第414話『わかりやすいだろう?』by海弟
海弟の成長(強さ)のことを考えてたらニヤニヤが止まらなくなりました。
熱い、熱いぜ海弟ェ!
ま、海弟が知る海弟はまだずっと先にあるわけですがね……。
「とほ?」
「徒歩。旅なら歩き、昔から決まっているんだよね」
「決まってねー」
俺なんてな! 旅と称され龍の背中に乗せられたんだぞ!?
うん、そりゃあ快適な旅だ。うん、気絶と酔いがなけりゃあな。
「文句を言うなら君も自分のランクを考えて言いなよ。まだ登録したばかりだろう? 医者を連れ出すにはランクが五以上ないとダメなんだけど」
「知るかッ! お前がギルドに登録しろと言うからやってやったのにお前こそ文句を言うんじゃないッ!」
……いや、そういやお前が付いてくる意味においてはいつでもどこでも不明だな。
何でコイツ付いてきてるの? 俺の役に立ってくれるの?
あれ、おかしいな。何で俺はコイツを連れてきているんだ?
ノリかな。なら納得だ。
丸っこい医者を見て一度頷く。
話はそこで終わり、再び前を向く。
一応、わかりやすいように道は出来ているがこの道も何処まで続くのかわからない。
もしや北の神殿の途中で道が途切れるかも知れないのだ。
「地図、ある?」
もう一度隣にいる医者の方を向き言う。
当然、とばかりに白衣のポケットからシワシワになった地図を取り出す医者。
古臭いものだが役には立ちそうだ。
「よし、迷ったらよろしくな!」
「迷わないように地図を見るんだろう!?」
いや、迷うの前提で頼む。
一々説明するのも面倒なので旅を合図無しに勝手に始める。
さあ最初の一歩目は俺がもらった――
「おとーさーん! いつまで突っ立てるんですかー!!」
――遠くに見える犬死ちゃんの影。
そう、俺は……俺は……。
「遅れを取ったか……」
「何言ってるの?」
俺の顔を覗きながら呟く医者の顔を片手で掴む。
「うぐふっ」
「今から質問を一つだけする。それにイエスと答えるんだ」
「ふぐぅ!」
俺の手に息がかかるからやめて欲しい。息をするな馬鹿者。
そんな声をかけるのも面倒なので一つの質問を医者へ投げかける。
「お前は丸いな?」
「ふぐふ」
「ヨッシャー!! いくぜ、俺の魂詰め込んだ炎の一撃ッ!! 秘儀、燃える魔球ッ!!」
肩を魔力で強化し犬死ちゃん目掛けて医者を投げる。
素晴らしいコントロールのおかげか、犬死ちゃんにぶち当たる軌道に乗る医者。
「父親を無視して一歩目を取るとは不届き者めッ!」
「水よー」
水撃に飲まれ勢いの止まる医者。
勢いをなくした医者はその場に落ちる。
医者へ目は向けず、我が娘である犬死ちゃんに目を向ける。
「……ふっ、いつの間にやら父の足元まで来ていたようだな」
「はいっ! いつでも越す準備は……って、神様相手にそんな言葉投げかけるのお父さんだけですよー!」
神様? はっは、食えるのか?
という言葉を妄信する俺に宗教関連の言葉など無意味ッ!
さあ行くぞ、今日中に次の町までッ!
「ボール拾いは娘の仕事だ」
「か、完全に……ボール、って言――」
「あいさー」
「――ぎゃふんっ!」
俺達は、あの町でキャッチボールをした後、旅に出たのであった。
☆
少し進んでいくと、同じような旅人が数人休んでいるのが見える茶屋のような場所が現れる。
ボールに聞いてみると、ギルドに登録している人ならば誰でも使える町の外の出張喫茶とか何とか。
それは面白そうなところだが、先を急ぐ俺たちに関係は無いだろう。
そう思い通り過ぎようとしたが犬死ちゃんが「もう歩けないっ! 乙女だから!」とか言うので休む事にする。
乙女ならばそのまま死ね、という命令は何故か犬死ちゃんの変態さんな部分が現れて俺へ向かい変態オーラを放ってきたので仕方なくだ。
中に入ると、外装とは違い中は広々としていて地下まであるようだ。
先ほど中に入ったのが見えた冒険者達は地下へ用があるらしい、階段を下りていく。
「おい、俺達も下へ――」
犬死ちゃんのほうを向くが、いなかった。
「マスター、溢れるミルクタワーってのください!」
中にある喫茶店部分だろう。そこのカウンター席に座り『溢れるミルクタワー』とかいうものを注文していた犬死ちゃん。
乙女は行動が早いなぁ。はっはっは。
「置いてくか」
さて、下へ行くことにした俺とボールはある事に気づく。
下へ向かうための看板に『ランク"二"以上の者以外立ち入り禁止』と書かれているのだ。
どうしようか? という議論の結果。俺の独断で勝手に侵入する事にする。
マスターや他の人に何か言われるかと思ったが、マスターは『溢れるミルクタワー』作りに取り掛かっていてこちらを見ていないらしく、犬死ちゃんのおかげか他の冒険者共もキュートな彼女に夢中だ。
いやぁ、美少女って得だね!
このままコイツはここに置いてってもいいかも知れない。
階段を下りつつ思う。
階段を下りた先には地下街のような……色々な売店が多く存在していた。
武器の手入れをする為に存在しているのだろうが……何だか怪しげな雰囲気がぷんぷんだ。
あそこにある奴隷市場みたいな――
「まだ消えてなかったのか。奴隷市場、懐かしいよ。何年前だったかな、その時に全部潰れたと思ってたけど……やっぱり信用できないねぇ」
ボールは友達! もちろん会話もするよ!
「んでボールよ。あれは本当に奴隷市場なのか?」
「まぁね。あ、助けようなんて思わないでね。あとで上に報告して潰してもらったほうが後腐れないからさ」
「任せろ! 死者数無限の大量虐殺で後腐れも爆滅してやる!」
奴隷市場へ向かい走る。
「いや、ダメだからね」
襟を掴まれ尻餅をついてしまう。
何だ、正義の鉄槌により悪の興味を正当化したというのに! え、本音?
悪の興味に決まっているだろうが!
「ど! れ! い! が! み! た! い!」
「かなり性格悪いね、君」
「おうよ!」
三十二番目ぐらいに誇れるものだ。ちなみに一番目は甘い物に対する詳しさだ。
食った中で一番うまかったのは兄さんの作ったお菓子全般かなぁ。うん、久々に食べに帰りたい。
ああ、でも強さを手に入れるまで無理か。何でこんな縛りを作ったんだろう。
そういや青空と約束してたりもしたな。具体的なの忘れたけど強くならなきゃなぁ。
何だっけ、青空を指一本で倒せるぐらいに強くなれ……だっけな。
うーん、何だったっけ。
『……己だけの強さ。それを見つける、約束だ』
おお、そうだった。
……って、ん?
周囲を見回す。
しかし誰もいない。
「ゴールデンボール、何か言ったか?」
「何か余計なもの足されてるね。本当によけいだ。何か言ったかじゃなくて何か言わせてもらうけどさ、ボールは名前だから良いとしてゴールデンはやめてくれないかな?」
「えっ、え!?」
……くっ、しまった。コイツの名前がボールだったなんて。
くそう、今までの辱めはすべて失敗に終わっていたという事か!
何て凶悪な……。
図ったな、親ボール!
……と、しかし。さっきの声は何だったのだろう。
たぶん奴隷市場に行けばわかる気がする。
「と言うわけで行ってくる!」
「だからダメだからね」
「やめろゴールデンボール! キン○マ!」
「あっ、言ってくれたね!」
そんないざこざをしていると、奥のほうから黒服の男性が二人現れる。
『死』
『ね』
見事なコンビネーションで死の宣告を俺達に告げてくれたのでそそくさと上へ戻る俺とゴールデンボール、略してキン○マ。ちなみに俺は略したキン○マの中には入っていないので注意。
上にあがると犬死ちゃんが階段近くで座り込んでいた。
口に白いカピカピしたものが付いている。ミルク飲んでそのままにしているからいけないんだ。
「逃げるぞ!」
「う、うぷっ。白い、タワーが――」
「倒壊! アーンドゴールデンボール!」
「いつまで引っ張る――追ってきたぁ!」
む、そうか? やばいな。
「急いで逃げようじゃないか!」
後ろを見ずに言う。
『待』
『て』
ぼくちんこっちのことばわかんなーい。
しっかり伏せてあるので大丈夫ですよね? ね?
はい、すみません。
でも……構想の大半が出来上がってきてハイテンションなんだぜ。
これで、コメディーが入ってくることも少なくなってくるはず!
海弟の『構想? ぶっ壊してやるぜ!』なんてのにも負けません。勝利宣言です。
ここからの急展開を見逃すな!
と、暴れたとき用に手錠を用意しとかなきゃな。