
その数はおよそ二十枚。完全にイノシシは四方を囲まれた事になる。
そして鏡の一つ一つには俺の魔力をこめている。つまりは鏡から魔法の発射は可能というわけだ。
自然と笑みがこぼれる。
さて、ステーキだ!!
「ファイアァァァァッ!!」
鏡と鏡の間にあった隙間から漏れる炎が内部にいる魔物へのダメージを表しているかのようだ。
数秒したのち、炎をやめて鏡を消すとイノシシを見る。
「……うわぁ、焦げ焦げだ。食えないぞコレ」
「魔物は元々食用じゃないから、食べたらまた変な病気にかかるからやめといた方がいいよ」
木から下りてくる医者が言う。
何だ、元々食べられないのか。面倒な、そうなのならば最初から剣を使っていたというのに。
「熱湯消毒ならぬ熾烈消滅だね!」
「無駄に難しい言葉を使わなくてもいいんだぞ?」
お前はいったい何と張り合ったんだ。
しかし、熾烈消滅か。うむ、次のキメ台詞で使おう。
「天地を消し去る我が咆哮……。熾烈消滅が理なりぃっ! とかか?」
……ダメだ。元々日本語としてなっていないからいれるのが難しい。
諦めるとしよう。
「さて、先へ進むぞ。今日中に次の町へ行きたい」
「もう町はないよ。過疎地となっているから、たぶん今日からは野宿だ」
「えー、わたしイヤだー!」
そうだな。俺もイヤだ。
こっそり『鏡』を使い自分の部屋で寝ることに……と、ダメだ。
こんな事してたら強くなった、などと高らかに宣言することなど出来ない。
……本当に、強さとは何なのだろう。
既に俺は強いと言う者もいる、捨てる事だと断言する者もいる。
それぞれ立場は違うが、俺の立場に立っているのは俺だけだ。
俺が、自分自身で強くなったと認めるまでは帰れない。
「なあ、犬死ちゃん」
ペッタンコな胸を見ながら言う。
既に歩き出しているので暇で退屈なのだ。
「何かな!?」
それほど驚くようなことだっただろうか。
まあ驚いているようだし大したことない話をしてやろう。
「お前はさ、強さが何か知っているか? ここまで一緒に旅しててアレなんだけどさ」
「そんなのわかんねぇーぜ!」
男らしい回答が即答された。
「へっへっへ、オヤジ! わたしは自分で自分を強いと認められない親の娘になった覚えはねぇぜ、オヤジ!」
「無駄にオヤジと連呼するな。そしてボケは俺で十分だ、元に戻れ」
「ど、読心術!?」
いや、心中お察しします状態なだけだ。
最近欝になる展開ばかりだったもんな。
「なぁ、キンボール」
「言っとくけどセーフじゃないからね?」
そうか? なら良い。
このまま辱めてやる。
「お前は、強さが何か知っているか?」
「わかんないよ。人はたぶん、死ぬまで強さなんてわからないものさ」
……死ぬまでねぇ。
俺は何度も死んできた。その度に……俺は何を思ってきただろうか。
……ちょっと思い出せない。
「何度も頭の中を狂気で……狂気で満たしていた気がする。それが、俺の強さ?」
あの時の俺は俺であって俺じゃあない気がする。
記憶も実は曖昧だったりするし、けれども意識はあの時あった気もする。
何ていうか、酔っ払いのような感じだ。
「……うーむ、結局は……わかんないな」
……はぁ、めんどーな。
気落ちしつつ医者の持っている地図を覗く。
本当に町や村が書かれていなかった、が古いもののようなので新しく出来ている町があるかもしれない。
そんな微かな期待を寄せつつ歩みを進める。
『狂気の先は、本能か。理性か。お前の強さを、この先で試そう』
……ん?
「……誰か、何か言ったか?」
「んー? わたしは何も言ってないよー」
「同じく。幻聴かい?」
違うと思う、けど自信がないな。
最近聞こえるんだよなぁ。毎回同じ声、けれども……毎回何か違うような気がする。
俺の本質を変えるような、そんな……一種の催眠でもかけられている気分だ。
まあ、その声に従うのなら、試されてみよう。
本能か、理性か。判断するのがその声ならば、俺の本質を変えるようなことはしないと思うし、ありのままの俺で正解を導き出せる自信がある。
「……本能とか、理性とかじゃなく。強さが、そこにあれば楽なんだがな」
まあ、そうなると……声の主の求めるものは俺の中にあるのだろうか?
俺は強さを知らない。持っていない。
武器の強さに頼り、他人の強さを借り、そうして戦ってきたのだから。
「犬死ちゃん。もうすぐ、この旅も終わりそうだ」
「へ? お父さん、まだ北の神殿には距離がかなりあるよ!」
「……それでも、数日経てば着くさ」
途中まで龍で移動していたのがやはり大きかった。
大きな国だとお茶は言っていたし、数日でここまで移動できるとは思わなかったら。
「お父さん、旅が終わったらどうするの?」
「神だ! 異世界中を見てまわり、全ての娘に挨拶でもしてくるさ」
……ああ、そうなると青空はどうなるんだろう。
適当な理由でも考えておくか。告白されたとはいえ、何かもうめんどくさくなってきたし。
影流よ、キサマが主人公だろう? ならばヒロインは青空だ。
ついでにファンも加えてハーレムなのだろう? 知っているぞ、メイドさんも攻略可能だと。
と、まあこんな感じで影流をそそのかしてから青空に事情を説明しにいこう。
「と、なにやら雲行きが怪しいぞ」
林を抜ければ道が消えている。
何故か?
それはここが――
「砂漠かぁ」
「うわぁ。無理、絶対全滅するよ、引き返そう」
「いいや、今日はここで野宿! 明日から一日で砂漠を突っ切るっ!」
――何処でも関係ないな。
うん、俺には足がある! 船などいらん、羽などいらん。
だって酔うんだもの!
「じっくり休めよ、野郎共ッ!」
謎の声、構想は出来ているので何者かは作者にのみわかっております。
ネタバレにならないように言うと、コイツは海弟に親しいヤツです。
人物に限定しません。動物? 魔物? はたまたマネキン?
最後のは作者的に完全否定するのでよろしくお願いします。変な期待を寄せないでね!
では次回!