第410話『病人こと海弟です☆』by海弟
書いている作者が虚しくなってきました。海弟よ、孤独に耐えろッ!
ありえない。
何がありえないのかって?
はっは、旅をするのに龍に乗るなんてありえないの――はい、もう乗っちゃってますがね!
「おいぃぃっ! やってくれたなお姫さんよぉ!!」
「はっは、お父様が飼育していた龍だ。王家の者にしか懐かないのだ!」
……はい、そうですか。
籠でも付いていればそっちに乗れば我慢できるんだが……。
おお、熱が! 酔いが!
「くっ、何だか頭の中がふわわぁぁんと……ん?」
あるぇ? これはアレの前兆……じゃあないですよね?
はっは、やっぱりアレですか。
「お茶、落ちないように俺を抱いててくれ」
「……落ち、うわっ、と。何をしている……気絶?」
☆
最近多いな、目の前が真っ暗になるの。
どうやら宿屋らしいそこは妙に豪華で、扉の外を覗いてみたのだがメイドさんみたいなのが歩いていたのですぐに扉を閉めた。
本当に宿屋なのだろうか?
「……ああ、まだ少し頭が痛いな」
しょうがない、ベッドに潜り込んでもう一眠り……ん?
まだ調べるところが残っていた。
そちらを向けば、月明かりが差し込んでいるのが見える。
「うーむ、やっぱり監禁されたら出口になりそうな場所を全部調べとかないとな!」
「いや、監禁はおかしいな。いきなり気絶するから近くの町に寄ったというのに」
「HAHAHA!! いきなり後ろに現れないでくれますお茶サーン☆」
「病み上がりなのはわかるが、とりあえず静かにしてくれないか?」
病み上がりだとハイテンションになっちゃうんです。
「ふむ、医者を呼んだのだが風邪と言っていたぞ。無理はいかん、お前はここで――」
「病気と怪我はオトコの勲章なんだぜ?」
「前者は違うだろう」
そうか? そうだな。
大人しくベッドで寝ることにしよう。
「それよりもだ、明日には治してみせるから俺を置いてくな!」
あれ、意外と俺って元気じゃないか?
そういや気絶するたびに世界の力が俺の体の中に溜まっていくんだったな。一年間の間なんだが……嫌な体質になったものだ。
まあこの調子ならば明日には治せるはずだ。
「……はぁ、明日か。長くこの町には留まっていたくないんだがな」
「どうしてだよ。こんな豪華な宿があるんだ、良い町なんだろう?」
龍は空を飛んで移動していて、そのスピードも結構なものだ。
王都から離れた場所にあるだろう町でこれだけの設備があるなんて素晴らしいことじゃないか。
「……外に出れば嫌でもわかる。この町は汗臭いニオイでムンムンしていて嫌いだ」
いや、一分もジッとしていれないお姫様の言葉じゃあ説得力は無いぞ。
考えるより先に動く奴だし。
「ま、そういう奴のが長生きするんだろうけども。お茶、置いてくなよ!」
「何度も言うな。……じゃ、私は隣の部屋にいるからな」
それだけ言うと部屋から出て行くお茶。
アレン君も天井から一度降りるとこちらを向き何かを呟き部屋から去っていく。
あれ、起きたばかりなのに眠気が……。
ああ、そうか。アレン君の魔法か何かかな。気が利く奴じゃないか。
……二度寝だやっほーい。
☆
「調子が良いぜ」
宿の外で呟く。その言葉も町の喧騒に掻き消され、返ってくる男共の声だけだ。
勿論、俺へ向けられたものではないが町と一体化しているような気がして自然と俺もそんな雰囲気を受け入れてしまう。
ただ一つ受け入れることが出来ないものもあるが、今は無視していたい。
無理な話なのだが。
「現実が受け入れれません、置いていかれるなんてッ!!」
泣くぞオイ!
ええい、人目など気にするか! 男は号泣だァッ!!
『小僧邪魔だッ!』
俺にぶつかってくるタンクトップの男。
「ぎゃふんっ!」
……ふっ、虚しいぜ。
……さて、演技もここら辺にしようか。
本当に悩んでみよう。何で俺は置いていかれたのか!
まず一つ目。ウザいから。
二つ目。痛い子だから。
三つ目。風邪をひいてたから。
よし、三番だな!
くそう、一日で治ると言っておいたのに置いていかれるなんて。
「……はぁ。とりあえず北を目指そう。そこに遺跡があるはずだ」
龍に乗って来たからだいぶ近いところに来ているはずだ。
だとすれば、歩いて数日で辿り着くんじゃないか?
「よし、十分間に合うッ!!」
……ん? 待てよ。
俺がこうしている間にお茶達は北にある神殿、北の神殿と呼ぼうか。
そこに着いているかも知れないのだ。
五万の兵士を龍一匹で倒すことは出来ない、というのは推測できるが正直……どうするんだろう。
アイツは復讐をする為に北の神殿へ向かったのだ。エシヴァンとかいう国の王を倒すために。
俺は強くなる為にこの世界に来て、お茶と共に行くことを誓って。
うーん、俺はどうするんだろうな。
追うとしても、その頃には決着が着いているだろう。
ならば、別の場所へ行くとか……そういうことも出来るんじゃないか?
そっちのが良いように思える。
……が、しかしだ。
「俺はアイツの復讐に付き合うんじゃなく、俺の事情で付いていってったんだったな」
ならば、諦めるとか諦めないとかそうじゃないよな。
お茶の復讐が失敗するだとか関係なく、五万の兵士に挑戦できるってだけでも貴重な体験だ。
「……おお、前向きな俺は久しぶりだな」
なるほど、病み上がり効果という奴か。
病み上がりだとハウィテンションなんだぜ!
「よーし、強くなるぞー。エイエイ、オーッ!!」
さて、まずは町の外に出ないとな。
いや……仲間を増やすのが先か? 冒険にお供はつきもの……いや、武器防具を揃えるのが……。
待てよ、食料を買わなきゃ……うん、旅は楽しいなー。
さて、海弟は理屈以上の何かで自分の思考をぶっ壊していますね。
原因? そうですね……あえて言うならば海弟と作者がぶつかりあった結果、こうなったとしか……。
この野郎、もうちょっと心に穴を開ける感じで次は頼むぜ。
二度目は通用しない? くっ、そうだったか!
……はぁ、終わりが見えないのはこのせいかな。
作者と海弟が一体になった時……終焉が訪れるッ!!